序章 始まり
アリュナ王国、地下の違法採石場。
犯罪組織が、奴隷を集めて採掘を行っていた。
様々な国から多くの奴隷が連れてこられ、働かされていた
男だけでなく、女や子供もそこで働いていた
奴隷は足首に鉄の輪をはめられ、鎖を繋がれている
自由に動けないようにするためだ
食事も十分に与えられず、衣服もボロ切れを一枚まとったような、粗末なものである。とても劣悪な環境であった。
この違法採石場に先週来たばかりの少年は、既に疲労困憊であった。
家族の身代わりになって、奴隷としてここにやってきたが、想像以上にひどいものである
少年は鉱石の入っている箱を落としてしまった。
音を聞いた監視官が怒声を上げながら走ってきて、少年を鞭で打った。
監視官もまた、様々な人種の人がいる
この監視官の言語は、少年には理解できないものであった
すると監視官は、少し離れた場所からある少女を連れてきた
少女は面倒くさそうな、そして暗い顔をして少年の前にやってきた
この少女はとても幼い頃から採石場にいるらしく、監視官に様々な言語を教え込まれていた
彼女はとても頭の回転が早いらしく、覚えるのも早いため、監視官に特別扱いをされていると聞いたことがある
監視官は少女に何かを怒鳴りつけると、去って行った
「...あんた、ハウウエ語は分かる?」
すると、世界で多く使われているハウウエ語で少女が話しかけてきた
「監視官が、罰として今日はご飯を与えないって」
少年はその言葉を聞いて、真っ青になる
ほとんど食事も、水も摂取できないここでは、ただでさえ少ない食事を無くされると、命に関わる
「奴らは鞭を持っているだけなのに...箱を落としただけでこんな処置とは。やはり奴らは気に入らない」
少女が嫌悪感を顕にそう言った
「だめだよ、監視官が聞いているかもしれないのに」
「あんたは、自分を痛めつけてきた奴の顔色を伺いながら生きたいのか?」
「君、勇敢なんだね...
君の生まれた国はどこ?」
少年は、少女に興味を持った
思い切ってそう尋ねてみる
少女が少し迷うような素振りをして、口を開いた時、少女の声が女の悲鳴でかき消された
次いで、怒声や叫び声、大勢の足音が聞こえ始める
「敵襲だ!」
誰かがそう叫ぶのが聞こえた
「なんでいきなり...」
「考えるのは後。逃げるよ」
少女はすぐにその場を走り去った
少年は、他の奴隷を助けなければ、と悲鳴のする方へ駆け出した
牛の角がついた仮面をつけ、丈の長い服を来た者たちが、剣を振り回して奴隷や監視官を斬りつけていた
「こっちにくるな!斬られるだけだ!」
1人の奴隷が少年に向かって叫んだが、もう遅い
少年の背後には、すでに襲撃者が迫っていた
少年は最後に、あの少女が大きな箱に入って身を隠す姿を見た。