砂漠の町での出会い
大丈夫かー?と言いながらこちらに走ってくる青年らしき人物を見て僕は少し考える。
(彼も旅を?それとも、この周辺に町でもあるのだろうか?)
遠目でもハッキリわかる黒い髪にあまり見ない顔立ち、腰には少し長めの剣を携えている。
恐らく僕と先程の魔物との戦いを見てこっちに来たのだろう。大声を出して返事を返すのは少し大変なので彼がこっちに到着するまでゆっくりしよう。
しばらくして青年が僕の場所までやってきた。
「大丈夫だったか?なんか宙に砂の塊浮いてたけど」
「大丈夫だ。砂の中に謎の魔物が居たから周囲の砂ごと浮かして、つい先程ドロップアイテムにした」
「やるじゃん。恐らくその魔物はヘルスコーピオンって奴だ。針飛ばしてきたか?」
「針らしき物ならな。速すぎて見えなかったが……ドロップアイテムはこれだな」
「確実にヘルスコーピオンだ。そいつは武器にも防具に使えるこの辺りで一番多く使われてる素材だぜ」
そう言って青年は腰の剣の柄頭をコンコンと叩きながら言う。
「こいつにも使われてるぜ。ここだけだけどな」
「そうなのか」
そろそろ名前を教えてもらうか。
剣一本でここまで来たのなら少なくとも実力者なのは間違いない。この辺りに住んでいるのなら町があるのかもな。
「そういえば名前はなんだ?」
「俺はスグル。スグル・カトウってんだ。この砂漠のオアシスに建てられた第9の町に住んでるぜ。あんたは?」
「僕はケルヴィアと言う。つい最近この世界に来たばかりで今は絶賛一人旅中だ。どこか目指すわけでもなくな」
そう言うとスグルは驚いたような顔をする。
やはり僕がしてることは珍しいみたいだと思っていると彼はある提案をしてきた。
「目的がないんだったら、第9の町に寄ってかないか?案内するぜ」
断る理由もないので僕は答える。
「ならその言葉に甘えるとしよう。ほぼ同じ景色ばかりで飽きてきたからだった」
「決まりだ。ついて来てくれ、ちょっとばかし遠いが体力に自信は?」
「問題はない」
「おっけ。こっちだ」
スグルが歩き出し、僕はそれについて行く。
道中、彼はいろんな質問をしてきた。
「ケルヴィアはどこから来たんだ?」
「第6の町だ。そこで数週間ほど世話になって、つい先日出発してここまで来た感じだ」
「結構離れた所から来たのか。この世界には見たことないものばかりで飽きないだろ?」
「同じ景色が続いたら魔物に襲われない時間が続かない限りな」
「それもそうだな。にしても、宙に浮かして倒すってのは初めて見たなー」
「普段はどう倒してるんだ?」
出来れば今後の事にも参考になるといいな。毎回宙に浮かすと言うのは些か非効率過ぎる。
と、思ったがどうやら参考にはならないアドバイスが返ってきやがった。
「俺はそうだな……こう、ザーって来る予感がしたら方向を定めて剣でズバッ!ってやるな」
「分かった。聞いた俺が悪かった」
第9の町に着いたら誰かに聞くとしよう。
今の僕にとってそんな簡単に倒せる相手ではないのだ。剣で倒すにしても身体強化や魔法を使って、さらに刃こぼれ等を気にした状態で剣を払わなければならない。そう考えると投げるだけの槍は簡単だな。
魔法でも代用は可能だが出来る限りの魔力消費は抑えたいところだ。魔物の大軍勢が襲ってくる可能性もあるしな。例えばここに来たばかりの時に起こったヘルアントのアレとか。
テュフォンという化け物が居たおかげで助かったがあの数は流石に勝てない。強力な魔法を使うまでの時間もなさそうだったしな。
そういえば、彼は処女の集まりの事について知っているのだろうか。
可能なら何処にいるのか……とか知っていたらこれから進む方向を変えることができるのだが。
第9の町には長くは滞在しないつもりだ。長くて2週間少しと言った所か。
今の僕はこの世界を見てみたい。そして、見終わってからまたゆっくりと観光をすればいい。
「僕からも質問をしてもいいか?」
「いいぜ。答えられる範囲内ならな」
「処女の集まりという集団が何処にいるのか分かるか?」
そう聞くとスグルは僅かに眉をピクリとさせ、少し考えるような素振りを見せてから答える。
「っ………いや、あの集団の滞在場所に関しては分からない。何処かの町に居たら分かるかもしれないが、そういった情報は俺の耳には届いてねえ」
「そうか…… 処女の集まりには気をつけろと言われてな。聞けば聞くほど可能ならば関わりたくない集団だと思って居場所を知っていたら避けながら行動をしようと思っていたのだが……」
「あぁ〜、まぁ……近いうちに絶対会うぜ」
「…それはどういう?」
予想外な言葉がスグルの口から放たれたので、その意味を聞くと彼はどこか遠い目をしながら言う。
「あいつらは何故かこちら側の位置を把握しているんだよ」
「そういえば、そんな事も聞いたな」
「ちなみに俺は内通者が居るのではないかと疑ってるが、結婚してからそんなことはどうでもよくなった。妻が処女の集まりの1人なんだよ」
「ほぉ、つまり悪く言うと処女の集まりの被害者か」
「ははっ、ある意味そうだな。ちなみにだが処女とか言っているが結婚して別れたって言う奴らも混ざってるぞ」
「そこに関してはどうでもいいな」
僕が知りたいのはその集団がどこに居るのか、という話だ。何故そこまで知りたいのかというと旅を邪魔されそうだからという理由が一番最初に来る。
他にも多々理由はあるが、やなりグラシャスの話を聞くと色んな手で誘惑してくるとの事なので僕の旅が邪魔されそうだから出来れば出会うのは回避したいのだ。
そういったことを簡単に説明するとスグルはそれは不可能に近いぜ、と言ってきた。
「必ず出会う。これは確実だ……さて、見えてきたぜ。あれが第9の町だ」
スグルは指を指す。その方向を見ると遠くに緑と建物が見えた。
砂漠の色には合わないオアシスの緑とそれを囲むように建てられているレンガ質な構造物。砂漠特有の町並みだ。
「きっと驚くぜ」
「?」
急にそんな事を言うスグルに疑問を浮かべるが彼はその後は何も言わずに進むだけだった。
この言葉にどんな意味が込められていたのかは、町に着いてすぐに分かった…
どこか町の住人達がざわついているのだ。
僕はスグルに今日は何かあるのか?と聞こうとする前にそれらは僕とスグルの前に現れた。
女性しかおらず、種族も何もかもバラバラな集団だった。その先頭に居る下半身が蜘蛛の女性が一歩前に出て言う。
「初めましてケルヴィア様、私は処女の集まりのリーダー、アラアクナ。お会いできて光栄ですわ」
深い笑みを浮かべる彼女に僕は引き攣った笑みを浮かべた。
運命(必然)の出会い




