プロローグ
短編のネタが尽きたので、前から書きたいと思っていたファンタジーを書くことにしました。
二日に一回ほどこちらの作品を投稿します。
力が、欲しかった。
飛んできた火の粉を全て払えるような、力が。
……だから剣を取った。
山に籠って、何度も何度も剣を降り下ろした。
無駄だと知りながら、それでも剣は放さなかった。
朝起きて剣を取り、動物を狩って焼いて食い、そしてそのまま日が暮れるまで剣を振る。
◇
そんな生活が一年続いた頃、私の心はポッキリ折れていた。
「……なんでよ。なんで全然成長してないの……?」
熊と対峙し剣を振るう。熊の首に剣を当てたが、一太刀では切り落とせない。
ニ撃、三撃と続け、ようやく太い血管を切れた。
後は逃げたり、攻撃をいなしたりして時間をおく。
そうすれば自ずと、ほら、熊が倒れた。
……でも虚しいな。血抜きをしながら物思いに耽る。
昔どこかで聞いた話だ。
誰でも少し練習すれば、ただの動物なんて一刀両断よ。
小柄なあの子は確かに言った。そんなに時間はかからないとも。
……それがこのザマだ。
一太刀でなんて倒せないし、出血させられなければもっと時間はかかっただろう。
頑張ったのに……。死物狂いで剣を振ったのに……。なんで私は成長しないんだ……。
◇
あれから更に一年。私は戦い方を変えていた。
剣を地面に軽く刺し、振り上げ土をオークの顔に。
奴が土に気をとられている隙に、振り上げた剣を降り下ろし、オークの足を切る。
「ブモォォォ!」
これで奴は素早く動けまい。後は出来た隙に首を突く。
オークはあっけなく沈んだ。
魔物を簡単に屠った。しかし、私の心は晴れない。
「……筋力も、速さも変わらない……。小手先の技術を覚えないと勝てないなんて……。なんで私の体は成長しないのだろう……?」
オークから魔石を剥ぎ取り、悔しさの滲む瞳で帰路につく。
亡骸はそのまま放置した。どうせ、魔物以外は喰らうまい。
◇
私は決心した。山を降りることにした。
季節が一周回った頃の話だ。
正直、もう限界だったのだ。
剣を振れども力は上がらない。どんなに走ったって速くはならないし、体力も上がらない。
これらの原因を調べたかったし、なによりひとりだとこれ以上強くなれない気がした。
だから私は、家を出た。たくさんの魔石と二本の剣をぶらさげて。
目指すは北の、冒険者の街。