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不老の剣士は呪いを解きたい  作者: こまこま ろにの
冒険者の街エピー
5/18

宿屋

朝日が優しく差し込んでいる。

目覚めは今までにないくらい良かった。と、いうか今までが最悪だっただけか。


……いま思い出すとあれはひどかった。

もはや板を立てて屋根をつけただけのすきま風が吹き抜ける家に、たいした寝具もなく眠っていたのだから。


それに比べれば、今座っているベッドのなんと柔らかいことか。

気を抜けば、もう一度ダイブしてゴロゴロしたくなる魔力を秘めている。


「……これが、魔道具か……」


私はもう一度だけベッドを撫でて、朝食を摂るために一階に降りていった。


「おはようございます」

「ああ、おはよう。どうやらぐっすり眠れたようだね。他の客はとっくに朝食をすませちまったよ」


彼女はこの宿の女将さんである。

昨日私は街に入ったあと、門番さんにオススメされた宿に直行した。


さすがに真っ暗闇の中、街中をブラブラ歩く気にはならなかった。


とまあそんなこんなで、道に迷いながらも宿屋に着いて、お金を払ってベッドにダイブした。


そして今に至る。

あ、ちなみにお金はオークの魔石を売ったときの残りだ。あんまり残らなかったから、宿で一泊しただけで無一文になった。


「朝食、食べるかい?」


少し現実に打ちひしがれていた私に、女将さんは優しく声をかけてきた。


私はおなかに手を当てた。

……そういえば、昨日の夜はなにも食べていなかった。

おなかは今更のように空腹を主張し始めた。


「はい。いただきます」


私はカウンター席で、女将さんの持ってきた料理に手をつけた。

口に入れたそれは、今まで食べたことがないくらい美味しかった。


……というか今までろくな物を食べていないことに気付いた。

草に、未熟な果実に、血抜きも満足にできていないお肉。


……あれ?家といい、食事といい、今までの生活を思い出すと涙が出てくるな。


私は涙をこらえながら、臭みの消えているお肉を噛みしめた。

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