企み①―7歳―
リド暦786年 四の月 二十五日
ミリー、父上に何を渡したの?
何かこそこそしているけど。
ティモ
リド暦786年 四の月 三十日
秘密。
そのうち分かるわよ。
ところでティモは最近、どう?
側近候補たちとは仲良くやっている?
ミリセント
リド暦786年 五の月 四日
ミリーはまだ僕に知られたくないんだね? じゃあ父上たちを問い詰めるのもやめておくよ。
何かこそこそしているのはバレバレだけど知らないふりをしておくね。
最近は普通だね。王太子として勉学に励んでいるよ。教師たちと話すのはタメになるね。
側近候補達とも普通かな。
ティモ
リド暦786年 五の月 十日
ティモは本当に人のことを見ているわよね。周りの様子をそんな風に感じ取れるの凄いと思うわ。
ティモの教育係の先生方は素晴らしい方が多いわよね。王城に滞在していた時にティモの話を聞いたけど、先生方はとてもティモのことを褒めていたわ。
普通なのね。悪くないのは良いことだけど、折角長い付き合いになるかもしれないのだから仲良くしてみたらどうかしら。
ティモはあまり側近候補達とどうせ話していないでしょ?
私はこの前、お母様の親友の夫人とその令嬢と会ったわ。とても可愛い子で、私のことをお姉様と呼んでくれてたわ。ドルゴラデーフ様にはもったいないぐらいね。
お友達が出来るのはとても楽しいわよ。
ミリセント
リド暦786年 五の月 十二日
僕が見ているというより、父上たちが分かりやすいだけだと思うよ。
そうだね。先生方のことは尊敬しているよ。僕に知識を授けてくれる素晴らしい人たちだ。
仲良くね……、正直同年代の子供は話が合わないんだ。もちろん、ミリーは別だけど。ドルゴラデーフやソロサヘルなんて僕に対抗心があるのか、剣の勝負だ、魔法の勝負だと煩いし。僕に負けているのが嫌みたいだよ。
お友達が出来たんだね。よかった。ミリーが楽しそうで僕は嬉しいよ。ところで、何でドルゴラデーフのことが出てくるの? ドルゴラデーフはまだ婚約者もいないはずだけど。
ティモ
リド暦786年 五の月 十五日
いえ、陛下たちはそこまで顔に出るタイプではないわ。ティモがやっぱり人の事を感じ取れるだけよ。とても素晴らしいことだわ。
先生方とティモが仲良しなのは嬉しいわ。皆、素晴らしい方ですもの。
ティモ、話が合わなくても長い付き合いになるのだから話してみるといいわよ。私以外にもティモには心を許せる人が出来ていてほしいわ。私は例外だけど、7歳なんてそんなものよ。
ティモは本当に頭が良くて、大人びているわね。それに何でもできて、流石だわ。それだけティモは頑張り屋さんだものね。
主君が自分より強いのが悔しいのだと思うわ。それに二人とも今まで同年代に負けたことがなかっただろうから、色々複雑なのよ、きっと。
私のお友達は将来的にドルゴラデーフ様と婚約をする予定なのよ!! 理由は言えないわ。
あとティモ、これはプレゼントよ。前に良いものを手に入れたと言ったでしょう。寄った街の特産品の最高級の糸で刺繍をしたわ。習い始めだから変になっちゃったけど、私の初めての刺繍品もらってくれる?
こんな下手なのいらない! っていうなら捨ててね。
今日はお父様と一緒に領地を見て回ったわ。お父様は領民に慕われていて凄いわ。
ミリセント
リド暦786年 五の月 十八日
ミリーは沢山、僕の事を褒めてくれるよね。
ミリー以外の同年代と仲良くするのは気が進まないけど、ミリーがそこまで言うなら少しは話してみるよ。
ミリーも7歳だけど大人びているよね。ちょっと変わっていて、年相応な所も多いけど、たまに大人と話している感覚になるよ。
それにしてもミリーはドルゴラデーフとソロサヘルと会ったことあるの? なんだか旧知の仲みたいに理解あるみたいだけど。
またミリーの秘密ね。隠したいならいいけど、婚約ね。確かに身分も釣り合うし、ありえるね。
ありがとう。捨てる訳ないよ。ミリーが頑張って刺繍したものでしょ? 僕はミリーの初めての刺繍をもらえてうれしいよ。大事にするね。
公爵は良い貴族だからね。
そういえば、チョコレートの進歩状況はどう?
ティモ
リド暦786年 五の月 二十一日
ティモが頑張り屋さんなの知っているもの。それにティモはとてもすごいもの。ティモが何でも出来るから周りはそれが当たり前と思って褒めなくなってるじゃない。私はそれが納得いかないもの。
幾らティモが元から出来が良くて簡単にこなしているとしてもティモが頑張っているのも凄いのも事実だもの。だから私は沢山ティモに思ったことを言うわ。
ティモも私のこと、ほめてね。褒められた方が私、やる気出るの。
是非仲良くしてみて。
私は例外よ。
会ったことはないけど、一方的には知っているわ。理由はごめん、また秘密。
喜んでもらえて良かった。また上手に出来たら送るね。
チョコレートは作り方はなんとなく知っているけど、それだけじゃ上手く行かないの。美味しいチョコレートをティモに食べさせてあげたいけど、ごめん、時間かかりそう。
今日も一日試行錯誤したけど、上手く行かなかった。出来たら真っ先にティモに食べさせてあげる。
リド暦786年 五の月 二十四日
僕もミリーに褒められた方がやる気出るよ。僕もミリーのことは沢山褒めるよ。
会ったことないけど一方的に知っているね。まぁ、いいや。いつか話してね。ミリー。
楽しみにしているよ。僕からもプレゼントに髪飾りをあげる。この前、商人が持ってきたのだけど、ミリーの赤い髪に似合うと思ったんだ。今度、つけた所見せてね。
チョコレートは難しいんだね。出来た時を楽しみにしておくよ。
今日、側近候補達と話してみたよ。やっぱり子供と話すのは難しいね。
ティモ
リド暦786年 五の月 二十七日
いつか話せるなら話すわ。
ありがとう、ティモ。とても素敵な髪飾りね。嬉しい。大事にするわ。
ええ。出来たら真っ先にティモに食べてもらうわ。だから待っててね。
偉いわ、ティモ。ちゃんと話してみたのね。大丈夫よ、何度も何度も話しかければ、距離は縮められるわ。
私は今日はダンスの練習を頑張ったわ。
ミリセント
リド暦786年 五の月 二十九日
ミリーが髪飾りをつけるの見るの、楽しみにしているよ。
ミリーが言うなら話しかけるよ。
ダンスの練習頑張ってるんだね。パーティーで踊ろうね。
P.S ところで僕の従者が荷造りしているけど、ミリーが何かした?
ティモ