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緑の石  作者: ナニカ
36/42

噂 11

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「ほら、着いたよ。」

「ありがとうござい、ます。」

「なに、不貞腐れてるんですか。」

「違います。行くときもこれでよかったんじゃないかって。」

「我儘言わないでください。いいから傷口見せてください。」

「はい。」

カミラがゆっくり包帯を外していく。

「痛い。」

「うわー。すごい出血してるじゃないですか。」

「だから、歩いて行ったからですよ。」

「分かりましたって。でも、もう止まってるみたいなので新しい包帯まきますね。」

「はい、お願いします。」

包帯を取り出して交換していく。

「痛い。きつくしましたか。」

「いいえ。じゃあもう行きますね。」

「待ってください。次はいつリンさんに会えますか。」

「分かりません。でも機会があれば教えてあげますから、安静にしていてください。」

「はい。」

「えらいですね。」

カミラが頭をなでてきた。

「やめてください。血がついてるじゃないですか。」

「そこですか。」

床に落ちている血がついた包帯を持って部屋を出ていった。

 次の機会は二日後か三日後かと考えている内に、その日はやってきた。

「ダン、ダン、ダン、ダンだだだ。」

「急いで、急いで。」

次の日の朝のことだった。怒号と凄まじい足音で目が覚めた。何が起こっているんだ。ベッドから這い上がり、ドアに近づく。

「ガタ、ガタタッタタ。バタバタ。」

「逃げろ。逃げろ。急げ。」

何か大変なことが起きている。私も急いで逃げたほうがと思い、扉を開けようがまったくドアノブが動かない。カミラが昨日鍵を閉めて帰ったんだ。

「ガチャ、ガチャ。」

「助けて。開けて。」

「ドン、どんどん。」

後ろから何かが当たった音がした。ゆっくりと振り返ると

「おーい、ごめんなさい。開けてください。」

カミラが窓に張り付いていた。

「なにしてるんですか。」

「いいから、早く開けて。」

「は、はい。」

右足をかばいながらなるべく急いで、窓に向かう。

「どうしたんですか。」

「話はあとです。早く開けてください。」

窓を持って引いてもびくともしない。ごみでも詰まっているんだろう。

「開きません。」

「ちょっと待って、開けなくてもいいから隙間を作って。」

「は、はい。」

窓をもう一度もって勢いよく引く。窓の上が動いて、窓が斜めに軽くずれた。しかし手からはなれてしまい手を窓枠に挟みそうになる。

「痛い。」

「ありがとうございます。」

目を開けるとカミラの足が窓に挟まっている。

「じゃあ、危ないから手をどかしてください。」

「はい。」

窓から手を放した瞬間、カミラが片足で窓を蹴っ飛ばした。

「ダン。」

と音が鳴る。カミラは反動をつけて体を振って、窓が戻らないうちに両足を隙間に挟みこんだ。そして膝を使って窓を強引に開けた。

「よし。ありがとうございました。」

「何があったんですか。というかなんでここから入ってきたんですか。」

「説明はちょっと待ってください。ドアを開けますからね。」

カミラはそのまま走ってドアに向かった。

「少し近寄らないでくださいね。」

カミラは左手でポケットから何かを取り出した。そのまま左手を地面と平行になるように、正面に伸ばした。次に右手を握りしめて、脇を閉め腕を曲げた。アーチェリーみたいな格好だ。

「ちょっと大きな音がしますからね。」

すると、左手を軽く緩めたと思った瞬間。

「バアアアアアン。」

鋭い空気がきれる音とともに、ドアノブが吹っ飛んだ。

「よし開きましたね。」

「え。」

「じゃあ、ほら背中に乗ってください。」

「え、え。」

「歩いてまた傷を開きたいですか。早く乗ってください。」

よくわからないが、とにかくカミラさんに飛び込んだ。

「よし。行きますね。」

廊下に出ると人が階段に集まっているのが見えた。

「どうなってるんですか。」

「うん。端的に言いますね。今ここは何者かに襲われています。」

「襲われている。」

「はい。正直私もよく分かっていません。とにかく今は逃げましょう。」

「待ってください。ミリーナ、ミリーナは。」

「ミリーナさんは仲間がちゃんと守っています。安心してください。」

「じゃ、じゃあリンさんは。リンさんたちは。」

「、、。」

「待ってください。どういうことですかリンさんたちは守っていないんですか。」

「落ち着いてください。いいですか、相手が狙っているのは恐らくあなたたちです。ここで働いている人ではありません。なので無暗に手を出さないと思います。」

「思いますって。」

「とにかく、今は逃げないといけないんです。」

「待って。待ってください。リンさんだけでも助けられませんか。お願いします。昨日、いい人だってカミラさんも言ってたじゃないですか。」

「、、、。分かりました。行くだけ行きましょう。」

カミラは再び私の部屋に戻って、窓に向かって走り出した。

「な、なにする気ですか。」

カミラは窓から飛び降りた。町の建物が下から上に勢いよく目の前で流れる。髪の毛が重力に逆らって上に上がる様子を見た瞬間、下にものすごい力で押し付けられた。次に

「ビュー。」

と音が聞こえ、また空に投げ出せられた。その間空中で半回転し、娼館の4階の高さまでたどり着いた。

「パリン。」

カミラは足を前にして窓をたたき割りながら、部屋に入った。


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