路地裏
きりが悪いので、明日も投稿します。
短編の方も変わらず投稿します。
「はぁ……はぁ……。くそ!なんでこんな目に……!」
私は今、人に追われていて、日差しの差し込まない細い路地を走っている。
そもそも、昼間でも薄暗い路地なのに、今はもう夕方。
もう少し時間が経てば、完全な闇に閉ざされるだろう。
……でも、もしかしたらこれは悪くないかもしれない。
真っ暗闇になれば、私からは奴ら……人攫いどもが見えないが、同じように奴らからも私が見えなくなる。
そうなると、私が無事に生き残るためには、夜になるまで逃げること。そして、詰所に駆け込むこと。
逆に、奴らの勝利条件は、衛兵に報告だれる前に私の口を塞ぐこと。
◆
不老。この呪いをどう使おうか。
この呪いは、私にはデメリットがほとんどないが、それに見合わないほどのメリット、すなわち時間をもたらしてくれる。
唯一、この年齢と身長能力が変わらないことだけは痛いが、それくらいなら、きっと経験でどうにかなるだろう。
私は周りに注意をはらわず、ほくそ笑みながら歩いていた。
……いま思えば、これがいけなかった。
気が付けば、路地裏に迷いこんで、ニヤニヤと笑いを浮かべる男どもに囲まれていた。
「なんの用ですか?」
「いやなに、お嬢ちゃんがひとりでこんなところにいると危ないからなぁ。俺たちが外まで連れていってやるよ」
……やってしまった。
不注意にも程がある。もっとしっかり周りを見るんだった。
こんな男たちが、数人で少女を囲んで、親切に外まで出してくれるとは考えにくい。
「いりません。どいてください」
「おっと、遠慮すんなよ。子供は大人に助けてもらってもなんにも恥ずかしくないぜ?」
目の前にいる男はにやりと笑い、舐めるように私の体を見ている。
……やっぱり、親切なひとには、どう頑張っても見えない。
「本当に、大丈夫……です!」
私は目の前の男の股間を蹴り上げ、脇をすり抜けて駆け出した。
◆
少し前のわたしに、馬鹿か、と言いたい。
周りをしっかり見ろとも。
ここは山とは違ったって、危険なことには変わりない。
山だったら、少し気を抜けば殺されるんだ。
その環境を思い出せ。
荒い呼吸を整えるため、深呼吸をして、改めて気を引き締める。
同じ過ちなど繰り返すものか。
……いくら身体的に成長しないとはいえ、危険な山に身を置いていたため、私の第六感はある程度鍛えられている。
もはや少し先も見えなくなりつつある闇の中、何かが動く気配がした。
そしてその直後、私の目の前に何かが降り下ろされた。
「なんだ?意外とすばしっこいじゃねぇか」
大柄な男は、降り下ろした棍棒を持ち上げ、一層笑みを深めた。
ちらりと後ろを確認する。
ザッザッザッと、小さいが、確かに地面を蹴る音がする。
……きっともうすぐ奴らがここにくる。
時間はあまりない。
街で剣を抜くのは基本的にはダメだが、しかたない。
私は両手を腰に当て、剣の柄を握った。
「お?やりあうってのか?できるだけ傷は付けるなとは言われたが、向こうがその気ならしかたねぇな。……おい。ちょっと痛いかもしれねぇが、精々我慢するんだな」
男は棍棒を振り上げ、私を叩き付けようとしたが、遅い。
無論、私は速いわけではないが、それを補う程に技術がある。
私は男が棍棒を降り下ろす一瞬の隙を突き、男の横をすり抜け、置き土産とばかりに太ももを切り裂いていった。
「ぐあっ!」
男の声が聞こえるが、無視して走り続ける。
男の声がどんどん後ろに流れていく。
そして、後ろから追いかけてきた足音も、今はすっかり聞こえなくなった。




