噂 完
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「用意いたしました。」
「はい、この部屋に入る隊員がたもいらっしゃいますか。」
「はい。準備は完ぺきにできております。」
「ありがとうございます。しかし、間違ったものを持ってきていないか知りたいので、確認していただいたもよろしいでしょうか。」
「はい。分かりました。」
「では、袋はあるでしょうか。」
「袋というか、袋に何か粉が入ったものならありました。」
「はい。それで結構です。ではその袋を、扉の前もしくは下手側においてください。」
「はい。ほら動かせ。」
「はい。」
「下手側に置きました。」
「ありがとうございます。」
カミラは左のポケットから何かを取り出して、体面に持ってきた。そのまま左手をぎゅっと握りだした。左手がぶるぶると振るえ、白い腕から血管が浮いている。目は顔の半分より開き、髪が逆立っている。すると左手から血が一滴たれはじめ床に落ちた。しかし次には滝のように血が流れた。
「カミラさん。」
一人のナースがカミラを心配して近づいた。
「近づかないで。」
カミラは顔を一切動かさず言った。左手が円を描くように振るえた瞬間、カミラはぱっと指を開いた。開いた掌の中から緑色に輝く石が落ちてくる。次に光のごとく左足を軸に反時計回りに回転しながら、右足でその石を蹴り上げた。すねのあたりで捕らえた石は、やや左に曲がりながら飛んでいった。飛んでいく際中、雪の結晶のような緑色の破片が舞っていた。そして音もなく壁を貫通した。
「ドン。」
数秒後、壁の奥でなにやら音が聞こえた。
「なんだこれは。」
「おい、何をした。」
「バン、ババババババババババババババババババババ。」
と一斉に壁の奥の兵士たちが銃撃し始めた。私たちはしゃがみ込み、頭を両手で守る。
「ドッバアアアアン。」
凄まじい音とともに、扉が吹っ飛んできて爆発の衝撃波で鏡やガラスが一気に粉々に割れた。銃声は聞こえなくなり、他の階や外から兵士たちがこちらに向かっている様子が見えた。扉があった場所を見ても煙しかなく人がいる気配はなかった。
「よし、行きますよ。」
私たちは作戦通り体が浮き始めていた。そしてカミラの掛け声に合わせて一斉に飛び降りた。外にいた兵士や階下にいた兵士たちが私たちに気づいて撃ってくるが、急降下しているため全く当たらない。
作戦ができたのは兵士たちに消毒のための準備をお願いした後のことだ。
「カミラさん。いったいどうする気ですか。」
リンが言った。
「はい。上手くいくか分かりませんが助かるにはこの方法しかありません。」
「方法。どのような方法ですか。」
「はい簡単に説明します。今ここで扉を開けても開けなくても、時間がたてば相手は確実に強行突破し皆撃たれるでしょう。なので助かるにはここから脱出しなければなりません。」
「はい、承知しています。」
「しかし見ればわかる通り、この娼館は完全に包囲されていています。廊下を使って逃げることはできません。ですのでここから飛び降りるしかありません。」
「飛び降りる。」
「無理です。」
「殺す気ですか。」
「違う方法が。」
周りのナースたちが反応した。
「待ってください。聞いてください。皆さんもご覧になったように私には特殊な力があります。この力を使えば皆さんを安全に下におろすことができます。」
「でも。」
「分かりました。」
リンが答えた。
「リンさん。本当にやるしかないんですか。」
「本当です。話を聞いてくれれば助かるかもしれません。」
「それにカミラさんの力だって信用できません。」
「分かった。それじゃあ私が最初に飛ぶ。これで文句はないでしょ。」
「リンさん。待ってください。」
「もう考えている暇はないでしょ。」
リンはナースたち一人一人の目をみていった。リンの目には誰よりも生気があった。正直に言って、この段階ではカミラの考えしか助かる方法がないとは言いきれなかった。説得することもできたであろうし、そもそも兵士たちが私たちを殺すかどうかも大変疑問があった。しかしリンの目を見るとこの方法しかないんだと無理やりに納得できてしまった。リンの勇気や決意に魅了されたのかもしれない。一方でリンの死の気配に皆侵されてしまったのかもしれない。どちらにせよ極度の緊張感で分かりやすく強い意見に惑わされてしまったのだ。
「はい。」
「分かりました。私が安全に皆さんを下までおろします。」
「あの、どうやって。」
「はい説明します。兵士たちに準備させた袋には三つのものが入っています。一つは小麦粉、二つ目は特殊な石、三つ目は私の血液が入った試験管です。」
「石に血液。」
「はい。詳しくは教えられませんがこの二つを組み合わせることで皆さんを下までおろすことができるのです。」
「じゃあ小麦粉は。」
「小麦粉を大量に空中に散布することで、粉塵爆発を引き起こします。」
「粉塵爆発?」
「はい、小麦粉などの粉をばらまいて火をつけると一気に爆発するんです。」
「どうやってばら撒くんですか。」
「私が高速で割れる寸前の先ほどの石を壁に打ち込みます。石は袋にあたると分裂し小麦粉が空中にばらまかれます。それに驚いた兵士たちが銃を撃てば、火薬の火によって粉塵爆発がおこります。爆発によって中に入っていた石と血が混じりながら空中に舞い、その粉が皆さんの体に触れることで降りることができるのです。」
「まさか。」
「本当にうまくいきますか。」
「分かりません。しかしこの方法しか降りることはできません。」
「待ってください。最初の段階で石を打ち込むんですよね。ということは今石を持っているんですか?」
「はい。」
「じゃあ、その石で、。」
「いいえ、できません。私が手に持っている石の量では皆さん全員を助けるのは不可能です。」
「分かりました。」
「はい私が責任もって。シランさん。」
「はい。」
カミラは優しく振り返った。
「降りたら私はあなたを背負う時間がありません。なので自分で走って逃げてください。」
「はい。」
カミラは返事だけ聞いて正面を向いた。
この作戦とも呼べない、運だのみな計画を行うことになった。しかし今のところ私たちに運はついているようだ。
地面についたら急いで、身を低くして一列になって裏口まで走る。一番最初に降りたリンがナースの助けを借りながら必死に走っている。
「バン。」
1つの銃声が異様に大きく聞こえたと思ったら、先頭から3番目のナースが撃たれて倒れた。
「ねえ。」
「バン。」
助けようとしてしゃがみ込んだナースも続けて撃たれた。走りながら一人一人と撃たれて倒れこんでいく。私たちは倒れている人を助ける暇もなく、ただひたすらに走ることしかできなかった。耳元でいくつも空を切る音が聞こえ、銃弾が土をえぐる様子が見える。
「バン。」
次の銃声で目の前のナースが撃たれてしまった。よけないといけないと思ったがもう遅かった。右足に倒れたナースの服が擦れる感触がすると、左足でナースのすねを踏みつけていた。
「痛い。」
「あ、ごめんなさい。」
と思い止まろうとしたが、
「何やってるの。踏みつけてでも走りなさい。」
カミラが後ろから押してきて止まることができない。もう一度足を出すとナースの下腹部を、もう一歩出すとナースの顔面を踏みつけてしまう。生々しい感触が足の裏から全身に伝わる。
「た、すけて。」
右足をつかまれた。
「なにしてるの。」
カミラがその手を蹴飛ばそうした。
「やめて。」
私はナースの手を必死につかんだ。カミラの蹴りが腕に当たる。
「シランさん。やめてください。」
「やめて。無理です。おいていくなんて。」
ナースの手は震えて、顔には私が踏みつけた跡が残り歯は欠け鼻は曲がっている。右目には土が入って充血しているが痛がるようすはない。
「シラン。」
「え。」
聞き覚えがる声だった。
「リンさん。」
「シラン。た、すけ。」
「リンさん。」
「シランさん。」
「バン、バン、シュー。」
この間も絶え間なく銃弾の音が聞こえる。カミラが私の手を取って立たせようとしているが、リンを置いていくことなんて私にはできない。
「シラン。おきろ。」
するとカミラが今まで聞いたことのない口調と大声で叫んだ。驚いて上を見ていると、カミラは涙を流していた。両目から大量に涙を流している。
「シランさん。行きましょう。」
カミラの涙が私の顔に何滴もかかる。リンからはどこからあふれているかも分からない血が地面にたまって、私の足と尻にじっとりとつく。生暖かい。
「やめてください。」
カミラは何も言うことなく、私を引張りながらまた走り出した。
「やめてええええええええええ。」
叫んでいるあいだ私はただリンたちを見ていた。しかしその間にもナースはばたばたと倒れていった。銃声と人が倒れる鈍い音、血の匂いと土の香り、死体と変形した腕と顔私はただ感じていた。
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