山下り
右手に剣を持ち、くすんだ緑の外套を身に纏い、山を下りていく。
時々、周りからぐるぐるという獣の唸る声が聞こえてくるが、関係ないとばかりに歩き続ける。
しかし、そこから少ししたところで、そいつらは現れた。狼だ。
どうやら私を逃がしてはくれないらしい。
ちらりと後ろを確認する。
合計で六匹の狼が私を包囲し、飛び掛かる機会を窺っている。
「……雑魚が……」
左手を剣の柄に当てた瞬間、そいつらは飛び掛かってきた。
前方の一匹が飛び掛かるのに合わせ、私は右手の剣を突き出し、振り向きざまに左で居合い。
そのままクルリと回転斬りを放ち、牽制する。
――今ので二匹。
やはり、あまり強くはなかった。
そのあとは、石を投げ、蹴りを食らわせ、首を切り裂く。
そして、三匹、四匹、五匹と命を刈り取り、とうとう最後の一匹に突きを放った。
……いま思えば、ずいぶん強くなったものだ。
昔はただの熊にさえ手こずっていたのに。今では弱い魔物の群なら簡単に屠れるようになった。
「……もっとも、身体能力は全く上がらなかったけどね」
自嘲気味に頬を吊り上げ、狼から魔石と毛皮を剥ぎ取る。
毛皮はきっとエピーで買い取ってくれるだろう。
思わぬ臨時収入にほくほくしながら、空を見上げた。
日はもうすぐ真上に昇るだろう。
「……少し急ごう。日が暮れる前に街に着くといいけど……」
私は少し急いで山を下った。