80.引き継がれた物
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――――勝負の結果から言わせ貰おう。
「ふふふふ…ふははははは! 圧・勝!!!」
自分と同じ顔をしたやつをボコるのは気が引けたが、そこは割り切ればなんとかなる。
それよりも何よりも、自分自身に負ける―――なんて事があってたまるか。
加えて奴は非童貞! 俺の敵であるのは明白! 許すまじ!!
よくよく考えて見たら、俺には無い物をあいつは大量に持っている。
それはもう、敵と断定する他選択肢はない!
『あの、艦長。 お言葉ですが―――まさか逆恨みで自分と同じ顔の存在をあそこまでボコボコにしたのですか?』
「…何のことやら」
決して奥さんが羨ましいとか。 羨ましいとか、ドストライクだとか思ったことは無い。
ただ単に腹が立っただけだ。
『怪しいですね』
「……」
「お、おま…容赦なさすぎだろ!! 自分と同じ顔のやつをよくもまぁ、ここまでコテンパンに出来るな!? 良心って奴はないのかよ!?」
「ふん。 うるせぇ奴だ。 一方的に俺をボコろうとした奴が何を言ってやがる」
『どっちもどっちだと私は思いますが?』
「「……」」
まぁ、結果オーライという事にしておいてくれ。
とまぁ、話はさて置き。
「で? この戦いの意味は? 何かしら考え有っての行動なんだろ?」
「…いやまぁ」
ん? なんとも歯切れが悪い言い方だ。
まさかと思うが、考え無しに行動を起こした―――なんて馬鹿な話はないよな?
「これからの事を考えると、一回くらいはボコっといた方がいいかな~って…」
「ん? これからの事?」
何を言ってるんだこいつ?と言わんばかりの表情を向けた俺。
「あ、いや。 こっちの話だ。 ただまぁ、こんな俺よりかは百倍マシだと解っただけ恩の字か。 ま…そこのクソみたいな世界でよろしく頼むわ。 色々とな?」
男の身体が薄っすらと消え始めた。
恐らく、その力とやらがもうほとんど残っていないんだろう。
「本当はもう少し慎重にやりたかったんだが、お前にはこういうやり方のほうが…性に合ってるとおもってな? さて!! 最後の最後に置き土産だ。 いいかぁ? 拒否権はねぇぜ? 黙って受け取る事だな? それと…後は任せた!! じゃあな? おれ! あっちの世界で待ってるぜぇ~…」
俺と同じ顔をした男がふわふわと天へ舞い上がる。
いや、ちょっと待て。 肝心の俺をこんな所へ呼び出した目的を教えろよ!?
勝手に逝こうとするな!?
「お、おま! 待て! おい! おい!」
「さようなら~! また会う日まで~! さようなら~!」
あいつ…絶対ワザとやってるだろう。
俺の事を解っていてワザとやってるだろう?
「いや! まじで待て!! 話をしろ! 話を!! おい!!」
「まぁまぁ、落ち着けって俺。 もうじき解る。 じゃあな!」
「――は?」
その瞬間。 目の前が真っ白になった。
そして―――
「っは!?」
目を覚ました俺は周りを見渡した。
ここは? 確か、薫の家か…そうだ。 俺は昨日、”沙織”と一緒に夜中まで酒を飲んでいて。 たしか、リビングで寝てしまったんだな? そうそう――で。 沙織は”また”酔って眠ってしまったらしい。
「ったく。 相変わらず沙織は…涎が垂れてるぞ」
テーブルに突っ伏した沙織の涎を軽く拭った。
まるで何時もの事のように―――そう、何時もの―――
「…………おっと。 まじか」
「ふぁ? ご、ごめんなさい! 私ったら一緒になって眠っちゃったみたいで!」
「いやいや、俺は気にしていない。 沙織…さ…ん」
「??? どうされました?」
あれ?なにか変だ。 俺は昨日までこの人を”沙織さん”と呼んでいた筈。
それにこの記憶はなんだ? 10年…いや、それ以上一緒に彼女と連れ添った様な、この変な記憶は!?
あれからこれまで、色々と濃いめの記憶が俺の中に存在する。
まてまてまて! そんな筈はない。
俺は童貞で? 彼女が出来た事すらない男だぞ? それがどうした? 彼女の顔を見るだけで、鼓動が早くなる。
いやいやいや!? なにこれ!? 昨日まで無かった奴!?
心無しが顔の周りが熱を帯びている気がする。
いや、まて。 これは熱に違いない、酒の飲み過ぎと…こんな所で眠ってしまったせいで俺は風邪を引いたんだ。
そうでなければおかしい。 この反応は変だ。
「ま、まさかあの男!? これが目的か!?」
「????」
見つめる彼女の視線を反らした俺は天井を眺めた。
奴め、俺が身内に甘いと知ってか。 まさか自分の記憶を俺に?
馬鹿な話だとは思うが、こんな記憶は昨日の俺には無かった。
だからこそ余計に変な気分だ。
昨日までの記憶はしっかりと残っている。 確かに俺の中に在る。
だが、無かったものが存在している。
それは―――何故か目の前の、赤の他人だった女性に親しみを感じてしまう点だ。
俺はその場でしゃがみ込むと頭を抱えた。
「嘘だろ…あんの野郎…妙なもんを置いていきやがって! もう1回だ! もう1回寝よう! そうだ! これは夢だ! 夢に違いない!! おやすみなさ~い」
俺は自分に言い聞かせるようにそう告げると、再び眠りに付いたのであった。




