娼館17
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そのあと、掃除を淡々とこなしていった。掃除がすべて終わり、娼婦が仕事につく頃私はすぐに孤児院に戻った。孤児院にはもう明かりがついていなかった。中に入るとほんのり暖かく、人の匂いとともに寝息が流れてきた。しかし、私はその流れから外れあの男の子が一人で寝ているところに向かった。
扉を慎重に開けると、男の子とそのそばにミリーナが寝ていた。この子の看病のためにおそらくランと交代でそばにいているんだろう。私は、どちらも起こさないように気を使いながら近づく。男の子は眠っていた。額に手を触れてみると、昨日よりは体温が下がってきていた。額から徐々に手を下げていき、目元を触るとかさかさとしている。泣いた跡のようだ。まつげに残っていた雫を親指で拭きとり、頬に掌を重ねる。しかし掌を丸めることはなく指先がまっすぐに伸びるほど、男の子はやせ細っていた。口の端には吐いた跡も残っていた。
すると、男の子の上唇がぴくっと動いた。親指で拭きとった雫が男の唇に付き、浮かせていた。
「お姉ちゃん。シランお姉ちゃん。」
男の子が目を覚ました。
「うん。おはよう。おそくなってごめんね。」
「うん。」
男の子はそういうだけだが、涙があふれ枕に落ちていった。わたしは、涙をハンカチで拭きとり男の子の髪をなでる。
「ねむかったら、まだねてていいからね。」
「うん。」
「お姉ちゃん、何かお話して。」
「おはなしか。おとぎ話はもう、ききあきたよね。じゃあ、お姉ちゃんがこまってることきいてくれない。」
「うん。いいよ。」
「お姉ちゃんのおともだちが、けんかしちゃったんだ。どうしたらいいかな。ほらまえお姉ちゃんとけんかしたとき、さきに“ごめん”してくれだでしょ。どうしたら、おともだちは“ごめんなさい”してくれるとおもう。」
「うーん。分からない。」
「分からないよね。」
「でもね。僕、お姉ちゃんが大好きだよ。だからね。頑張るよ。」
「ありがとう。うん、きっとなおるよ。お姉ちゃん、ここにいるからね。」
男の子は返事もうなずくこともなく、また眠りについた。
次の日も男の子の看病をし続けた。しかし、一向に良くなる気配もなかった。食事も芋をお湯で溶かしたドロドロにしたものを、数杯飲むだけであった。水も脱脂綿に湿らせて、飲ますが吐く回数のほうが多かった。そんな男の子を置いて今日も娼館にいかなくてはならなかった。
男の子をおいて、いつも通りの場所にいつも通り向かった。あの娼婦のもとに。
「ダン、ダン、ダン。」
足音が聞こえてきた。暗闇からまた手が出てきて、私の手をつかみ、足を触らせた。
「あ、シラン。ねえ、早く入ってきて。」
手を引張られ中に入っていく。
「ねえ、シラン。いいことがあったの。」
「そうなんですか。」
「あああ違うの。私がいいことあったんじゃなくて。でも、私もうれしいっていうか。」
「なんですか。」
「薬もらったの。風邪薬。」
「え。」
「今日来た。ブルーのスーツを着たお客さんがね、くれたの。」
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