夏休みは何して遊ぶ?
夏休み直前。
「那智」休み時間に田上くんに話しかけられた。
今は昼休みではないので、日向は自席で本を読んでいる。
「林間学校の班決めないと」
「うん、田上くんに誘われなかったら、『かわいそうだからどこかのクループに入れてあげてください』、になるとこだったよ」
「ひなちゃんが?」
「僕と日向が」
「そんなことないだろ」田上くんは笑った。その後、小声で「ひなちゃんはともかく」と言ったが、聞こえないことにした。
「田上くんの友達は?」
「徳山を誘った」
男子3人。後、女子を2人か3人で1グループができる。
「ひなちゃん一人って訳にはいかないね」
「うーん」少し考える。なんとなく教室を見渡すと、榎本さんと目があった。
榎本さんは友達と談笑しながらも、キランって目で俺を見る。
何の話をしているか気づいていたの?
田上くんも、榎本さんの視線に気づいて、「うわー」とあきれた声をもらした。
俺たちは目をそらす。
いや、彼女をグループに入れると、彼女の取り巻きから恨まれるの必須だから。
それで、日向がいじめられたりしたら、いじめた子がかわいそうな事になるから。
「田上くん、ごめんね」
「気にするな」
さすがに田上くんも、榎本さんをあきらめてもよい頃だと思うのだけど。そうはならない。
田上くん、もうわかってるよね?
「うん、イケメンで女の子釣りに行くか」
「何?」
「日向の所に行こ」
「日向」
日向は読んでいた本から顔を上げる。
「林間学校の班決めなんだけど」
「ん」
「何も決めてないよね」
「拓海と」
「うん、二人だけってわけにはいかないよね」
彼女は田上くんを見て、「俊」と言った。
ちゃんと田上くんの名前を覚えたらしい。
「あと徳山くんも入っているから」
日向は、徳山くんが誰かわかってるかな?
「女子、あと1人か2人。誰かいる?」
彼女は首をかしげる。うん、期待してない。
「佐々木さん」
俺は日向の一つ前の席の女子に声をかけた。
「はい?」
たまに変な顔する人として、覚えている。
だいたい日向のせいなのだけど。最近は日向から俺の方に来るのが多いので、あまり変な表情してるところを見ない。
「そんなわけで、班決まってる?」
「どんなわけだよ」田上くんが静かにつっこみを入れる。
「林間学校の班決めだよ」
だいじょうぶ、佐々木さんはちゃんと話聞いてたから。日向の頭の悪い発言を楽しみにしてるふしさえある。
「浜口さんとは約束してるけど」
おとなし目のコンビだね。榎本さんグループでないところがよいね。
「だって。日向、誘ってみたら?」
日向は驚いたように俺を見あげる。
俺は黙っている。
田上くんも口を出さない。
日向は佐々木さんをちらっと見てから、俺を見る。すがるような目。
可愛いな。
俺は目をそらす。
「むー」彼女は目を伏せた。
「三鬼さん、一緒の班にいれてくれる?」やっぱり佐々木さんは好い人だね。
日向は小さくうなずいた。
田上くんが、思わずって感じで吹き出した。
「田上くん」佐々木さんが田上くんをとがめる。
「あ、はい。すみません」まだくすくす笑っている。
「何で誘ってくれないかなー」
俺が一人で席に座っているときに、榎本さんに話しかけられた。
「榎本さん、人気ありすぎて取り合いになりますよね」
「決められない。全員同じ班じゃダメなの?」
「ハーレムでも作りたいのかな?」
「那智くんの、私への扱いがひどい件について」
「自業自得ではないでしょうか」
「ふざけんなよ」
怒られた。
「皆に嫌われたくない。そう思うのはいけない事?」
「度が過ぎるとかえって嫌われるのでは?」言い過ぎたか?
「那智くんみたいに?」
「僕は榎本さんの事好きですよ」
「嘘つくな」
「ほんとですよ。美人ですから。特に美人なところがいいよね。美人ってところ以外はなんだけど、まあ美人だからね」
榎本さんはジト目で俺をにらんだ。
「バカにしてる?」
「まさか、ホントの事でしょ」
「ひなちゃん程ではないけどね」
「日向に対抗するなよ。比べるのもおこがましい」
「ひどい。まあ、認めるけど」榎本さんは苦笑した。
日向も榎本さんも似てるとこあるよね。
嘘ばかりなところとか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「二人でいいのに」
学校からの帰り道。日向が不満げに言った。
今日は部活がない日。つまり日向のバイトがない日。
あまりの暑さに最近は、日向も俺にくっついてこない。普通に恋人つなぎで、手をつないでいる。
「いやいや、そうはいかないだろ」
「むー」
「日向、班のメンバー覚えた?」
「拓海と俊。あと、前の席の人」
「佐々木さんね」
覚えてないのかよ。
日向はそこで黙った。
「後二人は?」
返事がない。
「徳山くんと浜口さんな」
「誰?」
一学期終わるのに、まだ覚えてないのかよ。
「林間学校めんどうです」
「川で泳げるらしいよ。水着持ってる?」
「持ってきてない。あと、水嫌い」
「海育ちなのに?」
「海はもっと嫌い」
「泳げないの?」
「泳げるよ」
「日向のところに行きたいな。海水浴しに」
「外洋だから、やめた方がいいよ」
「外洋か。じゃあ日向は海水浴とかしないんだ。海育ちだけど」
「したよ」
「外洋で?」
「地元の子供は外海で泳げるよ」
「泳げるんだ」
「ん」
だいたい聞きたいことは聞けた。ちょっと唐突かと思ったが、彼女は気にしていないようだ。
しばらく黙って歩く。
彼女はもとから黙っていることが多いが、何か物思いにふけっているようだ。暗い目をしているような気がした。
「あれ?」突然彼女は何かに思い当たったように、声をあげた。
「今のって、私と海水浴に行きたいって話でしたか?」
そう聞こえるように話したつもりなんだけどね。ホントは違うけど。
「水着買ってきます。どんな水着が良いですか?一緒に買いにいきますか?」
あ、元気になった。
「泳ぐの嫌ならいいよ」
「私の水着姿が見たいんですよね? 布が少ない方がよいですよね。ビキニとか、お腹や脇がいっぱい空いているワンピとか」
そんなこと言ってない。
見たいけど。
いつもの頭の悪い日向だった。
投稿開きました。ホントすみません。
見捨てずにお付き合いください。




