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緑の石  作者: ナニカ
娼館
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娼館

ここまでご覧いただきありがとうございます。面白ければ評価、ブックマークよろしくお願いします。

 シランにとってこの孤児院は家であり学校であり職場でもある。他の孤児たちにとっても孤児院は彼らのすべてであるし、自分たちがただ一つ存在できる場所なのだ。しかし、孤児たちは孤児院を住まいだとは思っていない。この場所はあくまでも孤児院なのであって、貰い手が来るまでの一時的な建物でしかないのだ。それも、シランたち以外はである。


 私たちはもうすぐ18歳をむかえる。なので、今年が孤児院にいられる最後の年になる。私たちは売れ残ってしまったので、下宿が可能な貴族の召使いになるか娼婦として働くかどちらかを選ぶことになる。娼婦になるのは孤児院が斡旋してくれるだけあってなりやすい。

一方で召使いはとても人気な仕事だ。孤児院以外の一般の家庭からも働きに来ることも多い。給料も高く、有名な貴族のもとにつくとそれ自体がステータスとなり、運が良ければお金持ちの妾になることもできる。けれど、適齢期をすぎた孤児である私たちが慣れる仕事ではほとんどない。私たちの中では唯一ミリーナだけが今現在、通いで貴族の召使いをしている。

 ミリーナのことは正直羨ましいが彼女の普段の態度や行動を見ていると、文句のつけようがない。それに私たちは誰も焦っていない。幼いころから18歳近い女の孤児が娼館に行く様子を普通に見てきたからだ。私たちもいずれと思うと意外と気が楽になるもので、今では娼館のお手伝いに行くついでにベッドの技術を自ら学んでいるくらいだ。

 今日はちょうど娼館に行く日、男子が勉強をする日。孤児院には10歳以上の男子も女子も大勢おり、私たちがいなくても10歳未満の世話は十分にできる。だから、私たち15歳から17歳の女子も孤児院のために働きに出られる。娼館は、中心街から少し外れた南の方にある。そこには疲れた男たちが返ってくる通りだ。

 娼館へ向かう頃まだ町は、暗く静かだった。風は以前よりも強くないが気温は以前よりも低い気がした。娼館が立ち並ぶ南通りへ行くと少し騒がしくなり、荒い息遣いと甘いような臭いが緩い風と共に流れてくる。道端には酔いつぶれた男たちが寝転んでいる。時より、そいつらが私にいやらしい視線を送ってきたり、話しかけてきたりしてくる。そんな輩をかわしながら、娼館へ向かう。

 娼館の前につくと大きなゲートが堂々と開き、中から光があふれている。窓からは、いくつか色のついた細長い布が垂れさがり揺れている。私は下を向き急いで中へ入った。


ここまでご覧いただきありがとうございます。面白ければ評価、ブックマークよろしくお願いします。そして、もし宜しかったら次も見てください。

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