試験と夏季休暇の始まり―15歳―
リド歴794年 七の月 二日
最近暑くなってきたわね。体調を崩している人も増えてきたから気をつけないと。
夏季休暇、王都に向かうことはお父様達に連絡しているわ。あなたと夏季休暇も一緒に居られることが嬉しくて、今からワクワクしているの。
少しだけ顔がにやけそうになってしまって、周りに変な目で見られないか心配になったわ。
ミリセント
リド歴794年 七の月 四日
今日はゆっくり寝てね、ミリー。
女子寮に入るのは流石に出来ないのが心苦しいよ。
体調に気をつけないとといった二日後に、ミリーが少し風邪気味だなんて私は心配で仕方ないよ。
学園も今日は休んでいるし、婚約者なのに看病が出来ないことが悲しく思っているんだ。
ティモ
リド歴794年 七の月 六日
私が体調を崩していた間、沢山贈り物をくれてありがとう。それにしても医者まで派遣するなんて本当にあなたは過保護ね。ちょっとした風邪なのに。
私もティモに看病してもらえたらと思っていたわ。でも移したら悪いから看病してもらうのは流石にダメだと思うけれど。王太子であるあなたの身に何かあったら大変だもの。
ミリセント
リド歴794年 七の月 七日
たった数日会えないだけでも私はミリーが足りないって気分になったよ。今日、会えてよかった。
もちろん、私は王位継承権第一だからこそ、自分の身に何かないようには気をつけなければならないことは分かっているよ。それでも僕にとってはミリーが一番大事なんだ。だからつい駆けつけたくなってしまうよ。
もうすぐ学園に入学して初めての試験だね。ミリーなら問題はないとは思うけれど、もし分からないこととかあったら私に聞いて。
ティモ
リド歴794年 七の月 十日
今日は一緒に勉強出来て楽しかったわ。ティモは教えるのも本当に上手よね。それにティモはやっぱり人気者だわ。あなたに勉強を教えてもらった生徒達がキラキラした目で見ていたもの。
私のティモは凄いなと思うと同時に、私のティモなのにって少し何とも言えない気持ちになってしまったわ。こんなことばかり考えていたら駄目ね。流石に人前でこんな独占欲を出すのはどうかと思うから、ここに書くにとどめておくわ。
ミリセント
リド歴794年 七の月 十三日
今日は学園内で身分を笠に着て、平民の子に無理強いをしている貴族を見かけてしまったよ。
注意してなんとかしたけれど、ああいうのが私の知らないところで起こっているかと思うと気分が悪くなった。
学園に入学する前から、私とミリーが過ごしやすいようにとって環境を整えていたはずなのにまだまだ足りないなと落ち込んだ。
ティモ
リド歴794年 七の月 十三日
先ほど授業に出ていなかったのはそれが理由だったのね。ティモが居ないから心配していたわ。
それにしても権力を正しく使うのならばともかく、そう言った間違った使い方をされると困るわね。そのような貴族が増えたりすると、平民たちが反乱を起こしたりする可能性も高まってしまうし……。
そういうのの積み重ねが反乱分子の人達と繋がって、何か起こしたりするのだもの。
落ち込まないで、ティモ。あなたはとても頑張っているわ。私はティモが凄いことを誰よりも知っている。一緒にもっと学園をよくしていきましょう。そう言った行動がきっと良い未来に繋がっていくはずだわ。
ミリセント
リド歴794年 七の月 十八日
生徒会の仕事も結構忙しいよね。歴代の生徒会長はこうやって仕事をするのが大変で、授業の一部も仕事が忙しければ免除されているんだろうけれど、学生の本分は勉強することだろうし、もっと整えないと。
本来ならそう言う風に一学生の負担にならないようにするのが一番だよね。こういう仕事は将来の役には立つだろうけれど、いっぱいいっぱいになっている生徒に関しては根本的に変える必要がある気がするよ。
ティモ
リド歴794年 七の月 二十二日
生徒会の仕事に関する相談を教師の方に出来て良かったわね。こうやって少しずつ改善していけるのが一番いいもの。
前世の記憶でかろうじて覚えている乙女ゲームの世界では、生徒会の特権を攻略対象たちはよく使っていたように思えるけれど……考えてみると好いている女性のためにとそういう特権を使うのってどうかと思うわ。まだ常識の範囲内ならいいけれど、なんというかああいうゲームだとヒロイン至上主義みたいなところがあるから過剰に特権を使っている印象だわ。
ヒロインが想定通り来年やってくるなら、その時に生徒会の面々が職権乱用はしないように見ておかないとね。
ミリセント
リド歴794年 七の月 二十五日
試験、お疲れ様。
私の方は問題なく解くことが出来たよ。ミリーと一緒の勉強会は楽しかったから、夏季休暇中も一緒に勉強しようね。明日にはもう結果が出るという話だから、楽しみだね。
ティモ
リド歴794年 七の月 二十六日
一位おめでとう、ティモ。私も頑張ったけれど、残念ながら十位だったわ。
周りの皆は褒めてくれたけれど、出来ればもっと順位をあげたいから頑張ろうと思うの。
あと明日から王都に向かうのよね? 馬車でもあなたと一緒だと思うと嬉しい。
ミリセント