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緑の石  作者: ナニカ
娼館
10/42

娼館9

ここまでご覧いただきありがとうございます。面白ければ評価、ブックマークよろしくお願いします。

 結局、仕事の終わりはぎりぎりオープンに間に合うぐらいだった。途中、掃除が終わっていないことを見かねた三階、四階の人がたすけてくれた。仕事帰りは一昨日よりもさらに疲れて、気づいたら孤児院に帰っていた。孤児院につくと着替えることもなく一気に眠ってしまった。

 朝、また高級ベッドで寝ているみたいに暖かくフワフワしていた。でも、また湿ってる。はぁまたか。と思いつつ子供たちを起こす。ある子は、私の右足で起こす。ある子は、肘で起こす。ある子は、腹で起こす。

「ほら起きろ。」

「シランおねえちゃん。ごめんね。」

あの男の子がまた泣きながら話しかけてきた。目元を両手の甲で何回もこすっている。しかし、すべてぬぐい切れずに何滴か頬に垂れている。

「ああ、もういいって。」

「ごめん。」

「うん。早くどけって。」

少し語気が強くなってしまった。

「うわああああん。」

男の子が違う種類の悲しさをもって、泣き始めた。その声が鼓膜にあたり脳にあたる。泣き止ます努力すらしたくないと思ってしまう。

「どうしました。」

「ミリーナおねえちゃあああん。シランおねえちゃんが怒った。」

その言いかたにすら腹が立つ。

「シランおねえちゃん、疲れてるんだよ。ほら、あっちで体ふこう。」

ミリーナが気を聞かせて私から、男の子を話してくれた。

「はあああ。」

とため息がでた。そのため息は消えることなく膝にあたって対流している気がした。

 11歳ぐらいの子がシーツを取り換え始めているころにやっと、ため息が消えて我に戻った。やってしまった。と感じながらシーツを外していく。すべてシーツを外しまた川に持っていく。持っていく間もどう謝ろうか考えていた。

 頃合いを見計らって声をかけてみた。男の子は目が真っ赤だ。

「ねえ。さっきは言い過ぎた。ごめん。」

「ん。」

「まだ怒ってるの。」

「おこってる。」

「怒ってるのか。どうしたら許してくれる。」

「ん。」

「あれ、さっきミリーナお姉ちゃんとお約束しなかった。」

ミリーナが男の子の後ろからやってきて、頭に手を置いた。

「約束、なに?」

「ごめんなさい。」

「ごめんなさい?それが約束なの。」

「そうだよねー。謝りたかったんだよね。」

ミリーナが男の子の頭をなでている。

「そっか。私もごめん。」

私も男の子の肩をなでた。すると、男の子がずっと顔にあった手を一気に広げ私に抱き着いてきた。背中を数回さすってあげる。また、だんだん男の子の呼吸が落ち着き寝てしまった。

「頑張ったんですよ。」

「そうだね。ごめん、ミリーナありがとう。ちょっと疲れててさ。」

「いいですよ。じゃあこの子寝かしつけますか。」

「うん。行ってくるよ。」

男の子を寝かしつけてミリーナに昨日起こったことを話しに行った。


「ミリーナ。」

「はい。あの子安心してましたね。」

「そうかな。」

「はい。シランさんと仲直りできて。」

「うん。」

「ところで今朝、ちょっと疲れてましたよね。昨日大変だったんですか。」

「ああ、そのことなんだけど。またものが浮いたんだよ。」

「石のことですね。何が浮いたんですか。」

「タオル。調理場でシェフが使ってたタオル。」

「タオルですか。」

「なにか分かるかな。」

「いえ、でも。関係ないかもしれないんですけど、そのタオルもしかして濡れてましたか。」

「うん。そりゃね。」

「一昨日のシランさんの服も濡れてて、トマトを握っていた私の手も濡れてたんです。」

「なるほどね。でも、今日も料理したんだよね。そのとき何か浮いてた?」

「いえ。じゃあ関係ないですかね。」

「いや、三つのものに濡れているという共通点が分かった凄いと思う。」

「そうですか。よかったです。でもあんまり深入りしちゃだめですよ。安全かどうかも分かってないんですから。」

「うん、だね。」


 暖炉の薪の橙色が赤色に変わる、ほかの子が寝静まった夜。私はあることをやってみることにした。昼間より冷たく固くなった鉄なべの水の中に、頭巾をいれる。頭巾を取り出す。頭巾の端から水が落ち、ちょぼちょぼと音が鳴る。音が鳴りやんだあとそっと鉄なべから出してみる。そして、ぱっと手を放してみるときゅーっと落ちていったが、床に落ちる音がしなかった。しゃがみ込み確かめてみると芋一個分浮いていた。息を吹きかけてみると奥に芋半個分うごいた。そして、戻ってくる。やっぱり水にぬれたものは浮かすことができるんだ。 

 さらに、どれだけ重いものまで浮かすことができるのか気になった。近くにあったぼろ靴を頭巾の上にのせてみる。まだ芋一個分浮いている。さらに靴の上に鉄製のコップを置いてみる。芋三分の二個分ぐらいまで下がったが浮いている。コップの中にフライ返しやお玉を入れる。一瞬ぐっと下がりコップが倒れてしまった。今度は、コップが倒れないように軽くフライ返しを支えた。また頭巾がぐっと下がったが、約芋三分の一個分ぐらい浮いている。もう一つフライ返しをとろうとしたが両手は、コップが倒れないように支えていて使えない。

 そのとき、ふと思いついた。この頭巾は元の位置に戻ろうとし続けているから浮いている。だから、横に押しても下に押しても戻ってくる。なら、わざわざ下に押さなくても、どれだけ横に押して戻ってくるかを確かめればいい。コップをどかし、調理台におく。そして、右に芋一個分動かしてみる。元に戻る。さらに、芋一個分より少し長めに動かした瞬間ぼとっと落ちた。そのあと、あらゆる方向でやってみても結果は同じだった。頭巾の周り芋一個分はすべて戻る。まるで、透明な球が覆っているみたいだった。私はそれを“場”と名付けた。つまり場の中ではあらゆる方向にある程度、中心に戻ろうとする力が働いている。

 これは面白い。実験はここまでにして眠ることにした。明日ミリーナに教えてあげようと思いウキウキになりながら眠りについた。


ここまでご覧いただきありがとうございます。面白ければ評価、ブックマークよろしくお願いします。そして、もし宜しかったら次も見てください。

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