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46.元勇者の男

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よろしくお願いいたします

魔王エルフの国へ向かってから数日の事。

アーサーから通信を受信した俺は夜中に話しを始めた。


「あの、どうも…トウマ・ユズキと申します」

「あぁ、よろしく」


というかこいつ、よく俺が通信できる事に気が付いたな?

まさかとは思うが。


「アーサーを説得したのは見事だ。 んで、単刀直入に聞きたい…お前はその~もしかして、こういう事が好きな類の人間か?」

「……え、えっと…」


やはり様子が変だ。

妙だと思ったんだよな、レーザーだのなんだの1人でぶちぶち呟いていた事――

おまけにそれを目撃していた張本人は恐怖する事無く、キラキラと少年の様な眼差しをしていた。


『やはり艦長の読みは正しかったようですね?』

「まじかよ…」


そこからは暫くの間トウマに質問攻めに合っていた。

俺の姿は完全に日本人であるのに、技術レベルが明らかに自分達と異なっているのは何故か。

本当に同じ地球の人間か等、宇宙人の疑いまでかけられた。

全て軽く濁しておいたが…なんともまぁ。


「で、では! 僕は必ずアリスさんを説得してみせます! 必ずや! 僕は愚か、魔王様も貴方に歯向かうつもりはありません、あくまでこれは信用を得る為の行動です!」


自信に満ちあふれた声が聞こえてくる。


「あのなぁ? 一応俺らは敵―――」

「僕達にその意思はありません。 あのスーツを見て一目で確信しました。 貴方は普通じゃない、だからこそ魔王様もあれ程意地になってるんだと思いますよ」


良くしゃべる奴だ。

内部事情を赤の他人にそう易々と話すもんじゃないぞ?


「解った解った、今日は遅いからもう切るぞ? じゃあな?」


それだけを告げると一方的に通信を切断した。

が、この行動をきっかけに元勇者トウマは頻繁に通信を寄越すようになった。






―――――――――――――


「――――――――ですから! 異世界の小説とかでよくある、夢物語の様な展開にはならなかった訳ですよ。 ”創造”という力を手に入れた僕ですが、あくまでこれは地球に存在した力を具現化するものであって、2次元の力で戦うとか…そんな芸当は全くできないんですよね」

「へ、へぇ~…」

「それにこの世界の人間は狂ってますよ。 まるで悪質な宗教団体みたいな連中です。 話が全く通じない、あれこそ悪と言っても過言ではないでしょうね」

「ほ、ほぉ~」


いつまで続くんだろう、これ?と思いながらも。


「そんな時です、彼女…イリスさんに助けて頂いたんです。 魔に堕ちたと噂されましたが、それは破壊派に下った時に限ります。 僕は普通に人間ですし」

「成程な?」

「はい。 ですが、破壊派の連中がファントムさんに迷惑を掛けているのは明白。 申し訳ございませんでした」

「お、おう」


なんだろう、正直やりづらいというか…今は丁度昼時。

俺は普通に通信で会話をしているが、オープン回線で行われているものであり…こっちの音声は向こうに筒抜け。

つまり、何が言いたいのかと言うと。


「うむ。 済まない…奴がベルザードが死の森へ目を付けたのが始まりであった…」

「申し訳ございません」

「本当に!!」


何、移動中に通信しちゃってんの? である。

アーサーもアーサーだ。 

理由が『いや、あの…ここまでしつこいと流石に我慢の限界と言いますか。 艦長が何か言って下さい!』と半分投げやり状態だった。

しかし、どうしたものか…普通に環境に適応してきている、こいつらもこいつらだ。


初めはあれだけ驚いていたのに、今では普通に会話している。

調子が狂うな。


『ですが、彼等に敵意を感じられないのも明白。 故にそうアーサーが判断したのでしょう』


だから尚の事やりづらいんだろ?


「はぁ…全く…この世界の連中は色んな意味で相手にしづらいぜ」

『同感です』

「な~んか、呑み込みが早いというか…」

『適応能力が高いというか――』


色々とアレだなアレ。

めんどくせぇ!



―――――――――――――



一方そのころ、魔王一行と行動を共にするアーサーはと言うと。


「でも、どうして魔王様? 彼の護衛が付いていながら、重要な話を幾つもされるんですか?」


彼の護衛とは私の事を言っているんだろう。

ハイリアはそう魔王に尋ねると魔王は大きく頷きこう言った。


「あの者を見て確信した。 我、いや…我らの存在等眼中にはない。 そもそも、そこの者を我らに付けたということは逆に―――それで事が足りるという事だ…」

「な……」

「あり得ません」

「だろうな? しかし、トウマよ? 貴様ならこやつらより、利口な回答が出来るであろう? どうだ?」

「そうですね、恐らく。 あの方の力はそれだけに留まらないかと思います。 そして…そこの”彼だけで”僕達は全滅する事でしょう」


全員が息を呑んだ。

成程。 こっちの魔王は攻め込んで来た馬鹿共と違い、しっかりと上に立つ立場の者らしい。


「成程。 それ程か?」

「本人に直接聞けばいいと思いますよ?」


何を言い出すのかと思えば、トウマがそう魔王に告げた。

魔王自身も納得した様子で私に尋ねる。


「して、アーサーとやら。 貴殿はたった1頭で我らを倒す事は可能なのか?」


なんというか、艦長の言っていた事が解った気がした。

とはいえ、ここはそれ相応の返答をしておくとしよう。


『(馬鹿正直というか、なんというか。 嫌いではありませんよ? そういった者は、そうですね。 少なくとも誰1人として逃がす事なく。 仕留める事位は可能ですよ?)』


ただし、捕獲しろと言われれば別の話だ。

それはそれで一層難度が増す、が…仕留めるだけであれば容易である。



「そうか。 それだけで十分だ」


何故か魔王はより一層表情を歪めた。

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