54.隠された真実とこれから…
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周囲の警戒を初めてから早、丸2日。
ここまでくるといよいよ眠けなんて微塵も感じない。
というか――
「やっぱり、こう緊張すると感覚抑制効果が発動するみたいだな?」
『そのようです。 バイタルチェックも致しましたが、至って健康―――何も問題がない事に、問題があるといいますか。 ミュータント化された影響なのかもしれません』
「ミュータント化ねぇ」
思わず自分の手足、肌触りなど、色んな物を改めて確認する。
だが見てくれも、構造も何処からどう見ても普通の人間と同じだ。
強大な力は相応の代償を必要とする――
昔誰かが俺に向けて放った言葉だ。
ぽっかりと抜けた記憶を辿りに思い出そうとしてみたがどうにもできない。
それもその筈だだろう。
なんせ俺は自分の記憶と寿命を引き換えに、この力を使用していたのだから。
「違和感は初めてユニットを纏った時だったかな。 何も感じなかったんだ」
『はい。 それはこちらも確認致しました。 本来であれば使用後は激しい痛みと人体になんらかの影響が出ている筈です』
「あぁ。 本当なら俺達はあの後…死ぬ筈だった」
綺麗な星空を眺めてそう呟いた。
本来であれば”全てが終わっていた筈だった”
今頃俺は息絶え、戦艦ガーンデーヴァとその全ては宇宙の藻屑となっていた予定だ。
「それがどうしたもんか、至って健康な状態で…それも何の対価無しにこうやって生きている」
『ご褒美。 という考えに致しましょう。 これより先は艦長の御心のままに―――いかなる時も我らは一心同体です。 ですよね? 皆さん?』
『『『『『はい!』』』』』
「そうか。 だったら遠慮なしにいくぜ? まぁ、アリスに怒られない程度に…」
『『『『『あ~…』』』』』
こうして夜は更けていった。
――――――――――翌朝の事である。
「――――――とまぁ、そういう事になったんだけどね? 正直、これはこれで敵を作りすぎると思うのよね。 魔族と手を組んだエルフの国、これだけでも相当誹謗中傷されるでしょうね? 正直、国としてのメリットはからっきしね。 寧ろデメリットの方が大きいかもしれないわ」
深く考えるような素振りを見せながら、丸2日寝ていない俺にそう発言したアリス。
「仲良しこよし、はいそうですか。 なんて何処の世界も納得できるわけねぇだろ」
「そうよねぇ。 特に魔族相手となると、うちの国もどう転ぶか…正直怪しい所ね。 けれど、それでもやる価値はあると思うの。 誰にも実現できなかった魔族と人間、それに私達の様な存在が手を取り合う。 どう? 考えただけで凄くない? THE異世界! って感じしない?」
何をまぁ、盛大な事をそんな”試しにやってみようと思うの!”感で話すことが出来るな。
流石の俺もちょっと引いた。
「それに考えても見なさいよ? 全員の技術力と知識が終結すれば、この国はもっと豊かになるわ! まぁ、それなりに壁は色々あると思うけど…けど、何事もやってみない事には始まらないわ! そう、私は私のやりたいままに進むのよ!! さぁ、付いて来なさい! リュウジ! いざゆかぁぁぁんん!」
メラメラと燃え上がる闘志を俺に見せつけたアリスは満足気にその場を去っていった。
「流石は裏で”深紅の暴君”って呼ばれるてるだけはあるな?」
『えぇ、しかと私も拝見いたしました。 あれが今のアリスですか…あれだけ失敗を恐れ、慎重に行動していた方の発言とは思えません』
「備えあれば患いなし――まるでそんな塊だったあいつが、どういう風の吹き回しであぁも変わったんだ?」
『さぁ? ですが、私個人の意見としては嫌いではありません。 寧ろ好感が持てますね』
「それには同感だな」
あんな様な発言をして馬鹿みたいに突っ走ている様にも見えるが、あいつにはその先が既に見えているんだろう。
人間や亜人を受け入れたのもアリスだと聞いた、それからアリスはより良い暮らしの為に様々な政策を設け、失敗しては改善――失敗しては改善を繰り返している途中だ。
国民全ての声を聞いて、誹謗中傷を浴びながらも突き進むその姿。 俺にはまねできない。
「だからこそかもな?」
『ここまで過保護な理由ですか?』
うっ…それを言わると流石に堪えるというか、そんなつもりは微塵もないんだけど?
『ですが、理由も解らなくはありませんね。 この国は理想そのもの、故に脆く危うい』
「あぁ。 叩けば幾らでも埃が出てくる。 なんせ前例がないんだからな?」
『穴だらけ―――そう言っても過言ではない。 そして、今回の件―――それを公表すれば―――』
「大方予想通りだ。 碌な事にはならないだろうな?」
流石にここまで来れば胡坐を掻いていた連中もおいそれと指を咥えている訳にはいかない。
魔族と人間、亜人達が共存できる国。
ただでさえ、国の状況を考えれば良しとしない者が大勢と湧いてくるだろう。
恐らく状況によっては手段を択ばなくなってくる。
そうなる前に俺はあらゆる選択肢を消し去り、いかなる状況にも対応できる様…この国の防衛力を独自に強化するとしよう。
「それにあの薬莢の件もそうだが、この世界――臭うな? もしかするかもしれんだろ?」
『確かに、完全に否定は出来ませんね。 他にも異世界人ですか…それは盲点でした』
「そもそも迷い人って言葉が存在している時点で色々おかしいだろ?」
既に俺の周りには元異世界の人間が2人も居る。
地球からやって来たトウマ、別の世界から転生を果たしたアリス。
自分でもいうのもなんだが、俺みたいな奴も存在するんだ。
何があってもおかしくはない。
「まぁ、政治的な話は向こうに任せて。 こっちは何時もの実力行使だ。 おまけに憂さ晴らし」
『…成程。 相手としてはたまったものでは無いですね』
「だろうな。 一番達が悪いと思うぞ?」
さて、俺は自分のやるべきことをやるとしよう。




