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緑の石  作者: ナニカ
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噂3

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孤児院に近づくと、入り口にランが立っていることに気づいた。

「おはよう。ラン。どこに行ってたの。」

「おはよう。そんなことよりなんであんた、汚れてるの。」

「ああ、これ。ちょっと転んじゃって。それで桶の水もこぼしちゃって、だからこんなに濡れてるんだよ。」

「嘘はやめろよ。転んでるのにどこも怪我してないだろう。」

「いや、それは。」

「ちょっと行ってくる。」

「いや、待ってよ。」

ランは私の言葉を無視して井戸に向かって歩きはじめた。急いで、桶を置いてランを追いかける。

「待ってって。何をする気。」

「井戸にいる奴らになんかさせられたんだろ。」

「、、。いや違う。大丈夫だから。」

ランの腕をつかむ。すると、ランが振り返った。

「なにが。」

「え。」

「だから、なにが大丈夫なんだよ。」

「なにがって。」

「なんで私たちがこんな扱いを受けなきゃいけないんだ。孤児だからか。卑しい人間だからか。」

「それは。とにかく落ち着いて。」

「どうやったら落ち着けるんだよ。悔しくないの?」

「悔しいよ。でもここで私たちが騒ぎを起こしても状況は何も変わらないよ。」

「あんたなんでそんなことが言えるんだ。ボンロがいなくなったときどうも思わなかったのか。」

「思うって誰によ。」

「世間や。神父に対してだよ。」

「私は私に対して腹が立ったよ。」

「じゃあ一生自分に対して腹が立ってたらいい。それこそ何も変わらない。」

「世間に対して私たちの意見を伝えたら変えられるの。怒りをぶつけたら何か変わるの。」

「舐められなくはなる。今よりはましだ。」

「あんたの価値観を私たちに押し付けないでよ。あんたが良くてもみんなにとって良くない。そんなこと世間から私たちにさせられていることと同じだよ。」

「因果応報だろ。」

「ただの自己満足でしょ。もう大丈夫だから。あんたの気持ちは本当にうれしいから。」

「なにそれ。」

ランの目を睨みつける。

「はぁ。もういい。帰る。」

ランは孤児院に帰り、入り口においてあった桶を持った。

「あ、待って。私が持つから。」

「いい。」

ランは桶を持ったまま孤児院に入った。孤児院ではミリーナがすでに調理を始めていた。

「あ、ランさんシランさん。お疲れ様です。」

「うん。」

ランはぶっきらぼうに答えて部屋に入っていった。

「お疲れ、ミリーナ。」

「どうしたんですか。何かあったんですか。」

「うん。なにかあった。」

「喧嘩はやめてくださいよ。みんなが見てたらマネしますからね。」

「うん。」

ミリーナは話をしながら効率よく調理をしている。

「何か手伝うよ。」

「ありがとうございます。じゃあ水を沸かしてください。」

「うん。」

マッチ箱からマッチを取り出して、火をつける。

「何があったんですか。」

「今、火つけてるから話しかけないで。」

「分かりました。」

 水がぐつぐつ言い出している。

「ごめん。ちょっと気が立ってて。」

「はい。」

「ミリーナは近所の人とか町の人から嫌がらせとか受けてない?」

「まあ最近は多いですよね。」

「だよね。最近流行ってる病気ってさ。ボンロ、。」

「やめてください。関係あるわけないです。」

「うん。」

「何か対策があるはずです。今は私たちだけでもそう思っておきましょう。」

「うん。」

 ミリーナは貴族の召使いとして働く予定だったが、孤児院で病気が流行ってから取り消しになった。皆の憧れである召使いという仕事を、これまた憧れの的であるミリーナが引き受けられなくなるという事実が余計に病気を悪化させた気がした。ミリーナはそのことにおそらく気づいて無理やりに元気に見せようとしているのだろう。

「今度さ。独立記念パレードがあるらしいよ。」

「ああ、そうでしたね。すっかり忘れてました。」

「近くの道も通るらしいよ。」

「ああそうなんですか。」

「見には行けないけど、音とかは聞こえるかもね。」

「確かに。いいですね。子供たちもうれしいでしょうね。」

「うん。屋台とかも出るらしいよ。」

「いいですね。」

「私さ娼館で働いてたころの給料がちょっと余ってるんだ。だから当日みんなになんか買ってこようか。」

「え大丈夫ですよ。自分のために使ってください。」

「私が使いたいんだよ。」で

「なら私もちょっと出しますよ。」

「いいよ。」

「私が出したいんです。」

「ならそうしよう。」

 孤児院の雰囲気はここ最近よくなかった。子供たちが風邪をひいてほとんど寝込んでいることもある。しかし、それ以上に私たち年上組がいら立っていたことが原因だ。お互い冷静になろうとは思っているのだが、夜まともに寝れていなかったり、食事がとれていなかったりしてちょっとしたことで喧嘩をしてしまうようになった。

 パレードはそんな雰囲気をすこしを良くしてくれるに違いないと思った。毎年みんなお小遣いや給料をこの日のために貯めているからだ。

「ちょっと。ランと交代してくるよ。」

「はい。」

自ずとミリーナの声も明るい感じがした。

「コン、コン、コン。」

「ラン。」

部屋の窓をゆっくり開けるとまた熱気が溢れてきた。部屋は朝になっているというのにやけに暗くなっている。

「ラン。」

ランから返事がない。部屋を慎重に見渡すと一番右奥で膝をついている。眠ってしまっているのかと思い、部屋に右足を入れた瞬間何か言っていることに気づいた。

「許すな。許すな。許すな。憎い。憎い。憎い。」

呪文のように下を向きながら唱えている。私が入ってきたことは一切気づいていないようだ。

「ラン、ラン。ラン!」

はっとした様子で上を向き、目があった。

「あんた何してるの。」

「シラン。今の見てた?」

「う、うん。聞こえたよ。あんた何言ってるの。」

「いやなにも。ごめん。」

立ち上がって、扉に近づいてくる。

「ちょっとあんた大丈夫。私が話聞くから。」

扉を出ようとしたランの腕をつかんだ。

「さっきはごめんね。言いすぎたよ。あんたの言い分も本当はあのときすっごく分かったんだ。私さ、臆病だからランみたいなしっかり者にあこがれるんだよ。ごめん。、、、、、。ところでさぁ。ラン。今度パレードあるよねぇ。」

「パレード。」

ランが突然話した。腕に力が入っている。

「う、うん。パレード。そんなに楽しみだったの。」

楽しみとランが思っていないことは明白だった。なぜなら、ランの顔がひどく怯えていたからだ。

「ラン。本当に大丈夫。あっちで一緒に休もう。」

「ごめん。」


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