66.異常者認定された話
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渡された部厚い書物には、聞いた事もない企業名がずらりと書かれていた。
ざっと計算しただけでも何千社。
俺の望んだ楽園が果てしなく遠退いてゆく。
むしろ、元の世界の方が100倍マシに感じて来た。
それにこの世界に対する疑問は増える一方だ。 異世界人にこいつら、もしこの世界へ自由に介入できるのであれば無法地帯もいい所だ。
それがどうしものか、うまくバランスを保っている様にも思える。
「ふむ。 どうやら、この世界の事を御存じでない様だ」
何故か隣のタナトスが納得した様子で口を開いた。
「なに?」
「この世界の名は”ユートピア”まぁ所謂、理想郷と呼ぶべき場所です。 なんせ、神も女神すらも! 存在しない世界なのですから。 故に、世界各地で摩訶不思議な現象が次々と起こっている。 それに貴方はよくご存じの筈だ。 説明できない不思議な現実を―――」
「まさか、あの森?」
「えぇ。 あの不思議な森、あそこはたったあれだけの広さでありながら。 四つの姿を備えている。 それに加えて、原生生物と魔物の共存。 他の世界を見てきたらこそ、解ります…普通であればあんな奇妙な現象は起こらない。 おまけにダンジョンがランダムで生成される? そんな馬鹿な話を聞いたことが無い」
言われてみれば、説明できない現象が当たり前の様にいくつも存在する。
「ですが、この世界の住人にとっては当たり前のなのでしょう。 そう”普通”なのですから。 しかし、我ら部外者にとってはあまりに異常だ。 どこの誰がこんな世界を創り、なんの目的の為に存在しているのか。 はたまた、目的等は存在していないのかもしれません。 だからこそでしょう。 ”何者にも管理されていない世界”これ程魅力的な世界は存在しない。 この際ですから、ついでに言わせて頂きますが。 この世界だからこそ、貴方の様な異常な存在が招かれたのだと思いますよ? 言っておきますが、貴方の力は非常識にも程がある」
何故か俺はタナトスに説教をされ始めた。
おまけに隣の少年少女達も”うんうん”と頷いている。
「いいですか? 魔法分野に特出した存在、身体能力や術妓に特出した存在。 私は様々な世界を見て、色んな物を吸収してきました。 それに貴方の力に似た物も幾つか見ましたよ? 巨大な鎧で争いを行う世界、剣と魔法…スキル。 そうだ、変身ヒーローなんて言葉も聞いたことがあります。 で・す・が! 貴方のそれは説明がつかない! もはや何でもありだ! 非常識にも程がありますよ!」
「「「「「うんうん」」」」」
「巨大ロボを操る世界。 しかしそれは世界の理に則り、その世界の技術と力を応用し成り立っている。 だが、貴方の力は異常だ! いえ、百歩譲ってバリアやら、ビーム兵器ですか? それをよしとしましょう。 しか~し! 魔法を防ぐ等とはもう意味が解らない! まるでこの世界そのもの…理不尽の塊だ! はぁ…はぁ…はぁ…」
顔を真っ赤にさせて、俺に詰め寄って来たタナトスは息を荒げた。
というか、歯止めが効かなくなったと言えばいいのか。
「お、おぅ…」
「いいですか? 貴方は最強とか、そんな類のカテゴリーではありません。 理不尽な存在です! 神や女神の方が100倍マシだ! それにあの化け物を雑魚の様に倒す等と…私が今まで積み上げたソレはなんだったのか疑問に思うほどですよ! おまけに貴方は、自分の力が当たり前になりすぎて反応が薄い! 薄すぎる! ではこう説明した方が納得していただけるでしょう! あいつは女神級の強さでした! はい! 他の方々でももうちょっと苦労してましたよ!! ほんとに!!」
「ちょ、ちょっと落ち着け…な?」
「うちも社長に言われて貴方の調査をしていましたが、こっちに接触して頂いてどうもありがとうございます! 正直、あの竜人の里の件で出て来られなければ…詰みでしたよ! 詰み! それにこいつを泳がせてみれば貴方は手を出さないではないですか! それになんですか、この喋るロボットは!? どうやってこの場所へ移動させたんですか!? 意味が解らない! はぁ…はぁ…はぁ…」
そして俺は2時間に渡り、タナトスの愚痴を聞く事になった。
いや…なんで?
―――――――――――――――――――――
「―――と、いう訳で。 もう正直に全部自白しますよ? 社長の命令で貴方の力を調べようと思いましたが、止めました。 はい、もう土下座させて頂きたいとおもいます。 この通りです。 ほら、この通り―――」
テープレコーダーの様な物を懐から取り出したタナトスはスイッチを入れた。
カチッ。
「いいかタナトス? 例の男の素性を調べろ。 手荒な真似を使っても構わん、排除出来る様であればそうするがいい。 なんなら援軍もこちらから送ってやってもいい。 だが、もし…お前の判断で敵わないと感じれば。 土下座でもなんでもして許しを請え! ――――――――」
ん? なんかおっさんの声が聞こえるが、こいつがこいつの上司であり…社長という事でいいんだろうか?
どうやら、まだ続きがあるらしい。
「えぇ~っと何々? 魔族をほぼ一撃で葬る事の出来る存在であり、こちらの暗殺部隊の存在も認知されている模様。 おまけに、相手の戦力はこちらの技術レベルを遥かに上回ると思われる。 成程―――――タナトス。 これはお前だけに送る、個人通信だ。 心して聞くんだ。 ―――――それで無理だったらこっちも無理よ? うちの戦力でもダメならお手上げだからね? だとしたらもう、化け物でしょ? え、何? うちの技術レベルを遥かに上回る? じゃあなに? 相手は何でも防ぐバリアとかある訳?」
『ありますね。 なんでもは不可能ですが、攻撃系統は物理であれ魔法であれ』
「だな」
「巨大ロボとか、ビームサーベル!とか!? ははは…勘弁してくれよ? それに加えて合体ロボットとか居たりしてね? ははは…ないない! そんなの居たら技術レベルどうこうの話じゃないよね!? もはや非常識だよね? 異常だよ異常! 異常者だな!」
『(はははは! 何を言っているのかと思えば”そんな事か!” 当たり前だろう! 存在しているに決まっている! それだけではないぞ~なんと…戦―――)』
ブチッ!
『五月蠅いので、アグニの外部出力をOFFに致しました』
「「「「「「!?!?!?!?」」」」」」
アグニの発言に目を丸くして反応を見せた全員。
流石はアルジュナ。 ナイス判断だ。
「まぁ、タナトス。 もし、これが本当だった場合は…おぉ、諦めろ。 無理。 勝ち目なんかありませ~ん! という訳で、任せたぞ!」
そして同時に音声もそこで終わっていた。
「という訳なんですが、ちょっとよろしいですか?」
「ん? 何でしょうか?」
「急に態度がよそよそしくなったのは別として、もう我々は貴方に降伏したも同然なので。 あの方?の言葉の理由をお聞かせ下さい」
「いや、その~」
こいつらに話すべきなのかだろうか?
そう疑問に思っている俺とは別に―――
『(成程。 本当に敵意は無いようですね。 それに、こちらの戦力把握及び、外部に待機する方々の解析も完了いたしました。 どうせ貴方達企業に勝ち目はありません。 話してあげてもいいでしょう)』
「「「「「!?!?」」」」」」
「ア、アルジュナさん?」
次はアルジュナが外部に音声を出力した。
もういい! どうにでもなれ!




