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アラアクナの怒り

ここでストックが潰えた!!そのため、これ以降は不定期投稿となりますので見たい方はブックマークをお勧めします!

魔眼商人の片手間に書いていますが、期間はそれほど空けたくないと思ってますが頑張ります

 


 "魔導ノ眼"の発現記録を以下に記す。



 1日目。

 アラアクナとの決闘以降、初の発現成功。しかし僅か6秒ほどで切れてしまい動くのも億劫になるほどの疲れと睡魔が襲ってきたためこの日は終わりとする。


 コツは掴んだため翌日に再び試してみる。



 2日目。

 発現に成功。だが、時間がかかり過ぎたため短縮化を行なっていきたい。昨日と違い20秒で切れ、疲労と睡魔もマシになっている。慣れか?



 3日目。

 完全にコツを掴んだため、10秒ほどで発現を確認。さらに1分ほど発現時間が伸びた。回数をこなすたびに疲労と睡魔もマシになっていくのを見るに段々使いこなせてきたのだろうか?


 追記:アラアクナが化け物を見るかのような目で見てきた。理由を聞いてみると、速すぎですわと返答をしてきた。少し気になる発言だったので覚えておこう。



 4日目。

 自在に"魔導ノ眼"を操れるようになった。発現ーー以降、発動と記すーーと無効化を千回試してみると719回目で脳と両眼に痛みが走った。恐らく負荷のかかり過ぎなのだろう。

 疲労と睡魔は完全に無くなった。明日から別の実験を行う事とする。



 5日目。

 "魔導ノ眼"を発動した状態で様々な魔法を使用。結果、事前に分かっていた魔力の視認と新たに術式の視認が出来た。

 前者は空気中の魔力から個人が体内に宿している魔力量など、全ての魔力を視認する事ができる可能性が高い。下限と上限はこれから確かめる。

 後者はアラアクナとスグルに魔法を使ってくれるよう協力を依頼した。結果、術式を視認する事が出来た。


 術式の視認は上手く使えば相手の魔法を一切使わせないようにすることができたり逆に制御権を奪う事が容易に可能となるため要練習とする。


 追記:今回協力して貰った2人が使用した魔法術式を覚えて自分なりに改造した。なお、本人には一切知らせてない。実験の副産物ではあるが、中々に良い収穫物ではあった。



 6日目。

 さらに"魔導ノ眼"を使いこなせれるようになった。昨日の実験の結果、魔力の視認には下限も上限も存在しない事が分かった。しかし、魔力が多すぎると眼と脳に痛みが走ったため上限に関しては仮ラインを設定するようにする。

 いずれこの限界も無くせるようにしておきたいが、不可能に近いだろう。行けるところまでは試してみるが優先順位は少し下げておこう。


 一方の術式の視認に関しては並列思考と併用してみるのがベストだと判断してみた。ただし、アラアクナが僕が術式から魔法を盗んでいる事に気がついて協力を止められた。スグルは気付いてないのでこのまま協力を願おう。



 7日目。

 "魔導ノ眼"を一日中発動し続けて生活してみたが少し不自由だと感じた。どれほどの魔力を視認するのか制御は可能だが、全てを遮断するのは無理だった。片目だけを"魔導ノ眼"にする方が良いだろう。


 今更だが"魔導ノ眼"を発動中の僕は眼の色が薄紫から紫黒色に変わるらしい。アラアクナと同じ色というのは気になったため、仮説でも立てておこう。


 ・アラアクナは僕と同じ"魔導ノ眼"のような身体部位を持っている。


 ・アラアクナが原因で"魔導ノ眼"を使えるようになったため、彼女と同じ色になった。


 ・たまたま紫黒色という色だった。


 三つ目に関してはありえないが、一番ありえるのは1番目だろう……聞いても答えてはくれないだろうな。もう少し彼女が僕に心を開いてくれればあるいは……?



 8日目。


 実験終了。これより研究に移る。




 9日目の朝を迎えて早速研究をしようと思っていると彼女は現れてこう言った。


「絶対にさせませんわよ?」


「何故だ」


 気づけば糸らしき何かで僕の体は拘束されていた。

 片方だけ発動させた"魔導ノ眼"で魔力があるのか視認してみるが魔力は無い……もしかして、彼女が作った糸なのか?種族的にはありえるだろうが……


 何故こんな事を?と聞くと僕を拘束した張本人であるアラアクナは「分かりませんの?」と言って続ける。


「ケルがその眼を発動させてから今日までの8日間。私がどんな気持ちだったか考えた事ありますの?暇で暇で、ようやく協力して欲しいと言われて協力してあげたら私の魔法を盗みましたわよね?………それはまだいいですわ」


「それが僕の研究を止める理由になるのか?」


「今からい・い・ま・す・わ!!」


 ふむ。怒ってるな。どこからどうみても。


「これから研究を始めたらまた私が暇になりますし、何よりせっかく作った料理を食べないのはどうかと思いますわ!それに、必要な会話以外一切行わないのも頭にきますわ!他にもーーーー」


 一つ言うとまるで堰を外し貯水庫のように、どんどん溢れ出てくる。


 流石の僕も一つ一つを覚えて反省の意を示す。そして、全て言い切ったのか僅かに息を荒げたアラアクナに向けて僕は言う。



「分かった。なら研究は当分中止として……補填になるかは不明だが僕に出来ることならなんでも……可能な限りしよう」


「足りませんわ」


「ならば……その前に一つだけ聞きたいが、いずれまた僕は旅に出るが付いてくるのか?」


「勿論ですわ」


「この家は?」


「借りてるんじゃなくて買ったから書類上では私のものなので放置ですわね。戻ってくる頃には埃まみれでとんでもない事になってると思いますわ」


「そうか……話を戻してこれから旅に出るまでの間……いや、最低でも1年間以上は僕が食事を作りお前が何もしなくても良い、所謂自堕落生活を送れるようにしよう」


「なにかとんでもない事になる予感がしますわ……でも、興味が湧きますわね…………仕方ありませんわ。それで一応許しておきますわ」



 今はまだ、彼女に離れられては困る。だから自分でも恐ろしいと思える約束をしてしまったが後悔はしてない。なに、僕の自由時間が無くなるわけじゃないし久しぶりにあの魔法を使える機会にもなるしな。



「それで、いつ旅に出ますの?」


「…最低でも10日後だな。お前は準備とかどうなんだ?」


「私は常に旅をしてたので必要以上に物が別空間に収納してますわ。だから準備万端ですわ」


「そうか。ならこれから僕の準備が整うまでは何もしなくて良いぞ。食事から着替え、体を魔法もしくはお風呂か何かで綺麗にしてから乾かす。他にも、暇が来ないように僕が常に相手をして、全ての要望を叶えるとしよう。あぁ、トイレ等は流石にそちらが決めてくれ」


「自堕落生活というより…………まぁ、いいですわ」


 何か言いた気な様子だな。まぁ、何を思ったのかは薄々分かってるが……


 完全に動くなすら面倒いと思えるほどにアラアクナを堕落させたいな、と思っていると早速お姫様からご命令が下された。


「なら早速、何か食事を作ってくださいな。あと、その間私の相手もして欲しいですわねぇ」


 ニヤニヤと僕を困らせるための命令にも思えるが……ふっ、甘いな。


「いいだろう…【分身体作成】」


「っ!?」


 その魔法名を唱えた瞬間、僕の魔力が丁度半分失われる。


 失われた魔力は僕の隣で人の形に集まっていく。やがて、外見が僕と同じ姿になった魔力の塊にヒビが入る。そして、卵を割って雛鳥が産まれるかのように魔力という殻を破って僕と瓜二つな分身体が産まれる。



【分身体作成】はその名の通り発動者の魔力を使って自身と同じ姿をした分身体を作る魔法だ。性格や保有してる知識など全てが一緒だが、魔力だけは本体である僕よりかは劣る。しかし、それを除けばもう1人の僕のそのものなので中々に便利だ。まぁ、使う機会はあまり無いがな。

 あと、分身体が解除されると分身体が動いている間に体験した事は全て強制的に脳に取り込まれてしまうため情報量が多い場合は頭痛が酷い。


 あれだ、無理矢理知らない記憶を植え付けられるといえば分かるだろうか。




「さて、なら僕は料理を作ってくるとしよう。一号、頼むぞ」


「あぁ、任せろ」


 突然のことに反応が追いついていないアラアクナを余所に僕と分身一号はそれぞれの役割をサッと決めて行動に移す。


 キッチンが何処にあるのか不明だが、なんとかなるだろ。あっ、食材……なんとかなるだろう。






 〜〜



 アラアクナの頭は珍しくーーいや、ここ最近はしょっちゅうーー混乱していた。


 ケルヴィアに怒りを表して文句を言えば、自堕落生活を送れるようにするという返答が返ってきた。そして、それを悪用して二つのことを言って困らせてみようと思ったら魔法で分身を作ったではないか。


 これは予想外。


 今まで見た分身を作る系の魔法とは全く違う魔法だったため驚きも混じっている。


 アラアクナは彼にバレないように分身体を作成した魔法の術式を読み取る。


(分身体というより、並列存在。別次元から呼び出したと言われた方が納得しますわね……魔法を解除するとこのケルヴィアが体験した出来事は全て本体に還元される……強制的に記憶を植え付けるのはかなりリスクが酷いと思うけれど、やはり彼の肉体構造が原因かしら?)


 一瞬でそれだけの情報を読み取ったアラアクナは意識を切り替えて、要求した通り目の前のケルヴィアーーケルに話しかける。


 ちなみに、アラアクナがしれっとケルヴィアの呼び方をケルと変えているが本人は何故か気付いていないのも彼女が怒ってる理由の一つでもある。


「ケル、じゃあ……そうね……そういえば、その状態でも眼は発動出来ますの?」


「……いや、無理だ。記憶に感覚は残ってるのだが、根本的な何かが違うのだろう。眼の構造だと思うが、これも研究対象にっ…なんでもない」


「何も言ってませんわよ?」


 そう言うアラアクナだが、静かに怒りの波動を放っていた。


 また研究……研究…聞くだけでストレス溜まりますわね。


 連日の影響のせいか、一種のトラウマと化しているが彼女をそうさせた張本人は気付いてない。


「……それより、ケル。貴方は料理って出来ますの?」


 気分を変えるためにアラアクナはそう質問をした。現在本体の方のケルは料理を作っている最中のはすだ。そもそもとして彼が料理を出来るのか分からないので少し不安だったのだ。


「確実に言えるのはお前よりは遥かに上手い」


「…」


 何故この男はこうも私を怒らせるような言い方をするのだろうか?と心の底から思ったので、今まで食べた全ての料理より不味かったら絶対に文句を言ってやろうとアラアクナは誓った。


 でも、料理が出てくるまでにこの怒りは少し発散したい。そう思ったアラアクナは目の前に丁度良い人物が居たので彼の名前を呼ぶ。


「ケル〜?」


「な、んだ?」


 囁くような声色にケルはどこか形容し難い感覚に襲われて言葉が詰まりかける。


「少し来なさいな」


「……」


 ケルは頭に手を当てて深呼吸を一つして、覚悟を決めたようにアラアクナに近づく。


 そして、アラアクナは僅かに尖った歯をわざと見せるように笑みを見せてーーー







 〜〜







「調味料が少し足りないな。だが、そうじゃない……何が足りない」


 テキパキと手を動かしながらそんなことを呟く。だが、調味料が少し足りなくても十分に美味しいと思える味わいだ味見の際に思えた。


 しかし、これではダメだ……満足はするかもしれないが心の底から?と聞かれたら肯定はできない。僕が目指すのは心の底から満足出来るような一品だ。

 お腹だけではなく心も満腹にし、脳を幸せで満たす……それが出来てようやく完璧な料理だと僕は思う。



 何が足りない?



 この辺りで取れるらしいサボテンらしき物体を使ったステーキと魔物の肉や野菜を使い、しっかりと味付けもしてーー栄養もきちんと考えてーーどれもが味わいは最高なのだが、何か足りない。



 想いだろうか?よく、心を込めて作ると最高の物が出来ると言う……アラアクナの事を想って作る?

 僕は彼女をただの協力関係でしかない人物だとしか思ってない。そんな状態でどう想いを込めると言うのだ。


 迷う僕に天啓が降りたような感覚があった。


 お礼。アラアクナが言ってきた言葉だ。


「あぁ、それがあったな。彼女には助けられている……お礼、感謝の気持ちを込めよう」


 まだ完璧なお礼も出来ないので今はその気持ちを込めて、この料理を仕上げるとしよう。



 そこからは早かった。


 出来上がっていく料理を一回味見すると、これでもかと言うほどに味わいが変わった気がした。ただの思い込みかもしれないが、これならば…と確信を僕は持った。


 完成した料理を盛り付け、僕は冷める前に素早くアラアクナの元へと向かった。



 部屋に入る前にノックをし、返事が返ってきたので中へと入る。


「待たせたな」


「貴方の分身がいたおかげで楽しめましたわよ?少なくとも暇にならなかったわ」


「で、僕の分身体は?」


 見渡しても僕の分身体は見当たらない。死んだか?魔力の塊と言ってもいいので死んだら残ってる魔力が爆発する仕組みなのだが……そういった爆発音や衝撃は伝わってこなかったが。


 アラアクナが何かしたのか?と思ってると、分身体の結末を彼女は語った。


「ケルの分身は私を怒らせたからストレス発散用にお亡くなりになられましたわ」


「怒らせた?全く、馬鹿な分身体だ」


「……」


 お前がそれを言うのか?とでも言いた気な目線を向けてくる。


「…魔力はどうした?僕の分身体の魔力だぞ」


「さぁ?」


「…………食ったな」


 "魔導ノ眼"を発動させてアラアクナを見ると、彼女自身が持つ魔力と僕の魔力が混ざり合っていた。そこから予想するに取り込んだのだろう。あの量を食われるとなると……恐ろしいものだ。


「それはずるいですわ。どうしようもないですもの」


「正直に言えばいいだけだ」


「えぇ、取り込みましたわ。魔力に味なんてないけれど美味しいと感じましたわ」


「料理食べれるのか?」


「まだまだ食べられますわよ。早く食べさせなさいな」


 料理の代わりに毒物でも食わしてやろうか?と言おうとする口元を無理矢理押さえつけ、さらに頬がピクつくのを阻止するために無感情という名の仮面を被る。



 アラアクナが満足するのだろうか?という不安を抱きながら僕は料理を彼女の前に並べる。


「美味しそうね………な、なら早速」


 涎でも垂れるんじゃないかと思うくらいにキラキラした目を料理に対して注ぐアラアクナは用意したフォークとナイフを使ってサボテンステーキを一口サイズに切って口に含む。


 目を瞑りながら二、三度咀嚼したと思ったら急にカッ!と目を見開く。咄嗟に魔法か何か飛んでくるのではないのか?と警戒してしまう僕だったが飛んできたのは魔法ではなくとても蕩けたような声であった。


「〜〜〜!!」


 頬に手を当てて再び一口サイズに切り取って口に含み、同じような反応をする。そして、どんどん無言で食べていき……かなりの量を用意したのだがあっという間に完食となった。


 超重力場に吸い込まれる物質の如く、すごい勢いでアラアクナの口に運ばれる料理を見て少し引いたのは秘密だ。



 あの様子なら……満足させる事は出来ただろうか。


 早く感想を言え、という欲求を抑え付けて口元を拭くアラアクナを待つ。そして、ふぅと一息吐いた彼女がようやく口を開く。



「私の専属料理人になりませんこと?」


 ははは。


「お断りだ」






……可愛い

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