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疫病②―8歳―

 リド暦787年 四の月 二日


 識字率ね。確かにそうだわ。

 その問題があるのを考えていなかったわ。

 それだったら紙芝居が良いわ。あのね、紙芝居っていうのは絵を見せて、読める人が裏にある文字を読むの。

 ちょっと作ってみたわ。説明書もつけるから確認してみてね。でも絵本と紙芝居両方を広めるのがいいかもしれないわ。

 隣国から……それは知らなかったわ。そうね。大陸が繋がっているならその分、他国から疫病が入ってくることもあるわね。この世界だと国境も曖昧なところがあるだろうし、完全に疫病が入ってこないようには難しいかもしれないわ。

 出来る限りのことはやるつもりだけど、こういう時もどかしいわね。



 ミリセント



 リド暦787年 四の月 七日


 紙芝居? っていうの、説明書みて確認してみたけど凄いね。これは字が読める人が一人でもいれば楽しめると思う。

 試験的に孤児院で試してみようと思うよ。疫病の絵本だけではなく、他の民に伝えたいことも伝えられるだろうし、素晴らしいことだよ。

 そうだね。発生を防ぐことは難しいかもしれないけれど、発見がはやければはやいほど動きようはある。

 父上には隣国で流行っているという話はしてあるよ。


 ティモ



 リド暦787年 四の月 十一日


 今までの絵本の紙芝居も作ってみることにするわ。

 紙芝居は絵と、声で伝えられるから文字を読めない人でも内容が分かるもの。

 どうにか疫病が実際に発生した時に対応出来たらいいのだけど。

 今日、お母様に「不安そうだけど、何かあったのかしら」と聞かれたわ。疫病が流行るかもしれないというの不安が出ていたのかもしれないわ。

 疫病が流行るかもしれないと、私は知っているわ。でもなぜかって理由は言えないの。言ってしまったら、何かが変わるのではと不安があるから。

 だから、ティモに疫病のことを相談が出来て良かったわ。もしティモがいなかったら私は一人で抱え込んで、どうしたらいいかわかなくなってたかもしれないから。

 だからありがとう、ティモ。


 ミリセント



 リド暦787年 四の月 十四日


 とりあえずこの前送ってくれた紙芝居、量産してみることにしたよ。城の者達も賛同してくれたから。

 吟遊詩人に広めたりするといいかもしれないって。

 僕は素晴らしいものだとは思ったけれど、どんな風に広めるべきかまでは頭が回ってなかったからやっぱり周りの意見は大切だなと思うよ。僕は王子として知らないことが多いと実感する。

 僕の存在がミリーの役に立っているなら良かった。僕はそのことが嬉しい。

 ミリー、不安だったらいつでも僕に言って。僕はミリーが困っていたら何とかしたいから。僕はミリーが大切だから、何でも聞くよ。

 八月に公爵夫人が倒れるかもしれないというなら、そろそろ国内にも入ってきてもおかしくないと思うだけど、まだ見つけられないよ。

 ミリー、考えないようにというのは無理だろうけど、気を楽にした方がいいかもしれない。僕も父上に言われたことがあるけど、僕たちは何でもできる訳じゃない。王族とはいえ、万能ではないからね。


 ティモ



 リド暦787年 四の月 十八日


 ティモが広めてくれるなら手洗いうがいも周知されるかしら。

 そうね。私たちだけでは見えないものがあるもの。色んな人の、色んな視点の話を聞きたいわよね。ティモが王になって、私が王妃になった時、ちゃんと周りの意見を聞くようにしましょうね。

 本当にありがとう、ティモ。私もティモとこれだけ仲良くなれて、ティモが話を聞いてくれて嬉しいわ。

 ええ。不安を感じたらティモに言うわ。だからティモも何かあったら私に言ってね。

 そうね。私は前も今も、決してそんな万能ではないもの。ちゃんと自分を知って、自分の出来ることをやるべきよね!

 私、頑張るわ!!


 ミリセント



 リド暦787年 四の月 二十一日


 そうだね。王族が大々的に広めたら広まると思う。

 ミリーは、以前ちょっと僕に捨てられたら――とか言ってたけど、ちゃんと王妃になるって書いてくれて僕は嬉しいよ。

 うん、何でも言って。

 今日は疫病のことでも忙しいのに側近候補たちと過ごさなければならなかった。やっぱり家族やミリーと一緒にいるよりはまだ心休まらないね。前よりは仲良くなったとは思うけど。

 あと父上と母上とキッドと家族の時間を過ごしているけど、楽しいね。キッドは楽しそうに笑って、僕に手を伸ばしてくれて、本当に可愛いなと思ったよ。



 ティモ



 リド暦787年 四の月 二十五日


 ちょっと思い出したことで、ティモに捨てられるんだってその時は考えてしまっていたもの。今は違うわよ。私はティモの婚約者として、未来の王妃として、ティモの隣で頑張るという意気込みよ。

 側近候補たちと前よりも仲良くなれたなら良かった。長い付き合いになるだろうから、無理して仲良くなる必要はないけど、それなりに仲良くはしたほうがいいものね。

 家族は良いものね。それに赤ちゃんは可愛いものだわ。私もティモの弟に会いに行けるのが楽しみだわ。来月ね、王城に行くことになったわ。沢山、お話しましょうね。会うの楽しみにしているわ。


 ミリセント



 リド暦787年 四の月 二十八日


 僕もミリーに相応しい婚約者として、より一層励むよ。

 ミリー、王城に来るんだね。楽しみにしている。

 キッドは本当に可愛いんだよ。ミリーもあったらきっと可愛いと感じるはずだよ。

 あとミリー、疫病の兆しみたいなのは発見出来たと聞いたよ。詳しくはまだ僕も聞いていないけど、発見が早いなら動きようがあると思う。


 ティモ




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― 新着の感想 ―
[一言] そっちの世界で疫病フラグを叩き折れますように…!
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