74.魔獣の脅威
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「ほぅ…。 こいつが魔獣の娘?」
俺はボコボコにした連中を目の前で正座させると、隣の少女を見てそう告げた。
なんでもこの娘。 魔獣と呼ばれる存在の娘だと言う。
今は人間の少女の様な姿をしているが、本来の姿はおぞましい獣の姿だとか。
――魔獣――
この大陸での脅威的存在で、知性も高く…かなり好戦的な魔物の一種。
生まれは不明だが、この様にイレギュラーが発生し何処からともなく湧いて出てくるという。
因みに街や村に対して無害である魔物とは別にこいつらは村や街を襲う。
成程。 それでこの大陸のバランスを補っている訳か…
だからこそ、こいつら冒険者ギルドの連中も血眼になって追っていたらしい。
「そ、そうだ。 わ、解ったろ!? そいつはいずれ、私らの脅威になり得る。 それに見た目は子供だが、見て見ろ! その胸にある魔石を!」
女リーダーが指差す方向を見る。
すると確かに少女の胸には何か紫色の宝石の様な物が埋め込まれている。
「ほう」
「それが魔獣っていう証拠だ! だから私達は狩らなきゃならねぇ! 解るだろ!? よそ者であってもだ!」
「と、いう訳らしいが? お前の意見はどうだ?」
彼女の言う事は正しいのだろう。
だが、関わった以上は俺はサラの答えに委ねるとしよう。
というか、アルジュナの奴め。 俺がこう答えると知ってワザと黙っていたに違いない。
『えぇ。 艦長は身内に対してかなり甘ちゃんですから』
「確信犯かよ…」
まぁ、俺から言わせて貰えば正直な所…どっちが正義でどっちが悪なのか―――どうでもいい話だ。
周りの目を気にして来た俺だからこその答え…というべきなのだろうか。
俺はやりたいように生き、感じたままに進む。
例えそれが間違っていると言われようともな。
ってな話は結局建前で、ぶっちゃけると本気でどっちでもいい。
要はサラがどうしたいかだ。
「……わ、私は…この子が悪いとおもいません! ほら! 本気で震えてますし! それに親がどうだか知りませんけど!? 私はこの子の命を無暗に奪う事は許さへん!! だから!! 私が育てます!!」
「そうか、そうか…育て―――え!? 育てる!?」
「「「「「「え!?!?!?」」」」」」」
流石はサラぱいせん。
想像の遥か斜め上をいく発言により、流石の俺もサラへ詰め寄った。
え? 育てる!?
「は、はい! ちゃんと教育してやれば! 立派な子に育ちます! 私には根拠のない自身が! たっぷりとあります! はい! 勿論、理由はそれだけじゃありません! 魔獣って…強そうやないですか?」
いや! 根拠のない自身って! 胸を張って言う事かぁぁ!?
だがしかし、そうだな。
「魔獣か。 新戦力としては申し分ないだろうな。 わかった…タナトスよ。 その娘を採用!!」
「あ、ありがとうございます!!」
因みにサラよ。 興奮して関西弁になっちまってるぞ?
とまぁ、俺達はこの様にとんとん拍子で事が片付いた訳だが…
「「「「「あ、あの…」」」」」
納得出来ない様子の女リーダー達。
それもそうだろう! こいつらの事をすっかり忘れてた。
――――――――――――――――――
「ほ、本気でその娘を飼い慣らすつもりか!? んな話きいた事ねぇぞ! それに私らを此処から逃がせば、どうなるか―――あんただって解ってるだろ!? 無理だ! 私ら冒険者ギルドを全員敵に回し――」
「へぇ~…まぁ。 所詮何十万人程度だろ? かかってこい、かかってこい。 返り討ちにしてやる」
『あの…艦長。 もうどうでもよくなってませんか? 先程から発言に魂を感じないと言うか―――心すらも』
いや、お前達は俺を馬鹿だろうと罵るかもしれないが…これは作戦のうちのなのだよ。
そう! それは奴ら冒険者のヘイトを稼いで…手っ取り早く家具師の情報を入手しようという作戦である。
『あ…今考えましたね? 艦長?』
「何の事だか」
しかし、どうであれ。 冒険者達が向こうから寄って来るのであれば歓迎だ。
まぁ…それと同時に俺達は一切街や村に侵入出来なくなるんだけど?
『艦長。 やはり面倒になってますね? 色々と?』
―――暫くして。 奴ら冒険者を見逃した俺は再び口を開いた。
「さて、今日から野宿コースだな?」
「え、えへへ…ご、ごめんなさい」
「いや。 謝る必要はない。 さてさて。 これからが楽しみだ…ぐふふふ…ぐふふふふふ!!!」
『普通の冒険者であれば、絶望的状況なんですがね? まぁ…流石は100憶以上の敵を葬った艦長です。 動揺すらしていない―――反対に…』
「…フルフルフル…」
サラは動揺が隠せない様子だった。
無理もない。 今まで虐げられていた分、その名残があるんだろう。
それでもよくやったよお前は。
「さて、話はこれ位にして。 おい。 俺達に何か言う事があるんじゃないか? というか、こいつにに…」
サラの方を指差し、少女に声を掛けた。
「………」
身振り手振り何かを言いたげな顔をしているが、どうにも声が聞こえない。
よく見れば何か首輪の様な物がされているな?
「ん? なんだ? 首輪がどうした?」
彼女はそれを指差して何度も俺に何かを訴えかけて来た。
まさかそれが原因で話せないとか?
見た所”ただの鉄製”の首輪か何かだろう。
「待ってろ。 いま取るからな?」
バキン!!
「!?!?!?!?」
俺は何と無しに首輪を引きちぎった。
『あの…艦長。 まだ分析が終わっていませんが』
「あ、すまん」
だが、目の前の少女は目を見開いたまま俺の事をずっと見つめているだけだった。
どうやら何か大変な事をしでかした―――という事だけは理解出来る。




