三日ぶりかな?
「「ごちそうさまでした」」
俺は日向にならって、頭を下げる。
夕食のあと、いつものように二人で食器を片付ける。
どうせなら俺のエプロンも買わない?
この二日間合宿で、彼女とは会ってなかった。
昨日合宿から帰り、今日の昼間は市民劇団の練習に行っていた。
今日は日向のアルバイトが無いので、明里を家まで送った後、日向の部屋に寄っている。
明里とは毎日のように会ってるのに、日向とはあまり会ってない。
いや、毎日のように会ってはいるんだけどね。
夜に彼女の部屋で過ごした後、次の日の午前中には市民劇団の練習に出かける。演劇部の練習がある日は、朝から出かけて、午後から市民劇団の練習の掛け持ち。
平日は彼女は一日おきにアルバイトなので、その日は自分の家に帰る。
そして次の日の夜、日向のアパートに帰る。土日は連続で彼女の部屋にお泊まり。そんな感じ。
うちの親はなかなか寛容だね。
そんなわけで三日ぶりの彼女さんだ。
「三日ぶりですね」食器を洗いながら彼女は話しかけてきた。
なんか期待してるみたいだ。
「そうだね」何だろう?
彼女はしばらく黙っていたが、待ちきれないのか、「何していたか訊いてくれないのですか?」と言った。
ああ、束縛、ごっこ、ね。
「日向は、会ってない日は何してたの?」
「昨日と今日は特に何もしてません。買い物とか掃除とか、昨日はアルバイトも行きました」
それから?
「二日前は俊と可奈と遊びました」
うん、知ってた。田上くんからメールがあったから。誘う前と、別れた後にメールしてくれたよ。
演劇部の合宿の初日、クラスメートの田上俊と榎本可奈の三人で遊びに行ったらしい。
「何して遊んだの?」
「ゲームセンターとカラオケとお茶と買い物です」
「いっぱい遊んだね」
「バイトが無い日でしたから」
「榎本さんに何か買って貰った?」
「お揃いのチャームペンダントです」
「見せて」
彼女は手をタオルでふくと、部屋に戻った。
その間に洗い物を片付けて、手をふく。
彼女が戻ってきた。
可愛い柄の小さな袋を差し出す。開けてもいない。
「開けて」
「はい」彼女は袋を開け、空の袋をゴミ箱に捨てた。そして、ペンダントを差し出す。
俺はそれを受けとる。
可愛いデザイン。榎本さんの趣味だろう。榎本さんが思う、日向が身につけたら可愛いもの。
「捨てますか?」おかしな事を言った。
「何で?」
「他の人から貰った物は、気に入らないですよね?」嬉しそう。
あ、束縛ごっこの続きか。
「捨てないよ?」
むしろ捨ててないか、確認するために見せて貰ったまである。
「そう」不満そう。どうしようかと、ペンダントを見ている。
「片付けといて」
「はい」
部屋に戻ると、化粧品とかを置いてある棚に、ペンダントを片付けた。
俺はベッドを背もたれにして床に座る。
彼女も俺の隣に座った。
「拓海は何をしていましたか?」
「昨日までは、演劇部の合宿。今日は市民劇団の練習。言ってあるよね?」
え? て顔をしてから、「はい」と言った。
忘れていただろ。そもそも束縛したいなら、電話かメールくらい毎日しろよ。
「他には?」
メンドクサイな。これも、言っておかなきゃダメか。
「合宿のお風呂は混浴だった。部屋も男女一緒」
「ん?」流石に彼女の目が点になる。
「えっと」ちょっと焦ってる。思った答えと違ったようだ。
それはそうだ。
「混浴の温泉とかですか? 部屋はみんなで雑魚寝ですか?」
「いや、風呂は二人で入った。部屋も二人部屋」
「んん?」彼女にしては珍しい表情。言い方もレア。
この話題じゃなければ、楽しめたのだけどね。
「いつも一緒にいる子ですか?」
「うん」
彼女は動揺したように目が泳ぐ。何か言おうとして、失敗していた。
でも割りと早く立ち直り、「そうですか」と言って、目をそらした。
束縛できてないけどいいの?
それ以前に、ダメじゃない?
「日向」あ、何か不機嫌な声が出た。俺が怒るのも変なんだけど。
「あ、」彼女がビクッとして俺を見る。「ごめんなさい。拓海の事が興味ないわけではないの」
それから、なんと言おうかと悩みだす。
普通に怒ったら分かりやすいんだけど。
しばらくして、彼女はいつもの無表情で俺を見る。何かを決めたらしい。
「今日は一緒に、お風呂に入りましょう」
「あ、はい」
「お風呂が沸きました。一緒に入りましょう」彼女は楽しそうに、俺の手を取って立ち上げさせた。
あっさりと立ち上がらされた。痛いよ。
彼女は俺を脱衣場に連れ込むと、服を脱ぎはじめる。
なんの躊躇もなく全裸になった。
「脱がないのですか?」不思議そうに訊いてくる。全然裸を隠そうともしていない。
均整のとれた体型。胸の形も美術彫刻のような、完璧さ。
初めて見た、俺の彼女さんの裸。
うん、全然ドキドキしないわ!
何なの? むっちゃ予想通りだよ。
ちょっとは恥じらいとか、せめてフリぐらいは。
明里みたいに恥じらいがあると、……。
いや、これはダメだな。
俺はあきらめて服を脱ぎ始めた。
彼女は興味しんしんて感じで、むっちゃ見てくる。
俺はたえきれず、彼女に背を向けて服を脱いだ。
「むぅ」彼女の不満げな声が聞こえた。




