78.有望株の魔法少年
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一応目の前の2人にも手順を踏んで説明を済ませた俺は現在。
親子の自宅前で目を見開き、固まっていた。
「いやいやいや! これはもうあれだろ!? 色々とおかしいだろ!?」
目の前の事象に納得できない俺は久々に声を荒げながら指を差した。
『全く不可解な現象ですね? ただスコップを地面に差しただけで、この様な事になるとは…意味が解りません』
「あぁ全くだ。 それに掘った土は何処へ消えた!? この四角い穴はなんだ!? というか、何故土が崩れてこない!?」
目の前には1m程の綺麗な四角い穴が開いていた。
しかし、薫はこの場所へスコップを突き立てただけ。
たったそれだけの動作で目の前には四角い穴が開いた。
「これがお前の”クラフト魔法”と言う奴か…え? ていうか、魔法少年要素は?」
「え、え~っと…一応ジョブは魔法少年なんですけど。 説明した通り、こうやって家とかを建てる為に一定の経験値をこっちで使っちゃうんですよね。 そこで、戦うスキルを取る為の経験値が残らなかったっていうか~なんというか~?」
わざとらしい態度で空を眺めた薫。
成程。 そのクラフト魔法とやらで作った自宅に経験値を取られた訳か。
―――クラフト魔法―――
薫が神から授かった能力で、それは世界のありとあらゆるものを破壊し…四角いブロック状に保存する事が可能な能力。
おまけにその能力は万能故か、様々な障害があるらしく…一定数の素材を必要としながら、自分に蓄積された経験値を代償にありとあらゆる物が作成可能となっている。
「だが、色んな物を作る為にはその道のプロに学ぶ必要があるのか…どうりで家具は素人丸出しの出来な訳か」
「あ、あははは…そうなんだす」
だすってなんだ、だすって。
確かに違和感バリバリだったもんな。
あのプロ顔負けの一軒家と比べ、内装はほとんど子供が作ったのかと疑うレベルに家具と呼べるそれではなかった。
という事はだ。 結局俺はこの地に居るとされる家具師を探す他無いという訳か。
が、同時に良い情報も手に入った。
そう――それは薫が居ればその筋の問題は全て解決するという事だ。
俺の見据える未来、それは大きな大浴場を作成し…そこへのんびりと浸かる俺の姿。
「よし薫。 そうなれば話は早い。 俺と一緒に家具師とやらを探しにいこうじゃないか。 お前も今後の為に経験値やその他諸々、欲する物があるだろう? それに俺が協力してやろう。 勿論、母親の同行も許す! どうだ? いい話とは思わないか?」
「そ、それはかなり魅力的な話!?」
――――――――――――――――――――
だが俺は、その発言をすぐ後に後悔する事となる。
「―――という訳なんだ。 僕達は追われる身な訳でしょ? だから、お母さんなら解ってくれると思うんだ! リュウジさんの仲間になろう!」
「な、仲間…と、という事はよ!? そ、その// 一緒に暮らすと言う事でいいのかしら?」
「そうだよ! その通りさ!」
あれ~? おかしいぞ~?
誰も協力するとは言ったが、仲間になれなんて一言も言ってないんだけど?
というか、話が物凄いスピードで進んでる気がする。
な、なんだこの親子!? まるで俺の存在を忘れている様だ!
「いや、あの~…沙織さんと薫~?」
「で、でも私達はその// 初対面だし?」
「そんなの! 愛があれば関係ない! そうでしょう!? お母さん!!」
「そ、そ、そ// そんな事ないわよ!? に、似てるだけで別に私はなんとも//」
駄目だ。 2人に俺の声は全く届いていないらしい。
何故か目の前で赤面する彼女の名は”春風 沙織”、30代後半とは思えない様な若々しい容姿とグラマラスな体系。
口元の泣きボクロが特徴的な黒髪美人の女性だ。
彼女は薫と違い攻撃特化型の魔法を駆使できる存在で、本人曰く魔力はほぼ無限らしい。
※そんな馬鹿な。
だが、問題は現在使える魔法が”上級”の物しかないという点。
上級魔法はどれも広範囲な物が多く、ありとあらゆるものを破壊する他に追手にみすみす痕跡を残してしまう事になる。
ので戦闘には基本的に参戦できないらしい。
おまけにその容姿からか、転移時は相当な数の男冒険者達に声を掛けられたそうだ。
まぁそれを追い返した薫のお陰もあってか。 結果―――この様な事になってしまった訳だが。
「と言うか待て。 俺の意見は無視か? 誰も仲間になれなんて…」
『残念ですが艦長。 既に向こうの意見は固まった様です。 加えて今回ばかりは分が悪い―――と発言する他ありませんね。 なんせ――』
「「じゃ、そういう事でよろしくおねがい致します!」」
そりゃもう満面の笑みで話し合いが終了した事を知らせて来た。
うわ~成程。 これは俺のやりにくいタイプの人間だ。
こいつら親子を残し旅立った俺にそっくりな男。
そいつを俺は怨む事にしよう。
なんたって、この2人。
圧が凄い。




