55.殆ど要塞化
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『ビーコンのセット完了―――及び防御スクリーンのセット完了。 動作チェック開始致します』
「了解っと。 この辺でいいか? いや、この辺か?」
公表から数日後の事である。
案の定、騒ぎになったこの出来事は他国、その他大勢のヘイトを集める結果となった。
しかし――
ガチャガチャガチャ…。
「じゃ、そういう事で魔族もこの国へ移住させるだぁ? そりゃ大騒ぎになる訳だ」
普通ならば暴動が起こってもおかしくない現状に、俺は呆れかえっていた。
流石はアリスの国の住人と褒め称えるべきか、文句を言い騒ぐ連中も居るが…行動に移す様な連中は誰1人として現れなかった。
『何時もの事、それで済むという事は―――それだけの事をこれまで色々とやってきたのでしょうね』
「だな。 まぁ、こっちはこれが終わり次第さっさと帰るとするか…」
『そうですね。 あまり長居する事は現状―――お勧めできません』
「あぁ」
俺は今、城の至る所に騎士鎧の置物を設置している所である。
これはまぁ、後々色んな役に立つ物なのでなるべく多くの数を配置している。
「え~っと。 これはこっちで、これはこうで…」
数日もの間、俺はこの様に配線弄りをひたすら続けている。
部下を呼ぶわけにもいかない俺は、ひたすら1人でこの様な地味な作業に追われている訳で―――
「ここまでしなくてもいいと言ってたが…なぁ?」
『はい。 少なからず、存在するかしないとでは雲泥の差かと』
「だよな。 まぁ、こいつらだとコストもかからないし――」
『場所も取りません』
「おまけに城を破壊する事もない」
『完璧ですね』
「あぁ。 まぁ…心配事があるとすれば」
『我々の技術ではないという所でしょうか?』
騎士鎧を眺める。
そう、問題はひとつ…たった1つだ。
こいつらは元々、エイリアン共が使役していたアンドロイドの一種でその名は”クリサリス”。
見た目はこの城に馴染めるよう、西洋の鎧風のデザインを模しているがその正体は正真正銘――人型アンドロイドである。
エイリアン共の技術を元に複製に成功した訳だが、いささか不安が残る。
「とはいえ、WLAH部隊共は流石に見た目がな?」
『はい。 クリサリスの様な擬態能力は備わっておりません』
「だよな~集合意識化での運用も…」
『恐らく互換性がないかと』
「だよな…」
やはりこいつらに頼る以外の選択肢はない訳か。
不安は募るが、まぁなるようになるだろう。
『保険は打たなくても問題ありませんか?』
「あぁ、そこは大丈夫だ。 限りなく装甲を薄くしといたからな?」
『成程。 それでは安心ですね』
「あぁ。 さてと、ちゃっちゃと終わらせて帰るぞ! うし!」
再び作業に取り掛かった俺は、夜中までひたすら同じ作業を繰り返すのあった。
その日の真夜中―――最終チェックに取り掛かった俺は大広間で腕を組み、ある一点を見つめていた。
「あ、あの~…私が呼べばいいのよね…?」
不安げな表情でそう俺に尋ねて来るアリス。
「あぁ。 命令優先権は移行させたからな? あとは呼ぶだけだ」
「わ、解ったわ…すぅ~。 クリサリス! 集合!」
ピコン。
『クリサリスの起動を確認致しました』
「よし、こっちは大丈夫そうだな。 あとは…」
カチャカチャカチャ!!
至る所から、カチャカチャと足音が聞こえる。
数分後―――
「よし、バッチリ30機揃ったな? しかし―――」
『えぇ』
集合までに多少時間を有するせいか、多少なりとも不安を感じる。
やはりアリスの王座近くにも数体配置しておくべきだな。
「そ、揃ったわよ?」
おっと、そういえばご主人様の存在を忘れてたな。
「これで一応、全体の作業は完了だ。 済まないな、こんな夜更けに態々呼び出して」
「いえ。 それはこっちの台詞よ。 ありがとう。 何から何まで」
深々と頭を下げたアリス。
それを前にした俺はやはり照れ臭いというか、まだ慣れないでいる。
「お、おぅ。 それじゃ、後は頑張れよ。 ふぁ~ねむ」
後ろ手を振りながら俺は部屋と戻っていった。
途中、アリスが何か言ってた様な気もするが…まぁいいだろう。
翌日―――
「わ、我々は本気である! 汚らわしい魔族と手を組んだ女王、アリス・ブランヒルデよ。 それ以上の愚行を続けるのあればこちらにも考えがありますぞ!」
急に呼び出された俺は帰る気満々の中で欠伸をしながら、人間の国の使いと思われる爺さんの話を聞いていた。
と言っても、これはアリスへと面会しに来た訳だが。
「宣戦布告か?」
「えぇ、そうみたいね」
小さくアリスに尋ねた俺は”へぇ~でしょうね”とだけ答えておいた。
「お分かり頂けましたな? こちらには貴女の御友人でもある、イルダ・ドラゴニク様含め竜人の皆様も居られるのです。 争いたくはないでしょう? ですから、こちらのお話を――」
なんでも人間は竜人の国と深い繋がりがある様で、あのイルダも争いとなると人間側に付くしかない様だ。
しかしこの老人、やり方が汚いというか…アリスの良心に付け込む様にグイグイ話を進めて来る。
成程な…こりゃ色々と苦労する訳か。
知っていたとは言え、アリスの反応も少し微妙な気がする。
はぁ…俺を呼んだって事はそういう事でいいんだな? 知らないぞ?
と目で訴えた俺は口を開いた。
「しかしまぁ、条件が無茶苦茶だな。 こっちにはなんの得もない。 却下だ却下」
「はい?」
「うちの主はこれ以上無駄な話は避けたいらしい。 お引き取り願おうか?」
「よいのですかな? この話を白紙にしても? 私の話を呑めない――というのであれば、きっとこの国は孤立する事でしょう。 貴女様のお父様とお母様はそんな未来を望んでいない筈だ。 おわかりで――」
ザシュ!!
老人の直ぐ横には俺の投げたナイフが突き刺さった。
「ひぃ!!」
「!!」
ギッと俺を睨んだアリス。
「お引き取り願おうか? 三度目は無い。 まぁ、これ位で済んだ事を光栄に思うんだな? ご老体」
「な、なにを偉そう―――」
「茶色いローブを纏った少女は御知り合いかな? なんなら、後程パーティーに招待しても?」
「!?!?!?」
俺のその言葉で老人の態度は急変した。
ビクッと肩を震わせ、恐る恐るこちらを振り返る。
「な、何を…貴方は」
「”今日は見逃してやる”と言ってるんだ? 次、同じことをしてみろ? 生きて帰れると思うなよ?」
「な、な、何を言ってるのかさっぱりだ! し、失礼させていただく!!!!」
バタン!!
速足でその場を後にした老人―――その姿を見て俺はニタっと微笑んだ。
「ど、どういう事!?」
はぁ、やっぱりか…いや。 あの薬莢からおかしいとは思っていたんだ。
しかし、まぁ…まさかの―――
「少年少女―――ありゃ傭兵か?」
「え? 何の話よ! ちょっと!」




