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がまんして

 俺と日向(ひなた)は康太さんの一門に囲まれ、祝福を受けていた。

 日向は穏やかな表情で、みんなの祝福を受ける。「ん」位しか言ってないが。


 俺が日向の顔面に拳を叩き込んで、プロポーズしてから、

 いや、字づら酷いな。

 日向は感極まったのか、俺に抱きついてきた。


 それからよく覚えてない。

 肺や背骨を圧迫されて、意識が遠のいていたから。

 みんなが止めに入らなかったら、死んでたかもしれない。


 で、今である。


 速人はまだ納得できない、といった表情だった。

「あんな勝ち方で納得できるのか?卑怯じゃないのか?」

 ルールちゃんと聞いてた? 俺は何してもいい、ってルールだったよね。

「日向姉さんに、どちらがふさわしいか勝負しろ」

 嫌だよ。勝てるわけないじゃん。


「速人」日向が速人をにらむ。すごい殺気を出しながら。

 速人も殺気を返す。

 怖い怖い、やめて二人とも。


「速人兄さん。大好きな日向姉さんをとられたからって、みっともないよ?」速人と一緒にいた、美少女小学生がたしなめる。

 小学生に怒られてやんの。


「君達、高1だよね?」誰だっけ? 昨日の夜、ずっと俺のとなりにいた人。会ったとき殴られて血を流していたね。

 確か貴史さん。

 殴りあいしていた和夫さんと二人、康太さんに次ぐ強者らしい。


「はい」

「いいの? 高1で婚約までしちゃって?」

 だよね。いやー、勢いに任せちゃった。日向と付き合ってると、まともな常識が吹っ飛んでくよ。


 でも後悔はしてない。


 俺は返事をしなかったが、納得した顔をした。

「若いって、こわいなー」そう、言って笑った。




 昼前に解散になった。

 みんなも、日向も名残惜しそうだった。

 速人はずっと不機嫌そうにしていた。日向は困った顔をして、速人を見る。

 彼は不貞腐れたようにそっぽを向く。


 彼女はそのままにはしておかなかった。

 彼女は彼を引き寄せ無理やり抱きしめた。

「お正月には帰るから、がまんして」

「そういうことじゃないよ」

 彼女は体を離し、そして彼に微笑んだ。

 彼は視線を泳がせてから、諦めたように微笑み返した。


 振り返って俺を見た彼女は、少し驚いた顔をする。

「拓海には後で何でもしてあげるから、がまんして」とイタズラっぽく耳打ちした。




読んでくれて、ありがとうございます。

次回本編最終話です。その後にエピローグで完結です。最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

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