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77.母と子と男

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よろしくお願いいたします。

流れに身を任せた俺は現在―――森の奥深くにあると言う、薫の自宅へ向かっていた。

というか、森の奥深くに家がある事すら驚きだ。


だが俺は、家に到着して更に驚く事となった。


「なん、だと?」

「ここが”僕達”が住んでる家です!」


それの光景はあまりに異質なものであった。

深い森の中で…赤い屋根の普通の家がポツンと建っている。

あり得ない。 というか、見るからに新築のソレだ。

古い貸家なんてもんじゃない。 まるでごく最近建てられた物だ。


それに何? 僕達?


「ちょっと待て。 薫。 お前は1人で此処へ逃げて来たんじゃないのか?」

「あれ? 言ってませんでしたっけ? 僕、お母さんと一緒にここまで逃げて来たんですよ?」


それは初耳だぞ!?

お母さん。 という事は何か? 母親と一緒に住んで――ちょっとまて! そうなるとこいつは、母親と一緒にこの世界へ迷い込んだのか!?

いや、今はそんな事はどうでもいい。 


ガチャ。


「お母さん。 ただいま~!」


隣で微笑む薫は元気な声で玄関の扉を開けた。

そして―――


「今日もありがとう。 そして、おかえりなさい! 薫ちゃん!!」

「ムグッ!!」


目の前でエプロン姿の黒髪美女が薫を力一杯抱きしめた。

というか、待て。 挨拶するタイミングを完全に逃した気がする。






―――――――――――――――――


数分後。


「というか、お母さん! 苦しいってば!」

「あらあら! ごめんなさい」

「それよりも! 今日はお客さんを連れて来たんだよ! ほら!」

「お客さん?」


薫が指差した先には俺が居た。

俺はここだ!!と言わんばかりに


「どうも初めまし―――てぇぇ!?」

「え!? どうしたのお母さん!? お母さん!?」


軽く会釈しようと思ったタイミングで何故か薫の母親の目には涙が浮かび上がっていた。

ちょっとまて!? まさかあれか? 俺の表情が問題だったか? いやまて、もしかすると不愛想だったのかもしれん。

ここはひとつ謝罪を…


「あの、もしかして俺が原―――ムグッ!!」


しようと思ったら、母親に熱い抱擁を受けた。

成程。 この母親、なかなかのわがままボディーである事が理解出来た。

しかし、この行動の意味と涙の意味が不明だ。


『それと艦長。 お言葉ですが、このままでは窒息する可能性が高いと思われます。 お早い脱出を』


まぁ待て。 俺自身、嫌な気分では無いんだ。

このままもう少し余韻に…


『艦長?』

「はい…」






―――――――――――――――――――――――――――――





無事脱出に成功した俺はリビングでお茶を頂く事にした。


「ほぇ~!! 本当だ!! お、お父さんの若い頃にそっくり!! ううん。 そっくりってレベルじゃないよこれ! 殆ど本人だよ!!」

「そうね~私とお父さんが知り合ってすぐの頃にとっても似ているわねぇ。 というか、ほぼ本人よねぇ?」


2人で懐かしきガラケーの画面を眺めて俺を見つめてはそう告げる。


「けど、お母さん。 お父さんは僕が小さい時に事故で…」

「えぇそうね。 だからこの方は他人なんでしょう。 だけど…だけどよ? 性格から言動まで…全部そっくりなんてあり得るのかしらぁ?」

「た、確かに…と言う事はやっぱり、リュウジさんは僕のお父さん!?」

「りゅ、リュウジさんって言うの!? そ、そこも同じだわ!!」


やっぱり直ぐに引き返すべきだったと俺は深く後悔する結果となった。

まさか、こんな所で…おまけにこんなタイミングで自分そっくりの人物の写真を見る事になろうとは。

渡されたガラケーの画面を眺めて俺は思う。


『もはやこれは同一人物と言っても過言ではない容姿ですね?』


画像解析の結果。

目の前の人物は75%が俺と同じ存在であると証明されてしまった。

そこにミュータント化された人体を引くと。


「90%…まじかよ」


冗談でも笑えるレベルの話じゃない。


『残念ながら、外見だけの判断ですと、ほぼ艦長で間違いありません。 ですが、データによると10%の誤差が生じています。 恐らくこれはほぼ同等の存在であり、異なる存在の証明―――ではないでしょうか?』

「という事はなにか? これはそういう事でいいのか?」

『彼。 薫のDNAデータを調査した結果、艦長とは全く異なる存在である事は立証されました。 ですが、外見は殆ど艦長と瓜二つの存在です。 ファンタジーな発言はしたくはありませんが、タナトス達の話もあります。 鵜呑みにするべき話ではありませんが、可能性は非常に高いでしょう』


おっと。 これは別世界の俺と言う認定でほぼ確定らしい。


「まじかよ…ここに来て新展開発生か?」

『その様です。 家具師を探しに来ただけだったのですがね…私達は』

「あぁ…だな…」


深くため息を吐くしかなかった。

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