75.子持ちの最強新米冒険者
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魔獣の娘とされる彼女”ルナ”が俺達の一員となって2週間。
事ある毎に冒険者達が俺達に襲い掛かって来たが――――
ドゴン!!!
「ぐぼぁぁぁぁぁ!」
「違うぞルナ!! もっと急所を狙え!! そんなんで生き残れると思っているのか! 相手は男だ! 何処を狙うか解ってるだろ!? いくら魔獣の娘とは言えだ! 少女に襲い掛かる馬鹿共に痛い目を見せてやるんだよ!! 感情何て一切捨てろ! あいつらは魔物と一緒だ! 男の勲章のぶっ殺せぇぇぇ!!」
「は、はい! パパ!!!」
3mはあろう巨大なハンマーを振り回す、俺をパパと呼ぶルナは振り上げたハンマーで襲い掛かる冒険者に追撃を―――
ドゴン!!!
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
「ちぃ! 外れたか…」
「やっぱり勝てる訳ねぇんだ! 相手はあの”銀色の悪魔”だぞ! 逃げろ! 逃げるんだよぉぉ!」
「「「「「うわぁぁぁ!!」」」」」
後ろで応援する俺を見て、冒険者達は尻尾を巻いて逃げて行った。
「ふっ。 誰が銀色の悪魔だよ? 俺か? それはもう特徴というよりも…このピカピカの銀鎧の事を言ってんのか!?」
「指名手配される身ですしね…私達。 というか、ルナのパパ呼びに対して何もツッコまないんですね?」
「え? あぁ…もう訂正するのも疲れた」
最初は頑なに”パパじゃない!”と言っていたが、折れないルナを目の前にして俺は疲れたというか―――まぁ、もうパパでいいや。 となった訳である。
「それにしても、ルナ。 たった2週間でここまで成長するなんて。 お母さんは超うれしい!」
むぎゅ!
「えへへ~ありがとう、ママ///」
やはり重傷なのはこっちだろう。
はじめてママと呼ばれてからというもの、ルナとのスキンシップが多くなったというか…何か一線踏み込んだ関係にも思えてしまう。
『まぁ。 艦長も似た様なものです』
「断じて違う」
俺はパパと呼ばれて嬉しがるような人間でない!
そう! 断じて違う!
『無駄話はこの辺にしておきましょう。 ルナ? ブーストハンマーの使い心地はどうですか?』
「あ、はい。 重さはそれなりにありますけど、私に合ってる武器かなぁ~って…」
『そうですか。それはよかった。 ですが、以前も話した通り―――音声認証システムで各パーツが作動します。 やはり使い慣れる為には、そちらの性能も試さなくてはなりませんよ?』
「は、はい! が、頑張ります。 アルジュナ様」
『よろしい。 いい返事です』
重さ1tはあるブーストハンマーを軽々と持ち上げる、ルナもルナだが…一体魔獣って奴はどんな身体を有しているんだろうか?
分析によれば、ルナの身体は構造上普通の人間と変わらないらしい。
今は”人化”と呼ばれる魔法を使用しているらしいがルナ曰く、元の姿に戻ろうと思えば何時でも戻れるらしい。
まだ見た事はないがな?
「しかし、ルナ。 お前もやはり、サラ同様に戦闘能力が高い様だな。 魔獣という事もあるんだろうが、これなら心配はなさそうだ」
初めは護衛を頼もうかと思ったくらいに不安だったが、いざ戦わせてみるとそれなりの素質がある事が解った。
しかし、残念ながら俺達の身体と異なるルナはユニットを装着できない。
つまり…扱えるのはこっちの兵装だけだ。
まぁ…それを振り回せる時点で色々おかしんだが。
「いや~しかし。 冒険者になって早々指名手配とは…前代未聞だな?」
「あははは…それにしてもご主人様はエグイ事をしますね?」
「ほ、ほんとうですよ。 パパの考えは常識を逸脱してます」
そこまで言うか?
俺はただ単に魔物が大量に湧いているエリアを突破して、辺境と呼ばれる場所まで足を運んだだけだ。
それの何がエグイのか。
『来れるものなら来てみろ作戦。 そう言ってましたよね? 艦長?』
「言ってはいたが、別に他のルートがあるからいいだろう? 迂回すれば来れる様にこっちは態々考えてやったんだから」
それに俺はまだしも、連続した戦闘が予測される場合…こいつらに多大な負担が掛かってしまう。
だからこそ俺は防衛しやすい様にこうやってルートを限定した辺境まで足を運んだ訳だ。
幸い、水と食料に限りは無い。
言わばサバイバル無敵状態である。
「とまぁ、そんなこんな感じでお前ら2人は今のうちに経験を積んでおけ。 後はそうだな、出来れば家具師の話も聞き出してくれ。 というか、本来の目的はあくまでそこだからな!? これはついでだから!」
まだ見ぬ家具師を探し、俺達は冒険者と戦い続けるのであった。
そして―――
――――――――――――――――――
「なんだかワクワクするな。 相手はまだ見ぬ最強の冒険者! そして俺達は指名手配犯! しかし、防衛の為…設置型の自動タレットを…」
『駄目ですよ?』
「新型のタレット…」
『試すのであれば、その辺のモンスターでお願い致します。 あれは制御がききませんので…』
「ですよね…」
お手軽殲滅兵器――設置型タレット――
自動照準で標的に狙いを付け、鉛の雨あられをお見舞いする事で相手を完膚なきまでに叩きのめす兵器の1つ。
勿論、味方識別機能は完備されているので誤射等の心配はない。
軽い冗談はさて置き。
俺は俺でやる事がる―――そう。
「今日も今日とて。 魔物の群れを相手に勝負あるのみ…」
『ラジャー。 何時でもいけます』
「さて、今回はどの兵装を使うかねぇ…」




