再会まで―7歳―
リド暦 786年 三の月 三日
まだ外出許可が出ないわ。でも退屈とはおさらばできたわ。
王妃教育をまた再開したの。お勉強は大変だわ。でもやるからにはとことんやりたいから頑張ってるの。
お父様は倒れたのだからそこまでつめてやらなくて良いって言ってくれるけど、ティモが私よりずっと先を進んでいるのだと思うとゆっくりなんてしていられないもの。
そうそうお兄様が久しぶりに帰ってきたの。お兄様は凛々しくて相変わらずかっこよかったわ。久しぶりに会うとそのイケメン具合にドキドキしちゃったわ。
ミリセント
リド暦 786年 三の月 六日
勉強を再開したのなら良かった。ミリーの体調が悪いままだったら困るからね。
回復祝いにまた何か送ってあげる。
公爵は心配性だからね。僕も無理してミリーがまた倒れたら嫌だから、無理だけはしないように。体調管理も次期王妃には必要な能力だから。
フィガニードが帰ってきてるんだね。イケメンって何?
ミリーは倒れてからたまに変なこと言うよね。面白いからいいけど。
僕の方は父上が側近候補の子供たちと今度会わせるって言っていたよ。ミリーとも会う事になると思うから、その時はよろしくね。
ティモ
リド暦 786年 三の月 十日
ティモ、珍しいものをありがとう!! これ、カカオじゃない!! これで頑張ったらチョコレートが作れるかもしれないわ。勉強しなきゃだけど、甘味は大事だから、カカオをチョコレートにする研究も始めるわ。
甘い物は正義だものね。
そのまま次期王妃のままかどうかは分からないけど、やったことは自分を裏切らないと思うもの。だから勉強は一生懸命やるわ。もちろん、ティモには心配はかけないように体調管理はする。
イケメン……というのはとてもかっこいい男の人のことを指す言葉よ。ティモも将来は絶対イケメンだわ。今はまだ子供だから可愛いのが勝っているけど、絶対かっこよくなるもの。
側近の名前を聞いてもいいかしら?
ミリセント
リド暦 786年 三の月 十六日
返事が遅れてごめんね。側近候補たちと顔合わせでバタバタしてた。
僕があげたもの、カカオというの? 商人たちも何か分からないけど珍しいものと言っていたのに、よくその名前知っているね。チョコレートが何か分からないけど、ミリーがそれだけ喜ぶということは良いものなんだろうね。それを作る手助け、僕も出来たらやるから力を借りたい時は言って。
またそんなことを言って……、ミリー以外に僕の婚約者はいないんだから、ミリーが王妃になるに決まってるでしょう。また僕に嫌われるかもという妄想をしているの?
イケメンはそういう意味か。ミリーは変な言葉を知っているね。ミリーも将来絶対に美人さんになるよ。大人になったミリーを見るのが今から楽しみだよ。
側近候補の名前はハワード・エイブルガン、アルチアン・ドルゴラデーフ、ホルヘ・ソロサヘルだね。
ちょっとやんちゃな子もいたけど、中々有望そうな子供だったよ。
ティモ
リド暦786年 三の月 二十日
遅れた事は気にしなくていいわ。ティモはとても忙しいもの。寧ろ今までがはやすぎたのよ。
ティモは忙しいのだから無理して交換日記は書かなくていいのだからね。書けるときに書いてくれたらいいわ。私もティモが倒れたら嫌だもの。
ありがとう。ひとまず自分でチョコレートが出来ないか試してみるわ。無理だったらティモにも声をかけるわ。出来たら真っ先にティモに食べさせてあげる。とても美味しいのよ。私の大好物なの。
妄想というか、そういう可能性になることを私は知っているのよ。
今の私、凄く美少女だものね。私も将来の自分を見るのが楽しみだわ。もちろん、大きくなったティモを見るのも楽しみだけど。
宰相の息子、騎士団長の息子、魔法師長の息子ね。やっぱり、そのあたりはそのままなのね。
というか、ティモって本当に7歳? と疑いたくなるほど、大人びているわよね。
P.S お父様から許可が出たので王城に久しぶりに行けるわ。ティモと会うの楽しみ。
ミリセント
リド暦786年 三の月 二十二日
今は王都に向かう馬車の中ぐらいかな?
倒れないようにはちゃんと調整するよ。交換日記は楽しいから書いちゃうだけだから心配はいらないよ。
チョコレートって、見たことないけどミリーは食べたことあるの?
知っているって……まぁ、ミリーがそう言うならいいけど、そうなるかもしれないとしても気を付ければ大丈夫でしょ。少なくとも僕はミリーの事、嫌ってないし。
名前だけで誰の息子か分かるなんてちゃんと勉強しているんだね。偉い偉い。
僕は正真正銘7歳だよ。それを言うならミリーもでしょ。
ミリーと会えるの楽しみにしてる。
ティモ
リド暦786年 三の月 二十七日
馬車の中で書いているわ。多分渡すときは直接になるだろうけど。
ティモが交換日記を楽しいと言ってくれてよかった。私も楽しいわ。
食べたことは、あると言えばあるけどないと言えばないわ。
今はそうでも、いつかは分からないでしょ。
勉強しているからというか、そうなるの知っていたというか……説明が難しいわ。
私の場合は例外だもの。ティモは本当の7歳でしょ。凄いわ。
ミリセント
リド暦786年 三の月 二十八日
食べたことは、あるといえばあるけどないと言えばないって意味が分からないね。
そうなるのは知っていたとか、ミリーは目覚めてから不思議だね。
今日もあった時、挙動不審だったし。
ティモ
リド暦786年 三の月 二十八日
同じ王城にいるのに交換日記しているって不思議ね。これはこれで私とティモは仲良しってアピールできるからいいけど。
えーっと、何と言えばいいんだろう。いつか、ティモにも教えるわ。ティモは信じてくれないかもしれないけど。
だから私の不思議な行動はそういうものと思って、静観してもらえたら助かるの。
久しぶりに会ったティモはやっぱり美形だなと実感して、ドキドキしちゃったの!
ミリセント
リド暦786年 三の月 二十九日
まぁ、こういうのもありじゃない? 仲良しアピールというか、仲良しなつもりなんだけど。
僕はミリーが言うことなら信じるよ。今は言えないならいつか聞かされるの楽しみにしてる。
分かったよ。そういうものと思っておく。でも流石に次期王妃として相応しくない行動なら注意するからね?
ありがとう。でも僕の顔なんて昔から見慣れているでしょ。今更?
今日のお茶会楽しかったね。母上が沢山ミリーに話しかけていたけど、疲れなかった?
ティモ
リド暦786年 三の月 二十九日
仲良しなら嬉しいわ。これでひとまず今は安全だもの。
そのころもティモと仲良しだったら教えるわ。
ええ。その時は注意してほしいの。もしかしたら変なことを言ってしまうことあるかもしれないから。
見慣れてはいるんだけど、改めて……とても綺麗な顔だなと実感したのよ。しばらくドキドキして挙動不審かもしれないわ。なれるためにティモの傍に張り付くわ。
大丈夫よ。楽しかったから。王妃様もとてもやさしいもの。私、王妃様のこと、大好きだわ。
ミリセント
リド暦786年 三の月 三十日
またそんなこと言って。ミリーが面白い限り、僕はミリーのこと気に入ったままだと思うよ。ミリーがよっぽどのことをしない限り。
じゃあそうするよ。
じゃあ、ずっと張り付いていたらいいよ。
それなら良かった。母上もミリーのことを気に入っているからね。ついつい構ってしまうみたいだから。
ティモ
リド暦786年 三の月 三十日
じゃあ全力でティモを面白がらせるように頑張るわ。
あと数日は王城に滞在するからずっとティモに張り付いておくわ!!
王妃様に気に言っていただけているなら嬉しいわ。それより陛下に嫌われていないか心配だわ。
ミリセント
リド暦786年 三の月 三十日
父上の事は気にしなくていいよ。息子しかいないからどういう風に接したらいいか困っているだけだから。
多分、ミリーが話しかけに行ったら喜ぶと思うよ。
ティモ




