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緑の石  作者: ナニカ
32/42

噂7

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そして、評価していいただいた方本当にありがとうございます。頑張ります!

 昨日からあの男は来ていない。私も特に動くことはできないでぼーっとしているだけだった。唯一分かったことはここには常駐のナースさんが何人かいて一日に数回部屋を訪れてくる。ナースさんは全員私と同い年ぐらいの人が多い。

「コン、コン、コン。」

「はい。」

「失礼します。ガン。」

「だ、大丈夫ですか。」

「ああ、大丈夫です。大丈夫。」

頭を少し上げて扉を見てみると、両手でお盆を持って足で扉を開けようとしている。

「あの、一回扉開けてからのほうがいいんじゃないんですか。」

「あ、本当だ。ガチャ。」

扉が一度しまった。

「ガタ。」

お盆を廊下に置いたのだろう。

「失礼いたします。」

明るい笑顔でショートヘアーのナースさんが入ってきた。そして、振り返って左足で扉を抑えながらお盆を持とうとしている。

「あのこの椅子で扉押さえますか。」

「え、ああ。ありがとうございます。」

ナースさんはまた笑顔で私のベッドの近くの椅子を持ち上げて扉の前の置いた。

「おお。本当だ。」

お盆を持ち上げてやっと入ってきた。

「いろいろありがとうございます。ご飯ですよ。」

「は、はい。」

「頭ちょっと失礼しますね。」

私の後ろの枕を立てて、起き上がる補助をしてくれた。

「じゃあ、ゆっくり起き上がれますか。」

「はい。」

お姉さんの細い腕が私の背中と肩を支えて押し上げてくれる。腕がなるべく動かないように慎重に起き上がった。

「ありがとうございます。」

「いいですよ。仕事なので。」

「は、はい。」

「じゃあ、食べますか。」

とお盆の上を見ていると、お皿の半分以下の位置にスープがある。残り半分はおそらくお盆にこぼれているこの液体だろう。

「まあ、ちょっと減っちゃいましたけど。」

「はい。」

ナースさんはスープで濡れているスプーンを持って、私の口に持ってくる。

「はい、あーん。」

「あーん。美味しい。」

すっかり冷めてしまっているスープだが、味は美味しい。

「よかったですよ。はい、あーん。」

 スープは一瞬で飲みきった。飲みきるまでナースさんが食べさせてくれてまるでお嬢様にでもなった気持ちだ。

「お腹すいてたんですね。」

「はい。」

「じゃあ、片づけますね。」

「待ってください。聞きたいことがあるんです。」

「はい。なんですか。」

「ミリーナがどこにいるか分かりますか。」

「教えるのは禁止なんです。」

「教えてくれなくてもいいんです。ナースさんは分かるんですか。」

「私に何を求めているか分かりませんけど、無理なものは無理なんですよ。」

「否定しないってことは知ってるんですね。」

「え、あなた。」

ナースさんの手からお盆が離れた。

「すみません。騙すつもりはなかったんです。ミリーナ私の家族なので、少しでも話がしたいだけなんです。」

「そんなに見つめられたら。」

ナースさんの大きく黒い目と目が合う。

「まあいいですよ。なんて伝えますか。」

「ありがとうございます。」

「あ、待ってください。」

胸のポケットに入っていた鉛筆を取り出して、ポケットからくしゃくしゃの紙を広げた。

「メモします。安心してください。伝えた後にすぐに焼きますから。」

「はい。じゃあ。」

 ナースさんはメモを持って扉を椅子で抑えたまま帰っていった。あの人に頼んで本当に大丈夫か分からいがただ信じて待つだけだ。

 返事が来たのはあれから二日後のお昼だった。私の傷の経過は日に日によくなり、支えがあれば歩けるほどになった。しかし部屋から出ることは許されず、廊下に出てもすぐにナースさんに見つかって部屋に戻される。それ以外には特に不便を感じることはなかったがとにかくトイレのときが恥ずかしかった。上手く歩くことができないので、基本的に部屋でおまるにトイレをする。これだけでも十分に恥ずかしいが、持ってくるナースさんがとてもいやそうにすることが一番辛かった。


「食器の裏を見てくださいね。」

この前とは違うナースさんが唐突にそういって。部屋から去っていった。急いでお盆の上のお皿をひとつづつ持ち上げて確認する。スープのしたに小さい紙切れが入っていた。ミリーナからの返事だ。

「こんにちは。シランさん。少し変わっているナースさんからメモを受け取りました。シランさんが元気と知ってとても嬉しかったです。私はシランさんが起きる1日後に起きたみたいで、そのせいで返事が遅れてしまいました。ごめんなさい。起きてから軍の関係者の方から色々と話を聞いて驚いています。でも、私一人だけじゃないと知れて、シランさんがいると知れて安心できました。ナースさんによるとすぐに歩けるようになるそうです。歩けるようになったらすぐに会いに行きます。ミリーナより。」

ミリーナからの手紙を胸にあてた。

「よかった。本当に生きてた。」

「コン、コン。」

「失礼します。読みましたか。」

「はい。ありがとうございます。」

「いえ、私はカミラさんに頼まれただけで。」

「カミラさん。」

二日前にメモを書いたナースさんのことだろう。しっかり渡して、返事の手配もしてくれたんだ。

「あの、ありがとうございましたと伝えといてくれませんか。」

「はい。分かりました。」

「ぐーー。」

「すみません。安心したらお腹がすいたみたいで。」

「そうですか。じゃあお手伝いします。」

「あ、ありがとうございます。」

ナースさんがスプーンを持ってくれるが、震えていて上手く持てていない。初心者の人なのかなとあまり意識せず完食した。

「じゃあ、持っていきます。」

ナースさんはさっとお盆を持って部屋から出た。そして足音が鳴らないように、立ち上がりゆっくりと扉に近づく。扉の前につくと、耳をあてて廊下の様子をうかがう。

「カタ、カタ、カシャ、ガシャ。」

とさっき部屋を出たナースさんが歩いている音が聞こえる。音がだんだんと小さくなっていく。

「ーーーー。」

音が聞こえなくなるとゆっくりと扉を開けて、廊下に出た。やっぱりあの娼館だ。しかも二階。エリがいた階だ。

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