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エピローグ

 夏休み最後の日曜日。市民劇団の有志公演、最終日。


 客入れが始まり、市民ホールの舞台裏の照明は落とされている。コントロール席の手元照明だけが浮かび上がっていた。


 明里が壁際の床に座っていた。客入れが始まっているので、みんな静かにしている。明里も一人で座っている。

 俺は明里の隣に静かに座る。


 明里が俺を不安気に見てきた。

「緊張している?」

「うん」

「俺も」


「那智、キスしょうか。落ち着くと思うから」

「ごめん。俺、彼女いるから」

「何回もキスしたじゃん」

「リハでね。演技だから」

「那智、いつも演技してるのでしょ。彼女にだって」

「彼女に、彼氏の演技をするのはやめたんだ」


「じゃあ、もう期待できないんだね」

「ごめん」


「今だけでも、私の彼氏を演じてくれない?」

「ごめん。


 俺は明里といるときに、演じたことはない。明里といるときは、素の自分でいた。


 明里に愛想笑いをすることも、何か立派な人物に見せるような嘘をつくことも、したことないし、するつもりもない。


 明里は俺にとって、理想のヒーローでメインヒロインだから」


「私って恋愛対象じゃなかったんだね。そんな立派なものになりたくなかったな」

「ごめん」

「謝ってばかりだね」

「ごめん」

「ま、仕方ないか」


 1ベルがなった。

 俺は立ち上がり、彼女に手を差し伸べる。

「開演だ。楽しもう。そして観客を笑顔に」

「うん。楽しい夢をみんなに」

 彼女は俺の手を取った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 劇の幕が降り、俺たちの夏は終わりを告げる。


 舞台挨拶の照明が落ちると、俺たち役者と主要スタッフは走ってホールに向かう。

 観客をお見送りするために。


 俺の隣で明里が笑っていた。


「ありがとうございました!」を連呼して何度もお辞儀をする。


 この二日間でたくさんの人が、俺たちの劇を観に来てくれた。


 演劇部の2年と3年。父と母。友人。付き合いのある他の劇団関係者。

 榎本さんとその友達も来てくれた。

 それ以上に、もっとたくさんの知らない人たち。


 そして、目の前に日向(ひなた)がいる。その横に、同じクラスの徳山くん。


 田上くんと一緒に、佐々木さんと浜口さんも後ろにいる。

 林間学校の班員全員で来てくれていた。


 日向と徳山くんは花束を持っていた。


 日向は俺の前に来る。いつか榎本さんと選んだ、白のブラウスにセーラー襟のジャケットとミニスカート。

 もう前髪が目を隠すことはない。


「俊が、花束を持っていくと、公演後の役者の好感度をマックスにできると言ってました」


 隣で徳山くんが明里に話しかけている。明里は誰かわかってないみたいだが、花束を渡されると、いきなり彼に抱きついた。


「拓海、お芝居よかったよ。楽しかった?」そう言って、笑って花束を差し出す。

 俺は彼女を思い切り抱き締めた。


「ホントに効果てきめんです」彼女も俺を抱き締める。


「拓海。チョロすぎてこわいですよ?」



 

......................終劇。




最後まで読んでくれてありがとうございます。

初投稿で完結できて嬉しいです。

よろしければ感想など頂けると、今後の励みや、参考になるので、嬉しいです。


新作始めました。ローファンタジーに寄せた恋愛もののつもりです。


転生した元従者と言い張る中二な彼女に、ご主人様扱いされるラブコメのようなもの

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