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ゴールを捧げる

 林間学校、1日目の午後は自由時間となっている。


 田上くん達、サッカー部の有志は、サッカーのミニゲームを企画していた。

 当然俺も参加する。当然?

 ん、田上くん達が主宰だからね。

 同じ班の徳山くんも参加する。彼はバスケ部に入ってるスポーツマンさんだ。


 今、俺たち川遊びに参加した班員4人は、会場に向かって、林の中の遊歩道を歩いている。


「さっきの子、可愛いな」

「明里? 可愛いよ」

 徳山くんが明里の事を話題に出した。ちょっと前は榎本さんの事、良さそうに言ってなかった?

 ま、いいか。榎本さんだから。


「演劇部? 俺、ファンになろうかな」

 ん……。

「推すなら、劇を見てからにしてやって」


 軽くしゃべっていた徳山くんが、表情を改める。

「悪い」


 え? 怒ってないよ?

 不機嫌そうに聞こえた?


「那智くんって、何か思ってたのと違うね」佐々木さんが唐突に話題を変えた。

「?」どういう意味?


「三鬼さんといるときは、保護者みたいで、何か落ち着いた感じなのに」佐々木さんは少し考えてから話を続ける。「さっきは子供っぽかった」


「別に落ち着いてることもないし、特に子供っぽくもないと思うけど?」相手に合わせて、言動を変えるのは当たり前だろ?


「日向があんなんだから、比べると大人っぽく見えるんじゃない?」三鬼日向という彼女は子供っぽい。


「三鬼さんがいないときでも落ち着いた感じだけど。今とか」

「そうかな?」


「というか、さっきの女の子といるときは子供っぽかった。普段より楽しそう」今度は浜口さんが口をはさむ。「三鬼さんといるときより、楽しそうじゃなかった?」


素子(もとこ)、何を言い出すかな」浜口さんの発言に、かえって佐々木さんが慌てる。素子は浜口さんの名前ね。浜口素子、まあ、今はそれは関係ないか。


「浜口さん、何かおかしなとこあった?」これは、俺が責められる流れですか?


「んー、彼女の三鬼さんといるときより、楽しそうだなって思っただけ」

「仲のよい友達と遊ぶのは楽しい。それだけだけど」

「三鬼さんといるときは、さっきほどは楽しそうに見えないけどね」

「友達と彼女は違うよ? 楽しいだけでは付き合い続けられないと思うけど」

「それはそうね」

「わかってもらえて嬉しいよ」


「ごめんごめん。ちょっと那智くんと三鬼さんがお似合いには見えないから、余計なこと言ったね」


 ホント、余計なこと言うね!


「素子、大きなお世話だから」佐々木さんが浜口さんをたしなめる。「那智くんと三鬼さんって、コントみたいで面白いよ。全然噛み合ってないところとか」


 こっちも酷かった。


 徳山くんは、口出しせずに苦笑していた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 サッカー会場は、多目的の広場に設営されていた。サッカー専用ではない運動ができる広場。公式のサッカーができるほど広くはない。


 小さめのコートが白線で引かれていた。

 ゴールは、三角コーンを二つ並べて、コーンの頭にポールをはめたもの。工事現場などで、立ち入りを制限するためのアレだ。

 ゴールキックは強く蹴らずに、転がしてゴールする。

 7対7のミニゲームだ。ゴールキーパーはなし。フットサルとは違う、レクリエーションのサッカーゲーム。


 机を置いただけの本部席に、日向(ひなた)と榎本さんがいた。


「はい」日向に、チームメイト分のビブスを渡される。チーム分けするための、ユニホームがわりの簡易なシャツね。


「日向、ちゃんと手伝いしてるんだ」

「してる。ほめて」

「ありがとう」裏方への敬意を込めて、日向の頭をなでなでする。

 彼女は嬉しそう。


「何をしてるの?」榎本さんが呆れ顔。いや、うらやましそう?

「那智たちは、次の試合ね。20分位後」榎本さんは進行係もしているらしい。


 田上くん達サッカー部員は、審判に出ている。審判したり、試合に出たり、忙しいね。




 試合開始。

 俺たちのチームはサッカー部の田上くんを中心にクラスメイト達。徳山くんも入っている。


 サッカー部はチームに1人の制限をしているので、みんな素人だ。

 特に俺は運動部ではない。球技なんか知らない。


 俺以外にも、吹奏楽部とか合唱部とかもいる。


「おい、パス回せよ!」田上くんが怒鳴っている。


 知るか!


 球技を知らない文化部の3人、つまり俺たちは、ボールが来たら前に蹴る、または、蹴りながら前に突進する、を繰り返す。


「ボンボンサッカーかよ!」田上くんの叫びを無視して、みんなでボールに群がる。


 システム? 知らない子ですね。


 悪いことに、文化部の3人は運動部並みの体力お化けだった。

 演劇もそうだけど、音楽って体力使うんだね。


 俺はボールを蹴りながら敵陣に突っ込む。


 敵チームの圧力で、ゴールから外れて、左サイドに追いやられていく。


「がんばれー!那智ー!」


 黄色い声援が聞こえた。


 俺が追いやられた左サイドの、外側に明里がいた。約束通り、クラスメイト達と応援に来たらしい。クラス違うけど良いのか?


 俺はドリブルするふりをして、ボールを追い越しその場でターンした。


 敵チームの選手がフェイントにかかって俺を追い抜いてしまう。


 田上くんがゴール前に走るのが見えた。


 フリーになった俺は、回転した勢いのまま、踵でボールをゴール前に飛ばした。


 田上くんがあわてて加速する。そして浮かさないように、足の内側で押し込むように転がした。


 ゴール。


 俺は明里をどや顔で見た。


 明里は笑顔で手を振ってきた。


 俺は明里に背を向けて、田上くんに走り寄る。

 前を向いたまま、後ろ手で明里を指差した。


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