35.釣れたのは…
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昼食を終え、釣りを楽しんでいた俺は隣で眠るサラのスカートをゆっくり戻した。
「パンツ丸出しで寝るなよ…。 というか、スパッツはなかったのか!? スパッツは!」
俺の角度からだとモロにパンツが見える。
これじゃあ、色気もへったくれもないぞ。
『メイド服にガーターベルト、最高の組み合わせだと思うのですか?』
「そこは否定しない。 だが、メイド服もガーターベルトも選ぶ権利はあると思うんだ」
こう、更に関しては似合ってるんだか似合ってないんだが、正直中途半端な感じで何とも言い難い。
正直な感想を述べるとするならば、黒パンティーはどうかと思う。
「ってそんな話はどうでもいいんだよ。 アルジュナ…ひとついいか?」
『はい、なんでしょうか?』
「俺ってさぁ、釣りのセンス…ゼロ?」
『ご愁傷様です』
それ以上何も言う事はなかった。
成程。 そうか、そうか、よーく解った。
あのクラーケンとシャークを帰して、釣りに勤しんだ訳だが、この2時間あまり―――うんともすんとも当たりがない。
アーサー達が言うには入れ食いスポットらしいが、俄かに信じがたい。
いや、ここはもう俺の絶望的な運気が邪魔をしているのかもしれない。
「と、思い込んでいる位には全然当たりがこねぇぞ?」
「zzzzzz~むにゃむにゃ。 ご主人~…むにゃむにゃ」
「平和な奴だ」
俺に対して無防備すぎるぞサラよ…
もう少し緊張感位は持って欲しいもんだな、なんというか…俺の理性が崩壊する前に。
――――1時間後。
半分諦めモードの俺は海を眺め始めた。
波打つ音、磯の匂い、せせらぐ海風―――うん。 別に釣れなくてもいいかな。
そんな気持ちにさせてくれる美しい景色だった。
―――2時間後。
もう竿から手を離した俺は、サラの腹を枕にして空を眺め始めた。
「寝るか…」
『あの、釣りは?』
「知るかそんなもん」
人間には向き不向きというものがある、だとすれば俺には釣りは向いていないのだろう。
なんせ短気だし、じっと待っていられない。
『仕事であれば、あれほどじっと待っていられるのにですか?』
「仕事は別だ! が、プライベートはこう~雑なんだよ」
『確かに。 そこは否定しません』
ちょっとは否定しろよ…
まぁ寝るか。
そして俺はサラの大声で目覚める事になった。
というのも――
「引いてる! 引いてますよ! ご主人様! ご主人様ぁぁぁぁ!」
「あ? 引いてる?」
やけに騒ぐサラの声に起こされた俺は目を擦りながらも竿を見た。
すると―――
「!? 引いている!」
確かに竿は引いていた。
それも今までにない位みしみしと音をたてながら。
この竿はアーサー特製のカーボン製の釣り竿で釣り糸も特殊な糸を使用している。
なんちゃらスパイダーの糸らしいが、詳しい事は解らない。
「ふっ、いくぞ! リールはマニュアルでいくぞ!」
『了解。 健闘を祈ります』
「健闘?」
物騒な発言を聞いた俺は、リールに手を伸ばす―――そして。
「な!? 重…」
「う、うぉぉぉ…凄いしなりですよ!」
多少力には自身があった。
だが、こいつは別格だ…今までに感じた事の無い力強さと引き。
まるで超大型生物が引っ掛かった様な気分である。
竿が折れる事もましてや糸が切れる事もない。
あるとすれば―――
「俺が諦める位だよな…」
『あとはばれる可能性ですね』
「あぁそうか…針はその辺の鉄で作ったんだっけ?」
『はい。 そこは昔ながらのやり方で』
「まぁ、そうだわな。 いくぞ!」
全力でリールを回す。
相手は凄いスタミナだ。
俺の力に逆らう様に沖へ沖へと逃げて行くのが解る。
しかし、俺もまだ見ぬ獲物に食らいつく様に力強くリールを回す。
それから1時間余りの事だ。
相手は観念したのか、引きが弱くなった。
ギィギィギィ!!
「お? 見えて来たぞ?」
「ほんとですね! なんですかねあれ? おっきな魚? にしては…」
「なんか、肌色が多いな?」
肌色の魚? 深海魚とかその辺の生物か?
それにしては大きい様な気がする。
体長も2m近くある様にも思えるし…魚にしてはちょっと巨大というか。
「…………」
「…………」
ほぼ目前の所まで来たところで、俺は無言でサラと見つめ合った。
魚は魚で間違いない。
この目ではっきりと解る。
が、それが正真正銘の食べられる物かと言われれば怪しい。
なんせ―――
「「人魚…」」
白目を剥いた青髪の人魚が、口をパクパクさせながら水面に浮かんでいたのだから。
もう一度見つめ合った俺達は深く頷き、尾ひれに刺さった針をゆっくり抜くと
「「さ、さようなら~…」」
海へ帰してあげた。
まだ浮いてるけどな?
「「あ…」」
一瞬だが、目が合った。
ハッと目覚めた人魚は俺達を見るや否や、物凄い勢いで。
「ちょっとぉぉぉぉ! あなた達!? 尾ひれに針が刺さったじゃないのよ! あ~! あなた達もしかして…最近この近辺で釣りばっかりしてる人達ね! いいです事! ここは神聖な人魚族の海域です事よ? それを人間風情が…荒らして―――」
が、それ以上彼女は何も言う事は無かった。
何故なら、彼女の背後からは大きな口を開けたシャークが凄い勢いで迫って来ていたからである。
ザァァァァァ
『敵意を感知! 抹殺!! 撲滅! 排除!! ガブガブガブガブ!!!』
ガチャンガチャンガチャン!!
何度も口を開け閉めしながら迫るシャーク。
「あの~もし?」
「さて、帰るか…サラ?」
「そうですね! ご主人様♪ 今日の晩御飯は何にしましょう?」
「そうだな~…やっぱり人魚の?」
「刺身ですか?」
ニヤリと俺達は人魚に微笑みかける。
「え? 嘘ですわよね? 初対面でこんな…仕打ち…」
「敵意を向けられちゃあなぁ?」
「はい! 敵意丸出しで交渉の余地がないと判断したんですね。 そこの人魚さん? まだ私達とお話、したいですか?」
「コクコクコク!!」
流石はサラだ。
既に脅しのテクは取得済みらしい。 まぁ魔族相手に派手にやらかしたらしいし…そりゃこうもなるか。
今後が非常に楽しみだ。
おっと。 そろそろシャークを止めるか。
「止まれ」
『アイアイサ―――!!!』




