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62.囚人の末路

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よろしくお願いいたします。

アルジュナの件はさて置き、まずは目の前の仮面野郎からだ。


「まぁまぁ。 落ち着いて下さいよ、お客様。 こちらへ足を踏みいれる事が可能―――それだけでも貴方は特別な存在だ。 という事はですよ? 貴方にはここが、どういう場所なのか…知る権利があるという事です。 だからそう怖い顔をしないでくださいよ?」


銃口を突きつけられても動揺しないか…どうやらこいつにこういった真似は通用しないらしい。

仕方ない。

素直に銃を収めた俺は仮面男の話に耳を傾けた。


「っち。 絡みづらい奴だ」

「お互い様、ではありませんかね?」

「うるせぇ、さっさとこの場所の説明をしろ。 ったく…」


真面に会話するだけ馬鹿だと思った俺は色々諦める事にした。

なんせ相手が何を考えているのかさっぱりわからない。

俺をからかっているのか、はたまた本気で言っているのか。

よく解らん男だ。


「ではでは! こちらへどうぞ~」




――――――――――――



男は呑気にステップを踏みながら、俺に次々と説明を始める。


「では。 まずこちらが、とある世界の勇者様を誑かし…勇者様を裏切った者達でございます」

「!?」


牢獄の中には綺麗な桃色のドレスを纏った金髪の女性と、白銀の鎧を身に纏った女性が居た。

その女性からは何処となく気品を感じる、だがそれと同時に何か異質な物も感じた。

おまけに騎士風の女性は何故かこの世の終わりだと言わんばかりの表情だ。


「え~っと名前は~”ビクトリア”らしいですね? その隣に居らっしゃるのが~恐らくあの姫君の騎士か何かでしょう? まぁ、よくわかりませんが」

「ちょっとまて。 とある世界の勇者?」

「はい。 この世界とは別の全く異なる世界からやって来た?と言えばよろしいのでしょうか? それを証拠にほら! この牢獄には勇者様の元仲間と思われる方々もいらっしゃいますよ?」


かなり上機嫌な様子で話を始めた仮面の男。

確かに。 仮面の男の言葉通り、この牢獄の中には何人かそれっぽい人物が鎖に繋がれている。


「さらに! これは大、大、大、大サービスですよ!? こちらの空の牢獄。 これこそが、今…貴方が相対している方々の元牢獄です。 2500年からやって来た地球人と書いていますね?」

「2500年…」

「えぇ。 おやおや、どうしてこんなにも異なる人種の方々が投獄されているのか…不思議だ。 そういう顔をしていらっしゃいますね?」

「!?」


こいつ、解ってて言ってやがるな?


「ではではご説明を! この牢獄は言わば世界で罪を犯した者が最終的にたどり着く場所。 それが無限牢獄。 条件は簡単なものです。 ”世界の理に背いた者”そういった存在がこちらへやって来る訳ですよ」


世界の理?


「例えば、勇者はなんの為に存在していますか? 魔王を倒す為? はたまた別の目的の為? それは様々です。 ですが、勇者は魔王の対なる存在。 どちらか片方が欠ければ…どうなると思いますか? 例えば最初の彼女達!」

「欠けるも何も、もう一度勇者を――」

「えぇ、それが”元々の世界の住人”であれば…それは理に背いていない。 何度でもどうぞ! しかし、彼女らは異世界から呼び出した者を勇者とし。 その存在を葬った」


そういえば、そんな小説が存在するとかなんとか。

トウマの奴が言ってた気がするな。


「ふむふむ。 だいたいはその解釈で間違いありませんよ? 私達はそういった方々のサポートをする役目ですから。 おっと、申し遅れました私”異世界復讐代行センター”のタナトスと申します」


突然名刺を渡して来たタナトスと名乗る男。


「異世界復讐代行センター? おいおい、こんなふざけた企業名は初めて見たぞ?」

「ふふふ。 そうですね? もうちょっと意味ありげな名前にしたかったのですが、こちらの方が伝わりやすいでしょう?」


どうやら冗談を言っている様子ではない。

異世界復讐代行センターね…ふざけた名前だが、投獄されている連中も見るからに―――


「私達はいかなる世界であっても。 復讐を望む”異世界人”の方々をサポート致します。 お代は勿論、彼等の魂と引き換えですがね?」

「イカれてやがるな」

「誉め言葉として受け取っておきましょう。 さてと…おっとそうだ! お客様に一言申し上げたい事が」


両手を擦り合わせたタナトスが低姿勢で歩み寄って来る。

ん?


「一応、かなり! 重要な情報を提示した訳ですから? それなりのお代を支払って頂きたいのですが?」

「お代だと? 金か?」

「いえいえ! こちらの”従業員”を返して頂くだけで結構です。 ご安心を! 私が貴方に接触した事実は全て、内緒という事で。 加えて竜人の皆様に危害は加えないと約束致しましょう」


成程な。 最初からそういうつもりで要らぬ情報をベラベラと話してた訳か。

ただ、何故かこいつは変に信用出来てしまう。

胡散臭い雰囲気なのは否めないが、何か惹かれるものがあった。


「いいだろう。 奴らを返してやる。 ただし…次にあいつらを見たら問答無用で――」

「えぇ! 勿論理解しております! おっとそうだ! 最後にもうひとつ! こちらにご署名願えますか?」


タナトスは申し訳なさそうに書類を差し出して来た。


「お前…案外ちゃっかりしてやがるな」

「いえいえ、念の為ですよ」


ため息を付いた俺は書類に署名をしておいた。

一応目を通しておいたが、どれこれも業務的な物ばかりで…向こうで言う保険的なものなんだろう。

しかし、変な連中と接触してしまったな。



―――――――――――


「ではでは! 私共は目的を遂行致します! お元気で~…  というか、二度と会わない事を願います。 こちらとしてもね?」

「ん? 何か言ったか?」

「いえいえ! 何も! では~!」


呑気に手なんて振っていたが、結局あいつの正体と目的はさっぱりだ。

ただ解るのは、こっちに不利益な事はしてこない。

そう書類に記されていたし、問題は無いはずだ。



―――――――――――――――――


ファントム事、リュウジと別れたタナトスは彼が見えなくなるのを確認した後、額の汗を拭った。


「成程。 あれが例の…いやはや。 異世界と言うのはこれだから面白い! いやはや~そうですか、そうですか。 だからこちらの世界は心配ないとおっしゃっていたんですね? 理解致しました。 これは他の企業に内緒にしておきましょうかね? ふふふ、これでライバル会社が減りそうです」


ギィィィバタン!


不気味微笑んだタナトスは扉を閉じた。




  


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