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ゲームセンター

「話があるって言ったよね」

「言ったね」田上くんがしれっと答えた。

「何でゲーセンにいるわけ?」


 木曜日の放課後。

 俺と日向(ひなた)が帰ろうとすると、田上くんが誘ってきた。

 部活は雨で無しになったらしい。「そんなんでいいの?」と聞くと、

「進学校だからね」と答えられた。

 だったら帰って勉強するべきでは?

 いや、したくないね。わかります。


「可奈ちゃんが謝りたい事があるらしい。つきあってやってくれ」

 榎本さんはどうでもいいのだけど、田上くんに頼まれたら、顔を立てないわけにはいかない。

 日向は、俺がいいならかまわない、とのいつもの態度だった。


 校舎からでると、田上くんと榎本さんは傘をさす。

 俺も傘をさす。日向は傘を出さずに、当たり前のように俺の傘に入って腕にくっついてきた。


 梅雨に入ってから、一緒に帰る日は、傘は一本しか使わない。

「相合い傘ですね。付き合ってるぽいです」と言って嬉しそうだった。最近彼女の感情が分かりやすくなってきた。感情が顔に出やすくなってきたのか。いや、俺が感情を読み取るのに慣れてきただけか。


 傘をさしてバス停につれていかれる。話をするだけでどこまで行くのか。


 梅雨明けと思っていた先の久々の雨の日だった。


 という訳で、バスで向かった先は、郊外型のゲームセンターだった。


「話するのにわざわざゲーセン?バスまで使って?」

「いや、せっかくの部活休みだから、那智と遊びたかったから」

「え?」俺は田上くんの返事にちょっとドキッとした。そうなの?俺と遊びたかったの?しょうがないな。日向ばかりかまってたからね。ごめんね。


「チョロいな、お前」

 何か言ったか?田上くん。


「ひなちゃんも、ゲーセンでよかった?」

「ゲーセンデートは初めて」彼女はめずらしく、田上くんにちゃんと返事をした。最近は田上くんとなら会話が成立するようになった。


 前に「田上くんとは話するようになったんだね」と言ったとき、

「拓海のともだちを大切にしない女は嫌いだと言いました」と答えた。

 直接は言っていないけど。そんなニュアンスの事は言ったね。


「ひなちゃん、ゲーセン初めて?」キョロキョロしている彼女を見て、田上くんが尋ねる。

「初めて」

「地元にも、ゲーセンぐらい有るだろ?」俺も口をはさむ。

「無いよ」

 そうなの?思ったより田舎だった。


「遊ぶ前に、本題を終わらそう」田上くんが、ずっと黙ってモジモジしている榎本さんを振り返った。

 何モジモジしてるのか、このニセモノ美少女さん。気持ち悪い。


「可奈ちゃん。どうぞ」田上くんが、優しく榎本さんをうながす。紳士だね。


「那智くん、かなちゃん。ごめんなさい」彼女は頭を下げた。

 俺という彼氏がいるのに、俺の彼女さんに色目使ったことを謝っているのだろうか?それなら、許さない。うん、それじゃないな。


 日向は興味なさそう。近くのゲームを興味深そうに見ていた。さすがに酷いな。


「私の友だちが、ひなちゃんに迷惑かけたみたい。ごめんね。もうあんなことさせないから」

 前に日向が囲まれてたときの事か。まあ、榎本さんの知らないとこで勝手にやった事はわかってるけど。

「それは、僕に謝らなくていいですよ」俺は何もされてないから。


「日向」

 声をかけると、彼女はゲームから俺に視線を移した。キョトンとしている。返事をしてやれと、目でうながした。

 彼女はつかんでいた俺の腕に顔をうずめて、背中がわに隠れた。

「この人何言ってるの?」と、小声で俺に聞いてきた。


「日向はぜんぜん気にしていないと言ってます」また、通訳させられるのかよ。


 榎本さんは不安顔。謝罪が受け入れられなかったと思っているのだろう。


「いや、ホントにわかってないだけだから気にしないで」

 それでも榎本さんは不安顔をやめない。それはそうだろうな。


「日向、自分で言って」

「何て?」

「ぜんぜん気にしてないから、だいじょうぶだよ」

「ぜんぜん気にしてないから、だいじょうぶだよ」


 棒読みかよ。

 田上くんが、たまらず吹き出した。「ひなちゃん、可愛いな」笑いながら言った。ツボにはまったように笑いが止まらない。


 日向は可愛い。それはそうなんだけど、そんなに笑えるか?


 田上くんにつられて、榎本さんも笑い出してしまった。

 ああ、そういう事か。


 日向はキョトンとしている。

 俺も笑った。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「記念に写真とろ」榎本さんの提案で、普通プリクラと呼ばれる筐体に4人で入った。

 榎本さんが何かわからない操作をしている。

「なんかポーズしてよ」

 え?そうなの?


 俺は舞台の上でするようなポーズをする。

 日向は呆然と固まっている。


 日向には伝わらないと思ったのか「せっかくだから、カップルぽく」と、指示を変えた。


 榎本さんは田上くんの腕を組んで、キラッとした。田上くんも合わせる。好きな女の子に腕を組まれても、平然とする田上くんはかっこいいな。


 日向は俺の首をつかんで引き寄せた。当然ながら、物理的に彼女には逆らえない。

 いきなりキスされた。


「これ、みんなで分けていいの?」

 榎本さんは写真をハサミで切り分けながら尋ねた。

 榎本さんと田上くんが腕を組んでいる横で、俺と日向がキスをしているところが写っている。

 俺は突然の事に目を開けて驚いた顔。

 日向は無表情で俺を見ている写真だった。


「いいんじゃないかな」俺は嬉しそうな日向を見ながらそう答えた。


 そのあと、いくつかのゲームをする。

 日向は格闘ゲームに興味を示した。本物の格闘家がモーションアクターをした、リアル系のゲームをすることにした。

 当然ながらうまくできない。コマンドが入らない。

「こんな技ぐらいできるのに」彼女は強がりを言った。

 リアルならできるんだ。


いつもありがとうございます。


主戦場は音ゲーです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一周回って、むしろ榎本さんにキュンキュンしそうなところ。 日向さんにはもう少し頑張って頂きたく。
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