娼館12
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娼婦は私の手を引張り部屋の奥へと入っていく。左の肘に下がっているランプが左、上と動いている。
「いいから。来て。」
そういって、娼婦がベッドに飛こんだ。私もつられて顔から倒れこんだ。きん、きんとランプの取っ手がなった。
「危ないですよ。」
「ああ、ごめん。つい嬉しくなって。」
手に持っているランプの光が初めて、娼婦の体と顔に当たった。娼婦の肌には張りがあり、鎖骨が出ている。顎筋はシュッとしており、唇が分厚く真っ赤になっている。鼻は高く、目が大きくまつげが長い。誰が見ても美人だという顔つきだった。けれど、この女が娼婦であるというのも誰でもわかるだろう。
「嬉しいって何でですか。」
「なんでも。」
娼婦はさっきまでの悲しい顔を急に変え、口角をいっぱいに上げて笑った。
「じゃあ、もういいですか。掃除しないといけないので。」
「ええええ、待ってよ。ちょっとお話しよ。」
「はああ。分かりました。でも、掃除しながらでいいですか。」
「うん。」
ベッドから起き上がり、ランプを持ち直して掃除用具を取りに行った。その間も娼婦は話しかけてくる。
「シランはさあ。毎日、ここにきてるの。」
「いいえ。」
「ふーん。普段はどこに帰ってるの。」
「孤児院です。」
「孤児なんだ。でも、孤児院って18歳までしかいれないよね。シランは大丈夫なの。」
「はい、私まだ17歳なので。」
「え、私と同い年なの。よく人に大人っぽいって言われない。」
「いわれません。老けてるっていう意味ですか。」
「えええ。違うよ。ごめんね。」
「いいえ。大丈夫です。」
「ねえ、さっきから私が質問してばっかりじゃん。シランからは私に質問ないの。」
「特には。」
「えええ。何でもいいんだよ。」
「失礼なことでもいいですか。」
「うん、まあいいよ。」
「いつからここで働いてるんですか。」
「うーん、そうだねえ。3年前ぐらいかな。それとも最近。よく覚えてないや。」
「そうなんですね。」
娼婦は話しているあいだ、足をバタバタさせていた。
「え、それだけ。」
「はい。もっと聞きたいことあるんじゃないの。」
娼婦の言うことを無視して、掃除を続ける。
「無視しないでよ。でもシランはやっぱり、優しいね。」
「なにがですか。」
「おお、都合のいい耳だ。」
「は、い。」
「ははは。ごめん。だって、私がなんで働いてるとか聞こうとしないのかなって。」
「まあ、そりゃあ私も将来ここで働く予定ですし。」
「えええ。そうなの。楽しみだね。」
足をより一層バタバタさせている。
「楽しみって変な言い方ですね。」
「そうかな。だって、シランに毎日会えるようになるんでしょ。」
「昨日今日あった私に期待しすぎです。」
「期待じゃないよ。」
娼婦は足をバタバタさせるのをやめて。体をうつ伏せにしてからまた再開した。
「埃が立ちます。」
「えー、嬉しいんだもん。」
「眠くないんですか。」
「眠くないよ。今日あんま働いてないし。」
「そうなんですか。」
「えやっぱり怒ったかな。なんか、ここの町のひと皆ちょう努力家が多いっていうか。努力絶対主義みたいな。働いてない人とかに超厳しいよね。」
「まあ。でも、私は怒ったとかじゃないです。なんでかなって考えてて。」
「なるほどね。聞けばいいのに。」
「はい。じゃあ、なんでですか。」
「あのね、私リンさんを怒らせちゃったの。だからそのせい。でも、理由は言いたくない。」
「そうなんですか。」
会話が途切れたところでちょうど掃除が終わった。
「掃除が終わったので、次の部屋に行きます。」
「え、もう。もうちょっといてよ。」
「無理です。」
「だよね。じゃあたまに遊びに行っていいかな。」
「だめです。」
「えー。一緒に掃除してあげるから。」
「だめです。」
「分かったよ。じゃあ、明日、明日は来るの。」
「まあ、はい。」
「よかった。じゃあ明日ね。」
「はい。」
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