娼館16
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「シラン。こんばんは。」
「あの。どうしたんですか。」
「うん。」
娼婦の私を挟む力が緩んだ。
「話したくないなら、いいですよ。」
「いや、違うよ。この前シランと話したときに私なりにいろいろ考えたんだ。」
「はい。」
「それでね、私やっぱりシランとこの先もずっと会いたいって思ったんだよ。」
「嘘言わないでください。」
「嘘じゃないよ。」
「本当は何なんですか。」
「だから本当なんだって。まあ、でもね、リンを怒らせたままなのが嫌だったんだ。」
「リンさんのこと好きなんですか。」
「好きっていうか、リンは私にとってお母さんみたいなもんなんだよ。」
「お母さんですか。」
「うん。」
しばらく沈黙が続いた。私は今まで親のいない子供や娼婦をたくさん見てきた。それぞれの人にそれぞれの理由があって、筆舌に尽くしがたい酷いものがほとんどだ。だからこの娼婦にも理由を聞くことができなかった。
「でも、また怒らせたけどね。」
娼婦のほうから口を開いた。
「リンさんとどういう話をしたんですか。」
「いや、頑張るって。足を触れても我慢するからってね。何が問題か分からないんだよ。」
足に何か思いれでもあるのだろうか。
「確かにそうですね。」
「シラン、今日はいろいろ質問してくれるね。嬉しいよ。」
「え、はい。」
「シランこそなんかあったの。私ね、仕事柄いろいろな人に出会うからわかるんだよ。」
娼婦の足が私から離れた。そして、左足を右足の下に組くんだ。
「まあ、孤児院のある子が風邪ひいて。」
「え、大丈夫なの。」
「分かりません。」
「そっか心配だね。でも、こんなときに言ったらよくないかもしれないけど、シランはその子のことが大好きなんだね。」
「違います。好きというか子供が苦しんでいるのが嫌いなんです。」
「違うよ。好きなんだよ。たしかにシランは優しいからどの子が病気になっても心配するかもしれないよ。でも、今日のシランは私に優しくしてくれたでしょ。その子が心配なのにシランはいつもより私に優しくなれたんだよ。それはさ、その子が好きだからだよ。その子のことを思うと心配だけど、どこか安心する。愛らしい笑顔をするあの子が、いつも私を思ってくれているあの子が苦しみながらも生きようとしていることが嬉しい。」
「ダン。」
つい床をたたいてしまった。その拍子に娼婦も飛び上がり私を見つめている。
「もういいです。」
「ごめんね。怒らせるつもりじゃ。」
「分かってます。」
なんでこんなにも怒りがわいてくるのか分からなかった。この娼婦が悪気ないこともわかるし、話している内容が気に食わなかったわけじゃないこともわかる。けれど怒りの理由が分からなかった。
「ごめんね。」
「いいんです。本当に。」
「また、来てくれるかな。」
「仕事なので。」
「うん。」
少しだけリンが怒った理由が分かるきがした。この娼婦は人の事が良くわかるのだ。人が無意識に考えていることや感情が。しかも的確に心の奥をついてくるので、反論もできないし、なんで自分の感情がこんなにも揺れているのかも分からない。
そのあと、掃除を淡々とこなしていった。
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