36.人魚と魚人
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「―――という事で。 この海岸へ近付く事は止めた方がいいのですわ」
人魚族の彼女、サフィーニアに説明を受けた俺達は「成程」と相槌を打った。
なんでも彼女達人魚族と魚人族と呼ばれる存在が今まさに海の中で戦争中とのこと。
普段一目に付かない場所で生活しているともあり、彼女達の存在は外部へ知れ渡っていない。
つまり、静かな戦争中という訳だが。
「しかし、なんでまたその魚人族って奴と戦争を?」
「もともと私達人魚族と魚人族の仲はそれ程よくないもので、争わなかった理由もあの”クーラケン様”が近くの海域を徘徊していたからですわ。 ですが、最近―――行動範囲が広がった様で、中々現れず…」
戦争になったと…あれ?
これ、おれのせいじゃね?
サラの方に視線を戻した俺は彼女に大きく頷く。
するとサラも気付いた様で、あちゃーっと苦い表情を見せた。
「アルジュナ…頼むわ」
『了解。 シャークへ通信を飛ばします』
ピピッ!
『およ? なんかありましたか!? 艦長?』
「あ~とりあえず戻って来れるか?」
『ん? 了解です!』
数分後。
『艦長~!』
海の向こう側から、物凄いスピードで現れたシャークは手下のクラーケンを引き攣れやって来た。
まて! いまそれはまずい!!
「あれ? 気のせいでしょうか? 先程の怪物とクラーケン様が一緒に…」
「「………」」
もはや誤魔化しが利かなくなった俺は彼女に説明する決意をした。
そして―――
「お、お許しください!! ま、まさかそれ程の御方だったとはつゆ知らず!! 無礼な物言いを! お望みとあれば、この身を捧げても構いません! ですら! ですから!!」
先程の態度とは一変、全力で俺に頭を下げたサフィーニアは涙目でそう告げた。
「いや、そこまで謝らなくても…」
「そ、そうですよ? ご主人様も気にしてませんし…」
「いえいえ! あの! あのクラーケン様を倒した存在。 シャーク様の主である貴方様に何て無礼を!!」
シャーク様?とシャークを見た俺。
『え? シャーク様? 俺が? いや~そんな~照れるな~』
このモードでのシャークは基本的に艦内待機が多かったせいか、あまり褒められたことは無い。
しかし、ここに来て真価を発揮したというか。
収まる所に収まった…そんな様な気がする。
『しかし、グランパスがこっちに来なくてよかった!! あいつが来てたら、またあいつに手柄を取られてたもんな~!!!』
よかった~と散々発言するシャーク。
グランパスとはシャチ型の起動兵器で、あいつは氷床のある海を気に入ったらしく。
今はそこで大人しくしている、海最強と言っても過言ではない存在の奴だ。
「へぇ~そんなに凄いんですか! グランパスさんって!」
そういえば、サラはまだあった事ないんだっけか?
「あぁ、凄いってもんじゃない。 例の騒ぎで一番撃破数の多かった奴はグランパス1人だ。 あの森全体の集計でだぞ?」
『奴に睨まれた存在は逃げられやしない、そう言われてる位には恐ろしい奴なんですぜ!』
「ふぇ~…そ、そこまで」
例の騒ぎとは、森があそこまで騒がしくなった原因の事件だ。
なんでも魔族が大量に森へ侵入したらしく、先に森の北の海域で待機していたグランパスを問答無用で攻撃したのが運の尽き。
20隻以上の船が、奴に海の底へ沈められた。
そこから終始お怒りのグランパスは侵入する魔族共を、逆に問答無用で排除する殺戮兵器と化した。
今は落ち着いてるが、森の北連中に「あれはやばかった」と言わせる程の光景だったようで…皆がグランパスは怒らせないようにしよう。
と決意した瞬間だった。
「とまぁ、話の腰を折ってすまないが。 戦争の原因を作ったのは俺のせいだ。 話によれば、まだ犠牲者は現れていないんだろう?」
「は、はい! まだ衝突はしていませんので!」
「だったら話は早い。 シャーク? クラーケン? ちょっと魚人族共を懲らしめてこい? 向こうが仕掛けた戦争だ。 容赦はいらんだろう」
流石に滅ぼすなよ?と告げた俺は奴らを魚人族の住処と思われる場所へ派遣した。
「あ、あの! ほ、本当によろしかったのですか!? こ、ここまでしてもらって!」
「いや…まぁ。 その…釣ったり? 戦争の原因を作ったり? いつもならスルーできる俺でも、流石に罪の意識が重いというか。 なんか色々すまん! ほんとごめん!」
「い、いえいえいえいえ! あ、頭をお上げください!」
流石に今回ばかりは俺のせいだ。
『では、モニタリングを開始いたします』
「おっけー。 ちゃっちゃっとやっちまうぞ?」
その場に座り込んだ俺は、目の前のディスプレイに目をやった。
さて、魚人族とやらのお顔を拝見いたしますか。




