玩具や絵本を作りたい②―7歳―
リド暦786年 十一の月 三日
ミリーの作った絵本、母上と父上にも人気だよ。城の者達も凄いと言っていたよ。
流石、ミリーだね。絵も自分で描いたなんて本当に凄いと思う。オリジナルなわけではないって、どこかで聞いた話をこういう本にしたってことかな? でもすごい良い出来だと思うよ。
不思議な話だけど、僕はこういうの好きだよ。
生まれてくる赤ん坊に読み聞かせようと、母上の所で本を読んでみたんだ。母上も喜んでくれて嬉しかった。
来月のミリーの誕生日の時には、僕が公爵領に行くね。ミリーに会えるの楽しみにしてる。
ティモ
リド暦786年 十一の月 七日
好評ならよかった。私、嬉しいわ。
私も我ながらよく描けたと思ったの。今度、ティモの絵も描きたいわ。ティモはとてもかっこいいから、絵で表現できないかもだけど、ティモのことを描きたいと思ったの。
ティモがお祝いしに来てくれるの楽しみにしているわ。
誕生日では少しだけどチョコレートのお菓子を出そうと思っているの。ティモに真っ先に食べてもらいたいわ。誕生日パーティーの数日前にはこちらにこれたりするかしら? パーティーの前にティモに一番にチョコレートで作ったお菓子を食べてもらいたいわ。
ミリセント
リド暦786年 十一の月 十日
ミリーの作った絵本、量産して売れないかって城の者達が言っているけどどうする?
もし売ってもいいながら売り上げはミリーに行くようにちゃんと父上や公爵とも話をつけるけど。
チョコレートのお菓子を食べさせてくれるんだね。なら、父上に交渉して、少しはやめに公爵領に行けるように話をつけるよ。
誕生日パーティーの前にミリーのこと、ちゃんと個別にお祝いもしたいしね。
料理の腕が上がったと料理長に褒められたよ。色んなものを取り寄せて、今、料理長と一緒に安価で簡単に作れる料理について研究しているんだ。もちろん、母上への料理も作っているけれど。
父上が全力を尽くしてもまだご飯を食べられないような国民もいると勉強で習ったからね。そういう簡単に作れる料理があれば、良いことなのではという話になったんだ。
結構難しいけど、そういう料理が広まっていればもし何か起こった時に役に立つだろうから。
ティモ
リド暦786年 十一の月 十四日
絵本を売るって、いいわね。ティモが話をつけてくれるなら頼みたいわ。
はやく来てくれるのも嬉しいわ。ティモとのんびり過ごせると楽しいもの。
ティモって本当に八歳? そんな気分になるわ!
ティモは本当に凄いわね。そういう風に考えられるなんて良い王子様だわ。
私もティモの婚約者として頑張るわ。
というか、ティモの書いた事を読んで頭の中で引っ掛かりを覚えているのだけど、それが何のことか思い出せないわ。
ミリセント
リド暦786年 十一の月 十七日
父上と公爵に話をつけている最中だよ。ミリーにちゃんと利益が行くようにするからね。
本当に八歳だよ。見た目通り。
国民のためもあるけど、僕はミリーに相応しくありたいと思うんだ。だから、ちゃんと王族として行動したいんだ。ミリーに褒められたいからというのもあるけどね。
引っ掛かり? なんだろう? 思い出せたら教えてね。
エイブルガンに僕が料理をしていることを知られて、王族なのにとか色々言われたよ。まぁ、料理人たちの仕事を取っているとかならともかく、そういうわけでもないのだからそんなことを言われる筋合いはないと思うのだけどね。口で言い返して黙らせたけど、料理長たちには嫌な思いをさせちゃったな。
それにしても宰相家はどういう教育をしているんだろうか。少し城で働く人たちを顧みない発言をしていたんだ。王侯貴族として立場というのは大事だけど、それは自分の下で働いている人たちを替えのきく存在にすることではないと思うのだけど。
ティモ
リド暦786年 十一の月 二十二日
ありがとう、ティモ。
私に褒められたいからって、ティモは可愛いわよね! それでもそんな理由からでも王族としてちゃんとしようとしているティモが凄いと思うわ。
宰相の息子は……確か、そうだわ。側付きの女性が偏った考え方だったはずだわ!! その影響を受けているのかもしれないわ。
そうね。身分や立場は大切だと思うわ。幾ら人は平等だと思おうとも、人は不平等だもの。私たちは恵まれた暮らしをして、恵まれた身分にいるのは確かだわ。私たちが上で、働いている人たちが下なのも事実だわ。でも替えのきく存在では全くないわね。ちゃんとそういう身分を持っているからこそ、責務を果たすべきとお母様とお父様に私は教わったわ。
ちょっとある事を思い出して、ちゃんと貴族社会で生きて行けるかって思ったけど、私は私のままなんだってこれ書いていて自分で実感して安心したわ。
っていうか、私たち凄く子供らしくないやり取りしているわね。でも私とティモらしいか。
あ、そうだわ。あと積み木や模様をつけたガラガラとかも作ってみたわよ。既存のものもあるけれど、もっと個性豊かにしてみているの。色々考えるのは楽しいわね!!
ミリセント
リド暦786年 十一の月 二十四日
ミリーは褒め上手だよね。益々やる気が出た。
はずって、本当ミリーは不思議だね。何処からそういう情報を手に入れているの? でもそういう偏った考え方の者が傍にいるのは問題だね。少しこちらから宰相に話してみるよ。
そうだね。子供らしくないかも。僕がこういう話をしても他の子供は何言っているの? って感じだからね。僕はミリーがちゃんと僕の話を聞いてくれて、答えてくれるの嬉しいよ。
僕と料理長は決して対等ではないし、僕の方が立場は上だけど、それでも僕が料理長の立場を尊重しないというのは違うんだよね。
何かを思い出したから、ミリーは少し様子が変だったのかな? ミリーが何を思い出して様子が変だったのかは分からないけど、ミリーはミリーだよ。交換日記を始める前も、始めた後も、僕の大事なミリーのままだよ。
もうすぐそっちに向かうね。ミリーが作ったものを確認するの楽しみだな。
ティモ
リド暦786年 十一の月 二十七日
ただ私は分かるというか、ちょっと思い出したの。
宰相様に話をするのね。フラグを折った気がするけど……まぁ、いいわ!!
私はちょっと特殊なのよ。私もティモが考えていることを私に話してくれるの嬉しいわ。沢山もっと、ティモの話を聞きたいわ。
そうね。でもちゃんと立場は考えないとね。お父様も言っていたけど、尊重しすぎて態度が変わっていく人もいるって言ってたわ。料理長はそんなことないと思うけど。
そうね。それでちょっと混乱してたの。不安になっていたけど、ティモのおかげで不安もなくなったわ。ありがとう、ティモ。
もう来るのね。楽しみだわ。ティモがくるまでに作れるだけ色々作るわ。
ミリセント
リド暦786年 十一の月 三十日
ミリーが言える時に言ってね。でも出来れば、そのミリーの隠したい秘密を初めて打ち明けるのは僕にしてほしいな。他の人に打ち明けて、僕に打ち明けないってなったら僕はちょっと悲しいから。
うん、沢山ミリーに話すよ。
そうだね。そのあたりは父上と母上にも言われたよ。ちゃんと考えてやらないと、僕の立場を利用するようになるかもって。
僕は特別何かをミリーにしたつもりはないけど、僕の言葉でミリーの不安がなくなってくれたなら良かった。
今は馬車の中だよ。もうすぐ会えるね。
ティモ