32.迷宮
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【どうなってるんだこれ?】
俺は確かにこの空間の壁を粉砕した筈だった。
しかし、目の前には先程とは違う…別の景色があった。
灯りの全くない、まるで迷路の様な洞窟だ。
しゃあねぇ。 とりあえず進む他ないか―――
洞窟を進む事1時間。
適当に目に映った魔物共を葬って行くが、数が尋常じゃない。
【これで正解だったな】
「グォォォォ!!」
【鉄拳!!】
グシャ!
激しい咆哮を浴びせるドラゴンに鉄拳をお見舞いした。
流石はスーパーロボ。 ドラゴンの堅い鱗でさえ、拳1つで事足りる。
というか、そろそろ魔物を1000体近く倒してる気がするんだが、いったいここは何処なんだ?
洞窟と呼ぶには狭い様な気がするし、空気を感じない。
おまけに酸素濃度も低めで、これだけの魔物が生息出来ているのはおかしい。
『艦長! 奥に気配を感じます!』
『確かに感じる…最深部へ急ぎましょう!』
【気配? まぁいい、行くか】
道中の魔物も、しっかり倒していった俺は最深部へ向かう。
と、そこには見慣れない人影があった。
【人か?】
人、ではなさそうだ。
黒い何かに覆われた人の様な何かはこちらを振り返るなり、いきなり飛び掛かって来た。
【ってまてーい!】
ガン!
あぶね!
寸前で回避出来たからいいもの、目の前に空いた2m程のクレータを見て息を呑んだ。
「ほう? 流石だな…奴の力の根源に勘付いた者だけはある」
【なに?】
「白を切るか。 まぁいい。 奇妙な恰好をしているが、貴様だな? あのベルザードを葬った者は」
ベルザード?
あぁ…あの話が通じなかった魔族の?
【あぁ…あいつの事か】
「ふっ。 どうやら心当たりがある様だな?」
【で? あんたは?】
「なに、少し偵察に来ただけの者よ」
【偵察?】
それにしては威圧たっぷりというか、今にも俺に襲い掛かってきそうな雰囲気だ。
「と、まぁ。 時間稼ぎはさて置き、取引といこう」
【取引だと?】
「そうだ。 今から貴様をこの空間から脱出させてやろう。 そして――貴様の住む”死の森”そしてエルフの国からは一切手を引く。 代わりに、こちらの手下共を見逃す。 どうだ? 悪くない条件だろう?」
まさかそこまで把握済みとは、いったいこいつは何者なんだ?
おまけにちょっと偉そうだし。
【成程。 悪くない条件だ。 しかし、こちらに利点ばかりだがそれは?】
「なに、貴様を敵に回したくないだけだ。 こちらとしても無駄な争いは避けたい、それに最近はハグレ魔族の行動が目に余るのでな。 少し動いてやろかと思っただけだ」
【まぁ、こっちとしてはお前等魔族が大人しくしてくれればそれでいい】
「ふっ。 それは”こちらも同じ”だ。 では、交渉成立という事でいいな?」
【あぁ。 問題ない】
まぁ、特別何かを企んでいる様子でもなさそうだし、ここは穏便に済ませるとしようか。
「では、ゆくぞ。 あの言葉忘れるなよ?」
【そっちこそ】
シュン!
瞬間、俺は何かに吸い込まれる様にその場から姿を消した。
そして―――――――――――――
無事脱出に成功した俺はなんやかんやあって。
【行くぞ! 悪の手先め! このブレイブエックスが相手になってやる! いくぞぉぉ!! ハイドロ、ショットォォォォ!!】
右腕を構えた俺は梯子部分から水球を発射した。
が――狙いは外れ、入り口の方へと真っ直ぐ飛んで行く。
ズガン!!!
「「「「「え?」」」」」
ミスった、牽制のつもりが当てそうだった。
凄まじい音と共に鉄の扉には巨大な大穴が空いた。
「ちょっとあんたぁぁぁ! 私達に当たったらどうするのよ!!」
【ふっ。 お嬢さん済まない。 あれは試し撃ちだ! ならばこっちで行くぞぉ! ストレッチャーシールド!!】
左腕部分から取り出した長細いシールドで2人の人物に急接近する―――が。
【と、思ったが。 見逃してやろう】
寸前で止まった俺は目の前の2人にそう告げる。
「見逃すだぁ? 何を勝ったつもりで!」
「その声…ファントムか。 なんのつもり―――」
攻撃態勢に移行しようとした2人だが、誰かに飛び留められる様に手を止めた。
「な、何故です! ここで排除すれ―――」
「いえ、それは無理ですハイリア様。 恐らく――」
「くっ…解った。 じゃ、お言葉に甘えて」
「ファントム…貴様何者だ」
2人はそれだけを告げると俺の目の前から姿を消した。
のはいいとして、問題は―――
「ちょっと?」
「言いたいことは山ほどある! しかしな?」
「あの~まさかファントムも裏切り…」
【ファントムではない。 ブレイブ――ー】
「白を切るつもり?」
駄目だ。 言い訳できそうにない。




