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緑の石  作者: ナニカ
娼館
19/42

娼館18

ここまでご覧いただきありがとうございます。面白ければ評価、ブックマークよろしくお願いします。

「本当ですか。」

「うん、本当だよ。助かるんだよ。」

娼婦は私の手をぶんぶんと振ってくる。しかしその手は生々しい痣だらけだった。

「ほら、これあげるよ。」

娼婦の掌にはきれいな白い布の塊がある。何かを包んでいるようだった。

「いいんですか。」

「うん。いいよ。シランのために手に入れたんだよ。」

「ありがとうございます。」

慎重に娼婦の掌から薬をとりぽっけに入れた。


「あの、ところで今日は謝ろうと思って。」

「えなんで。」

「いや、謝りたいと思ったからで。別に今日薬をいただいたから謝ろうと思ったんじゃなくて。」

「うん。顔見ればわかるよ。」

「はい。えっとじゃあ、昨日は急に怒ってしまってすみません。」

「あっそのことか。ううん。いいの私こそ変なこと言ってごめんね。」

「いや、私にとってあの男の子がとっても大切なのは本当だと思ったので。」

「そっか。本当にシランに大切にされるって羨ましいな。」

「そんなことないです。」

「ふーん。シランって優しいね。」

足をまた、ばたつかせている。

「あの、リンさんとの件はどうなったんですか。」

「なんにも。昨日と変わらないよ。リンって本当に優しいよね。」

足が止まる。

「本当に思っていますか。」

「うん。本当に。」

「本当ですか。」

「本当。」

「でも、。」

「なに、本当だって言ってるじゃん。」

この娼婦がはじめて怒った瞬間だった。

「ごめんなさい。怒らせたかったわけじゃなくて。ごめんなさい。」

娼婦は何も返事をすることはなかった。私もこれ以上どういう言葉をかければいいのか分からなくなった。黙々と作業を終わらせて、ポケットの中に入れてあった薬をぎゅっと握り部屋を後にした。

 正直なところ今は、薬をくれた娼婦よりも薬をあげる男の子ことのほうが気掛かりだった。薬をあげても治るかもわからないうえに、薬をあげる前に死んでしまうかもしれない。今すぐにも死んでしまったらどうしよう。仕事なんか放りだしたほうがいいかもしれない。苦しんでいないか。泣いていないか。なんで今日は太陽が出てくるのがこんなに遅いんだ。ずっと考えがめぐり掃除が終わった瞬間、孤児院へと走りだした。本当なら娼婦の化粧を手伝わないといけないが、今は関係なかった。

 孤児院にはまた光がともっていなかった。孤児院のとびらを乱暴に開けて、男の子のもとに急ぐ。男の子の目は閉じており、穏やかな顔をしているように見えた。私はとっさに男の子の胸に耳をあてた。

「どく、どく、どく。」

動いている。そのときに、私の膝が勝手に落ちた。頭も下がり、より男の子の体に密着する。すると、男の子のお腹が上下に動いているのが分かった。生きている。よかった。落ちた膝を無理やり持ち上げ、ポケットに入っている薬を取り出して広げる。

 匂いがした。独特なあの石の匂いだ。袋の中から緑の閃光があふれ出し、中から石が出てきた。

「なんで、なんでこれを持ってるんですか。」

ミリーナが起きた。

「いや、これ薬なんだよ。」

「薬なわけないですよ。」

私もそう思った。薬なわけがない。これは、不思議な力を与える石なだけ。でもその力がこの子を救えるのかもしれないとも考えていた。

「とにかく、飲ませよう。」

「何言ってるんですか。毒かもしれないんですよ。」

「毒じゃないよ。だって、私たち平気だし。」

「平気って何ですか。変なことがいっぱい起こってるじゃないですか。」

「でも、実験で。」

「実験ってなんですか。最初から思ってましたけど、私ずっと不安だったんです。シランさんとは違って。」

「私だって。」

「いいえ、違います。シランさんは楽しんでたじゃないですか。私に話すときも笑ってましたよね。」

「それは。」

「それに、シランさんの実験では安全性を確かめることを一度もしてないじゃないですか。安全かどうか分からないって何度も言いましたよ。」

「分かってる。でも、それじゃあ。他にこの子を助ける方法が見つからないんだ。」

「お姉ちゃん。それ僕のおからた。」

男の子が目を覚ました。

「そうだ。この子はこの石をお宝といって持ってたよね。それなのに、この子は平気だった。だから、大丈夫だよ。」

「でも。」

「ミリーナやるしかないんだ。このまま放置したところでこの子は良くならないんだよ。」

「、、、、。分かりました。でも、私も飲みます。」

「お姉ちゃんたち。何を話してるの。」

「なんでもないよ。ちょっとまってて、おくすりもってくるから。」

 石を調理場に持っていった。このままの大きさでは飲ますことはできないので、砕いて粉にすることにした。しかし、普通に砕くと以前のように飛散してしまうかもしれないので水中に入れてこすることにした。すり鉢の中に水を張り、石を入れる。緑色の光が様々に反射して私とミリーナを照らす。右手にすりこ木を持ち左手で鉢を支える。ミリーナも両手ですり鉢を持つ。

「行くよ。」

右手を上げて一気に振り落とす。

「ガン。」

水がはねて、石が二つに割れた。水中には石の破片が浮き沈みしている。もう一度、右手を上げて振り落とす。今度は、石がまた半分に割れてずいぶん小さくなった。そして、すりこ木で回しながら、押し付ける。水の音と同時に石が擦れる音が聞こえる。しかし、光はだんだんと消えていき、匂いもしなくなってきた。途中から、ぐるぐると鉢の淵から中心に向けてすりこ木棒を動かす。すり終えた後、コップの上に布をはる。そして、ちょっとずつすり鉢傾けていく。布の上には、先ほどまでのきれいな石の姿はなくただ鉛筆の削りカスのようになっていた。コップから布をあげて、布を絞り水気をとる。

「できた。早くこれを飲ませよう。」

「待ってください。一度私が飲みます。」

ミリーナはそういって布から粉を一つまみ取り、口を上に向けて、薬をいれる。そのまま、コップにある石をこすった水で飲みこむ。

「どう。」

ごくっと飲み込んだ。

「たぶん大丈夫です。今のところなにも起きていません。もし何かっても私も一緒に死にます。飲ませに行きましょう。」

「うん。」

急いで、男の子のそばに急ぐ。男の子はまた静かに寝ていた。

「ねえ、おきて。おくすりだよ。」

そう言うと男の子はゆっくりと目を開けた。

「お薬嫌だ。」

「ごめん。でものまないとなおらないよ。のんでくれたら、お姉ちゃんとってもうれしい。」

「ほんと。」

「うん。ほんと。」

男は軽く口を開いた。私はその口に指で粉を取り、入れる。次に、ミリーナがコップの水を流しいれる。男の子は両側の口から水があふれ、ごくりと飲み込んだ。

「苦い。」

「にがいよね。でも、のめてえらいよ。」

男の子の髪をなでる。男の子はそのまま寝た。

「大丈夫ですかね。」

「分からない。」

「今夜は私がついてるよ。」

「分かりました。何かあったら、呼んでください。」

「うん。」

ミリーナはコップをおいて部屋を出た。その足音が聞こえなくなる前に、音が小さくなった。


ここまでご覧いただきありがとうございます。面白ければ評価、ブックマークよろしくお願いします。そして、もし宜しかったら次も見てください。

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