52.もう少しだと言うのに…
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「ったく！ お前等の周りはどうなってんだ！？ 敵だらけじゃねぇか！ いいかよく聞けよ？ 取り巻き共…それ以上近付けば、こっちは問答無用で排除する。 態々話も聞いてやらん、一方的な蹂躙だ」
だが、話している最中にも関わらず。
「問答無用！ その首、もらったぞ！！」
ローブに身を包んだ何者かが襲い掛かって来た。
「まず1人！！ アーサー！！ インパクトカノン！！」
『はっ！！』
ズガン！！！
ローブの者は声を発することも無く頭部が消し飛んだ。
「いいだろう…こうなりゃ全部殺してやる。 てめぇらどうせ魔族だろ？ 蹂躙だ」
『あ、あの～艦長？ 先程の発言と…』
「知るか！！ こうなりゃ、こっちのやり方って奴を見せつけてやろうじゃないか…なぁ！？ アーサー！？」
『は、はいぃぃぃ！！』
今の俺はどんな表情をしているだろうか？
それ程までに怒りが収まらない俺は、襲い来る魔族の集団をゴミの様に処理し始めた。
「すぅ～はぁ～。 全ドローン！！ 戦闘態勢！！ 1人として逃がすな？ 全て殺せ！！」
ピピピピピピピピ！！！！
駆動音と共に姿を現せた巨大ドローンは赤いパトランプを出現させる。
あれがドローンの戦闘モード。
敵に居場所を知らせる為にわざと赤い発光をさせている。
『『『『『（ラジャー。 システム―――戦闘モードへ移行―――蹂躙を開始―――）』』』』』
「お、おい？」
何やら魔王が話しかけて来た気がするが、今は無視だ。
「ふん！！」
そして俺は空に腕を伸ばし、こう叫んだ。
「コール！ パーシュパタ！！」
『了解――パーシュパタの転送を開始致します』
『あ、あの～…艦長？ 魔王達が居るところでパーシュパタを呼ぶのは…』
『残念ですがアーサー。 現在の艦長は蓄積されたストレスにより完全に頭に血が上っています―――つまり』
『ぶち切れですか？』
『えぇ。 ここ数日ずっと戦闘続きでしたからね？』
『あ、あぁ～…それは駄目そうですね』
「うるせぇ！ こいつらは逃がしてなるものか…許さん！！」
ゴゴゴゴと音を立て空間の裂け目から頭を出したパーシュパタ。
「え？ 何かが来てませんか！？ 魔王様！？」
「は？ おい、待て…あれはなんだ！？」
「ほぇ～…もう何でもありじゃん」
「……逆らわないでおこう…」
「え？ ロボット？ アーマーがあるのに？ ロボット？ …え？」
後ろが騒がしいな。
まぁいいか、それよりも先に俺も参戦だ。
「フルドレス！ パーシュパタ！ ダイレクト・アクションモード！」
『了解。 パーシュパタのコックピットを換装―――ダイレクト・アクションモードへ移行致します』
『（あ～っと。 皆さん？ 逃げた方がいいですよ？ マスターは暴れる様です）』
「「「「「へ？」」」」」
「ユニットリンク！！！」
ガチャン！！
パーシュパタの胸が解放されると俺がすっぽり埋まる程の窪みが開いていた。
そこへ俺は飛び込む。
そして―――
『ユニットリンク完了―――起動開始―――パーシュパタ・アクションモードー――起動を完了致しました』
【ふん！！ ふん！！ はぁぁぁぁ！！ 行くぞぉぉ！！ アームグレネード！！】
ドゴン！！！ ドゴン！ ドゴン！！！
木々をなぎ倒し、半径10ｍ近くの爆発をさせたそれは相手の身体を塵ひとつ残す事は無かった。
【許さんぞ。 お前等魔族は―――許さん！！ ふん！！】
「う、うわぁぁぁぁ！！！」
ゴン！！
魔族に向かって鉄拳をお見舞いする。
まるで蟻を潰している様な感覚だ。
『艦長。 確実にこれはオーバーキルです』
【知るかぁぁ。 もう許さん、地の果てまで追いかけ…根絶やしにしてやる！！！】
「うわぁぁぁ！！ なんだこれは！！ た、助けてくれ！！ うわぁぁぁ」
「やめろ！ やめてくれ！！ うわぁぁ！」
「もうやめてくれ！！ 頼む！！ 頼む！！！ うわぁぁぁ！」
断末魔が響き渡る。
以前までは加減してやろうかと思っていたが、やはりこっちの魔族は害悪だ。
ならば、こちらもそれ相応の対応をしてやろう。
いいか？ こっからは俺のターンだ！！
【ふははは…ふはははははは！！ 逃がすかぁぁぁ！！】
「う、うわぁぁぁぁ！！」
ズガン！！！
―――――――――――――
その頃―――早めに現場を離脱していたアーサー達はというと。
「あ、あの…アーサーさん？ あれは…」
『（はぁ…あれはマスターの極地用装備です。 どれだけ過酷な状況であろうと対応できる、アーマー用のユニット。 と言えばいいでしょうか？）』
「ま、まさかあんなのまで隠し持っていたとは！！ 絶対無理じゃん！！ 我勝ち目ないじゃん！！ 見て見ろ皆！！ もはや我より魔王じゃないか！ あの黒い色の巨人を見て見ろ！？ なぁ！？」
「ま、まぁまぁ！ 魔王様、お、落ち着いて下さい！」
身振り手振り説明を始めた魔王ハーデスを止める様に詰め寄ったイリス。
もはやこの景色は現実の物ではない―――そんな光景が目の前に広がっていたのだろう。
「あ～なんか魔王様の気持ち解って来たかも～僕もアレは相手に出来ないよ？ ねぇ？ リールイ？」
「あ、あぁ…即死だろう」
「ろ、ロボットだ！！ あ、後でファントムさんに頼んで乗せて貰うおうかな…いや！ もしかしたらアレは専用機で…ワンオフの機体！？ ろ、浪漫が止まらない！！」
『……それは同意ですね。 艦長こそ、本物の魔王でしょう…ほんと…怖いなぁ。 一切の躊躇がない辺り…流石は艦長です』
誰にも聞こえない様に叫んだアーサーは黒い巨人――パーシュパタが暴れる様を見て、どこか遠い目をしていた。
