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緑の石  作者: ナニカ
33/42

噂8

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 エリの部屋が気になって手すりを支えに歩いていく。一歩一歩、着実に早く歩く。

「コツ、コツ、コツツ、コツコツ。」

足音が二つ聞こえてきた。急いで隣の部屋に入った。

「ねえ、この仕事いつまで続けないといけないの。」

「知らないわよ。」

「汚いのよね。人に食べさせたり、おまるの処理したりするの。」

「わかるけど、今ここで働かないとどうするのよ。」

「そうだけど。」

「それに給料もいいし、運が良ければ軍のお偉い方と結婚できるかもだし。」

「ああ、あの人でしょ。青色のスーツの人。」

「そうそう。イケメンよね。」

「分かる。こんど話しかけようかな。」

「あんたまだ話しかけてないの。」

「えええもう話したの。どういう会話。」

「いや、まあ別に『もの落ちましたよ。』って。」

「なにそれ。会話って言わないじゃない。」

「うるさいわね。」

「そんなことより、あの人が運んできた子たちのこと知ってる?」

「ああ、確か片方はここで働いてたのよね。」

「そうそう。それで、片方は元気なんだけどもう片方はまだ寝込んでるらしいわよ。」

「え、私、カミラがその子に手紙を渡そうとしてるって話聞いたけど。」

「そう。元気な方から寝込んでる方にね。」

「で、ちゃんと返事も来たらしいわよ。別の子が渡しに行ってたし。」

「でも。」

「なに。」

「だから。でも返事なんか書けるはずも、相手からの手紙を読めるはずもない。」

「じゃあ誰が書いたの。」

「あんた察しが悪いね。リンさんってここで働くメイドをやけに気にかけていなかった。」

「え、じゃあ、働いていた子に気を使ってリンが。」

「大きな声で言わないでよ。」

「ごめん。でも、リンもあんな体調で。」

「そう。だから私とても心配してるの。」

「カタ、カタ、カタ。」

新しい足音が聞こえてきた。

「やあこんにちは。」

「ああ、こんにちは。」

「こんにちは。こんなところでお会いできるなんて。」

「いやいやこちらこそお会いできて光栄だよ。」

「嬉しいです。」

「きれいです。」

「ありがとう。ところで君たちは何を話していたのかな。」

「いや、あのリン。」

「ちょっと止めなよ。」

「でも、心配じゃないの。」

「そうだけど。」

「なんだい。話してくれないかい。」

「リン、リンさんのことについて話していたんです。リンさん最近体調がすぐれないようで。」

「ああ、大丈夫だよ。ここには軍の最高の医療が揃っているんだから。」

「で、でも。最近、部屋から人が運ばれていくばっかりじゃないですか。」

「ちょっと。」

「それは。」

「それに最近はリンさんじゃなくて、あの子に集中してお医者様が行ってるじゃないですか。」

「あの子って。ミリーナさんのことかい。」

「はい。はい、そうです。あの子のせいで。リンさんがちゃんとした治療を受けられていないんじゃないかって。」

「ちょっと。やめてよ。本当に申し訳ございません。」

「いや、いいんだ。不思議に思う気持ちがあるのはおおいにわかるから。けれど安心してほしい、私たちは全員を平等に治療している。」

「ありがとうございます。あの私にも一つ聞きたいことがあるのですが。」

「ああ教えてほしい。答えられるかは分からないが。」

「お医者様がミリーナさんの部屋の前で話していることをたまたま聞いてしまったんです。『石が一つしかない』って。石って何のことですか。」

「すまない。それは答えられない。しかし悪いものではない、助けることができる唯一の薬と思ってくれればいい。」

「それってリンさんに使うんですか。」

「、、、、、。」

「待ってくださいよ。この娼館を軍が利用できているのはリンさんのおかげなんですよ。リンさんなしにあれだけの怪我人を看病することなんてできなかったんですよ。」

「ああ、分かっている。」

「あの小娘に使うんですか。あの、わけも分からないあいつに。」

「私も同意です。私たちがここでナースとして働いているのもリンさんのためなんです。」

「君たちの気持ちはよく分かった。私個人としても軍全体としてもリンさん含めあなたたちに非常に感謝している。必ず何かしらの功績が。」

「話をはぐらかさないでください。功績なんて何もいりません。私たち、娼婦は社会の最底辺としてどんなに辛く、きついことでも何も言わず働いてきたんです。生きるために。」

「、、。」

「リンさんがいないと私たちはみんな死んでしまっていたんです。希望も何もない孤児だった私たちに、どうにか光を差し込もうとしてくれたんです。こんな低俗な女、軍の方からすればどうでもいいのかもしれません。しかし軍の勇ましい兵隊方は私たちから希望をまた取り上げようとするのですか。泥の中で這いずり回れというのですか。」

「申し訳ない。私はそろそろ行かないといけないんだ。」

「待ってください。」

「待って。」

「バタン。」

「あんた止めなよ。」

男は階段を下りて行った。

 どういうことだ。情報が多くて頭が混乱している。ミリーナは本当は起きていない。あの手紙はリンさんが代わりに書いたもの。リンさんを助けるのもミリーナを助けるのも石が必要。けれど石はリンさんに使われていない。

「かた。」

後ろから物音が聞こえた。左手で手すりをつかみがら体を持ち上げて部屋の奥を見る。すると、そこには体中がやせ細り枯れ木のようになっているミリーナがいた。頭と手足がだらっとなり、空中に浮いて眠っている。

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