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59.蘇る悪夢

気軽に感想いただければ作者のモチベに繋がります!

よろしくお願いいたします。


そろそろ…ちょこっと過去の出来事を掘り下げていきたいと思います!

シリアス多め

ある日の事。

お気に入りのアーマーがメンテナンスに入ってしまい、使用制限された俺は久しぶりに自分のベッドで眠る事にした。

だが、それが原因なのか解らないが、急な寝床の変化に俺の身体もビックリしたらしい―――何故なら。



――――――今から遡る事3年前。


ブー、ブー、ブー、ブー


『警告。 左舷後方から”避難用救助戦艦”の衝突を確認―――反応多数―――レッドサインです』

「嘘だろ…レッドサイン!?」


鳴り止まぬアラート音と耳を疑う発言に俺は混乱していた。


――レッドサイン――

それは俺達に明確な殺意があると判定されれば、赤い斑点で敵対マーカーとして認定される。


だが、アルジュナの事だ。

こんな時に冗談を言う筈が無い。

この世界に来て2年余り、俺は地球へ帰る事を目的に様々な作戦に参加した。

エイリアン共を殺し”司令官”の命令通り、上手くやって来たつもりだ。


だが、何故だ? 何が起こってる?


先程までは味方信号を発して筈だ。

あれは確かに普通の避難用救助戦艦だった。

それがどうだ、真横を通り過ぎる瞬間にこちらの船へ突っ込んで来た。


「どうなってる! 乗ってるのは殆ど民間人だろ!?」

『はい。 民間人で間違いありません』

「だったらなんで、レッドサインなんだ!? 意味が解らねぇ!」

『艦長―――映像をご覧ください』


口頭で説明しても無駄だと判断したアルジュナは俺に映像を見せた。


「なんだよ、これ…」


そこに映されたもの、それは救助された筈の人間がゾンビの様に何かに操られる形でこちらを目指していた映像だ。

老若男女問わず、白目を剥き…口からは涎が垂れ―――もはや人としての理性を保てていない様に見えた。

しかし、俺は直ぐに気付いてしまった。


いや、俺だからこそと言うべきなんだろう。

そんな事は無いと思っていた。 絶対にあり得ない展開だと思っていたからだ。

いいや、俺は総司令と言う人間を信じ…ここまで来た。 だからこそ、こんな展開はあり得ない。


『恐らく――』

「あのギアが問題か?」

『………』


アルジュナはそれ以上何も言う事は無かった。

そうか、そうなんだな?

この世界の人間は民間人であっても日常的に、外骨格パーツ”拡張ギア”を身に纏い生活している。

拡張ギアは戦う為じゃない。 いかなる時と場合であっても、身を守る為にと―――総司令”アリス”が開発し、人間達にそれを与えた物。

俺はその言葉を信じていた。


―――最初は俺も何故顔も見た事ない人間の為に戦うのか…意味を見いだせないでいた。

だが、それは後に俺の日々の活力ともなっていた。

帰還した俺に「ありがとう」と笑顔で迎え入れてくれた人々、彼らは見ず知らずの俺に胸の内を話してくれた。

人間は人口の殆どを失い、エイリアンに襲われる恐怖に怯え…地球を捨ててまで宇宙へ来た。


だからこそ、いつか帰れる日を楽しみしていると。

皆の意思はひとつの方向へ―――目指す場所は同じなんだと思っていた。


「俺も馬鹿だな…」


迫りくる民間人達を前に唇をかみしめた。

今までに感じた事の無い感情が溢れ出てくるのが解る。

悲しみ? 絶望? 呆れ? 


―――どれも違う。 


「うが、あがっ…だ、だすけで…く、くるじぃ…うがっ…」

「いだい、いだい…よ だ、だれが…」


きっとここに正義のヒーローが現れてくれれば、奇跡の力で皆は救われるんだろう。

彼等彼女等を今の苦しみから解放してやれるんだろう。


『恐らくですが、注入型のバイオインプラントを腕へ埋めめ込まれたのでしょう。 下された命令を拒否出来ないようです―――そして。 残念ながら救う手立てはありません。 加えて理由も説明いたしましょう―――既にインプラントは脳へ到達しています。 つまり――いえ、これ以上の発言は控えます』

「……………」


静かに時間が流れゆく。

今まで俺がやって来た事はなんだったのか、どうして彼等民間人がこの様な酷い仕打ちを受けなくてはならないのか。

彼等は俺よりも生きる事に必死だった。 目の前の小さな希望を前に皆が同じ方向を見ていた。

なのに―――何故―――


『艦長!!!』

「!?!?」

『ボーッとしてる場合かよ! 艦長が嫌だってんなら俺らに命令してくれ!』

「ヴァーユ…」

『我ら円卓も力となりましょう! ですから艦長! ここで立ち止まっては行けません! 彼等の為にも…いえ。 貴方はどうするべきか解っている筈だ!!』

「アーサー…」


そうだな。

俺はエイリアン共を殺し始めてから理解していた筈だ。

俺達の力は過ぎた物だ―――だからこそ”ありえない”事なんて存在しないんだと。


『ですから艦長。 我らに――』

「いや、俺だけでやる…」

『『『『『艦長!!』』』』』

「頼む。 やらせてくれ、人殺しなんてしたことは無いが…それでも俺がやらなくちゃならない気がするんだ」

 

これは本当の話だ。

俺は生まれてこの方人なんて1人たりとも手に掛けた事は無い。

だが、手の震えも無ければ――不思議と怖くない。

何故なら俺は、自分への怒りでどうにかなってしまいそうだったからだ。


『艦長―――』

「ヒートブレードセット…」


ヒートブレードの出力をONにする。

刀身に多大な熱を帯びた剣は焼けるように熱くなっていた。


『艦長…やはりいけません。 それ以上は戻れなくなります、ですから我ら機械が――』

「お前達の言葉を信じておくべきだった。 だからこれは…俺のなりのケジメの付け方だ!!」


勢いよくブレードで目の前の女性の頭部を貫くと、そのまま身体を半分に切断した。


「ど…し…て…」


寸前に女性はそう呟き、身体は塵となった。

妙な感覚だ。

胸は痛むのに、この行動自体に何も疑問を持っていない自分がいる。


『艦長…』

「問題の脳を破壊して、身体を半分に切断する。 それでギアにも操られない…痛みも感じない筈だ…」


何処かで俺はこうなる事を予想していたのかもしれな、だからこそ…ここまで冷静に対処出来てしまうのだろう。

怖いとか気持ち悪いとか、そんな感情は一切なかった。


ただ…むなしいだけだ―――


 

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