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67.心の終局点

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よろしくお願いいたします。

『(――成程。 これは私達に対する個人的な依頼、という解釈でよろしいのでしょうか?)』


何時もの口調で目の前に座る人物へ問いかけたアルジュナ。

今は、色々あって…向こうの社長さんと個人的な取引を行っている。

といっても、アルジュナを主体に話が進んでいるが―――


「えぇ、えぇ! そうです。 早い話が案件って事ですね。 それに加えて、あなた方はこの世界をより良い方向へ導こうとしている。 そこに何処の世界の住人か、見当もつかない連中が攻め込んできては目障りではありませんか?」

「まぁ、それは確かに一理ある」


この社長。 見た目は中年日本人の様な感じだが、名をニュクスと言うらしい。

タナトスにニュクス…あまり追及したくはないが、関わると碌な事じゃないのは確かだろう。


「ですが、我々の存在はあくまでも”秘密の組織”という立ち位置です。 ですので、世界の仕組みを知る我らは他企業への介入が許されていません。 まぁ、ポリシーというものでしょうか」

「へぇ~…しかしだ」

『(えぇ。 私達もそれを知ってしまいましたが?)』


そこなんだよな。

女神とか神とか、トウマやらアリスから事前に聞いていたせいか。

そんなものは存在しないと完全否定されると、余計に謎が深まるばかりだ。


こいつの話によれば、ある一定の確率―――奇跡とも言えよう確率でごく稀に加護を授かった後、この世界へ放り込まれる事があるらしい。

という事はだ。 ある意味、力だけを貰い逃げしたこいつらは世界の秩序とやらに左右されない。

本来制約のある力が、無制限で振るえてしまうわけだ。


そりゃ…色んな化け物染みた奴らが生まれる訳だぜ。


「そこは問題ありません! 別にそれを知っているからと言って、誰も咎める存在は居ませんからね。 ですが―――知らなくていい事も存在する。 それは確かです。 ここは管理されていない、特別な場所だ。 だからこそ、誰もが追い求める宝石の様な存在。 まぁ、私達には関係ありませんがね? しかし、貴方と言う存在を私達は知ってしまった。 所謂、この世界の守護者…いえ、執行者ですね?」

「執行者ねぇ…」

「えぇ、私達も大概な性格だと自負していますが。 貴方はそれよりもっと…歪んでいる」


ニュクスは鋭い目付きで俺の瞳の奥を覗き込んだ。

まるで何かを感じ取っている様にも思える。

だが、しばらくしてニュスクはため息を付いた。


「何十億、それよりももっとですか…今まで色んな世界を見て回ってきましたが。 これ程までの数字を見たことが無い」

「数字?」

「えぇ、私には少々特殊な力がありましてね? 見えるんですよ、目の前の人物が奪った命の数を」

「ほぉ~」


特別何もおかしいとは思わなかった。

むしろ、こんな無限牢獄とか意味不明な場所で移動している連中だ。

それ位の事で驚きもしない。


「普通なら…いえ。 普通の人間なら既に心は粉々に砕け散っている筈だ。 ですが貴方からは何も感じない、そう――何も感じないんですよ」


何も感じない。

そういえばそうだったな。


「歪みか…確かに俺は歪んでるのかもしれないな。 どれ位だったか、見えているなら解るだろう。 最初は悲鳴や叫びが恐ろしくて仕方なかった。 どれだけ忘れようとしても耳鳴りの様に蘇ってくるんだ」


人を救う為に動いていた人間が、他の人間を救う為に目の前の人間を殺す。

こんな皮肉な話は無い。

いや、違うな。 

初めは人間を助けようと必死になっていた。 それは確かな事だ。


困っている人間を見捨てる事は出来ないと、そう俺も思っていた。

しかし何時からか、俺は人間達に恐怖される存在となった。

それもその筈、謎の兵器を引き連れ―――乗組員は俺だけの巨大戦艦でエイリアン達を殺す。


おまけに俺は表立って行動する事は殆どなかった。

何故なら――もうすでに何が正しい事なのか、そう判断する余裕さえなかったからだ。


いつ誰の為に――――俺は殺戮を繰り返しているのか――――初めは人間を疑った。

もしかすると人間が先にエイリアンへ攻撃を仕掛けた事で、この戦争がはじまったのかもしれないと。

いや、しかしエイリアンは女子供であっても容赦なく殺す。 だからこそ悪だと。


「だが―――それもいつの間にか感じなくなった。 知ってるか? 毎日の様に人間や色んな生物を殺しまくってると。 敵味方の判断さえ出来なくなっちまう、心が壊れるとかそんな問題じゃない。 最後には何も感じないんだ。 全部動く的だ」

「…………」


何か反応を見せると思ったが、ニュクスは何も言葉を発する事は無かった。

同情やそんな感情じゃないのは確かだ。

何か、関心を抱いている様な…そんな表情にも思える。


「まぁ、過去話はここまでだ。 さっさと話しを続けるぞ」 

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