83.選ばれし女神の勇者
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「全く…しつこい奴らだな!? どれだけの冒険者共を魅了すれば気が済むんだ!? 沙織!」
「ご、ごめんなさい// そ、その…私ってやっぱりそれなりに強いじゃないですかー? で、ですから…かなり重宝する存在らしくて。 前衛職ですし…」
「お母さん、それ…僕に対する当てつけ?」
「ち、違う違う! そうじゃないのよ!? 薫!?」
とまぁ、なんとも騒がしい家族である。
現在―――冒険者共に追われている最中というのに。
「ま、待てぇぇぇ! サオリさんを置いていくんだ! そこの鎧の男!! おい!!」
「待ちやがれぇぇぇ!! クソった――れ…」
バタンッ!!
「な!? マーカスがやられた!? いつの間に!? やつめ!? 前を向いて走りながらこっちに攻撃できるのかよ!?」
「くそっ!? 駄目だ! 追い付けねぇ! いったいどんな体力してやがるんだよ、あの3人!?」
態々説明ご苦労と労ってやりたいが、今は止めておこう。
なんせ薫と沙織の両名は急遽だが、俺の扱う外骨格装備――”ギア”を全身に纏っている。
と言っても、外観は至って普通の人間にして見えないだろう。
なんせこいつの正式名称は”インビンシブル・ギア”文字通り、姿の見えない外骨格装備である。
ただこいつは、俺以外の人間に使用する事は不可能だ。
だがこの様に使用制限を無視して使用できている―――という事はつまり。
そう言う事だ。
「まぁ、お陰で倉庫の肥しとならなくて良かった訳か―――ただ」
『はい。 出力の調整はお任せください、こちらでオート調整致します』
「まかせたぞ」
腐ってもあれは並の人間が扱える代物ではない、無茶をすればそれなりの代償を伴う。
奴らに限ってそれはないだろうけどな?
一息ついて後ろを振り向くと、まだまだ追手が迫っていた。
どうにもこうにも、まるできりがない。
仕方ない。
「ジェット!! 現在座標を送る! 出撃要請だ」
『お? 了解っ艦長!! なになに? ワープホールの使用は無し、光学迷彩使用後…艦長の座標を追尾して約2名の人物を輸送…了解だぜ、今すぐ向かう!!』
「おいおい、全部丸聞こえだぞ? こっちに」
『え? まじで? それはすまねぇ! んじゃ! 現場へ直行致します! 艦長!』
「あぁ、任せたぞ」
多少なりとも不安だが仕方ない。
現状俺だけならこいつらを振り切る事が可能だが、どうみても前方の2人は肉体的に限界だろう――
『まぁ、2時間も走り付ければそうなります』
「だな。 しかし、後ろの連中も化け物揃いだなこりゃ…」
『えぇ、その様です」
―――――そして数分後の事。
「あの…リュウジさん。 そろそろ私…」
「ぼ、僕も」
こちらを振り向き額に大量の汗を浮かべる2人。
「解ってる。 だから先に拠点へ戻っていてくれ、詳しい話はそれからにしよう。 ほら、お迎えが来たぞ」
「「迎え??」」
俺はそう告げると青く晴れた空を指差した。
2人の表情は俺の顔を見るや否や、曇り始める。
「え、えっと…リュウジさん?」
「お、お兄さーん?」
「まぁなんだ、向こうで楽しくやってくれ…じゃあな。 ジョイント作動!!」
『了解。 接続ジョイントのロックを解除―――ジェットより入電。 後方4㎞から接近中―――艦長?』
「あぁ任せろ」
「「ふぇ!?」」
2人の首根っこを掴んで持ち上げた俺は――
「んじゃま、いくか…ジェット! 頼んだぞ!!」
『おうよ!! 任せな!!!』
ブン!!
「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」
「「「「「「え?」」」」」」
空高くへ放り投げた。
そして――
ガチャン!!
『キャッチ完了―――いくぜいくぜいくぜぇぇぇぇ!!』
ビュン!!!
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」
目にも止まらぬスピードで目の前から姿を消した。
『あの艦長―――お言葉ですが、この方法はあまりに危険なものだったのでは?』
「だろうな。 普通なら空中でボン!だな。 だが、奴らはインビンシブル・ギアを纏っている。 つまり?」
『成程。 ですが―――アフターケアは保証できませんよ?』
「…まぁそれは…後で謝る」
『―――承知致しました』
そういえばそうだった。
酔いの方の問題は…その~考慮してなかったというか?
なんかごめん!!
そして、追手を難なく振り切った俺はゆっくりと狭い小道を歩いていた。
が――
「………おい、まじかよ」
『申し訳ありません、艦長。 レーダーに反応が―――』
「いや、いい。 そっちは言いっこなしだ」
それよりも何よりも、おれはこういうシチュエーションを良く知っている。
銀の鎧に身を包んだ…如何にもそれっぽい黒髪の少年。
そいつは俺を見るや否や、こう告げた。
「どうも! 僕の名はユウマ・シガです! 実は貴方と一度話をしたくて、ここへやって来ました!」
律儀にも俺に深々と頭を下げた少年。
が、周りの取り巻き連中―――少女達4人にかなり睨まれている。
おいおい、滅茶苦茶お怒りの御様子ですが!?




