―Side― 裏切り者と魔族
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ファントム事、リュウジが私達の前から姿を消して早1時間近く。
今、私達6人は目の前の人物達に手をこまねいていた。
「くっ! 早い!!」
思わず男と距離を取る。
「ひゅ~流石はリールイだ。 やるねぇ~」
後ろで軽口を叩くライナ。
こんな状況でもブレないとは、流石としか言いようがない。
「あのねぇ…今私達は追い詰められてるんだけど?」
「そうだぞ。 あの女とお前達の元仲間に苦戦中だ!」
「どうして、リールイさん!」
結果的に言うとあいつを飛ばした原因がリールイである。
彼は元から、あの魔族の手下で何十年もの間彼らを欺いていたらしい、英雄として…
しかし、当の裏切られたはずの本人達はケロッとした顔付だった。
「成程ね? どうりで君をいまいち信用出来なかった訳だ」
「えぇ。 ライナの言う通りね」
「だろぉ? だから言ったんだ、あれは信用出来ねぇって」
そんな事なら事前に教えて貰いたかった所よ。
「あははは! リールイ! 仲間に信用されていないとかどれだけなんだい!? あははは! まぁ、英雄様達とは言え? 僕達の足元にも及ばないけど?」
「「「「っ!!!」」」」
わからない、彼女事魔族の女の力の根源が―――
この部屋一帯を覆いつくす様な莫大な魔力量と凄まじい防御力。
私の全力の一撃も彼女には通用しなかった。
「ならば教えてやろう…彼女、ハイリア様の力は”煉獄”という力だ。 あの男を飛ばした力は少々荒治療だが、れっきとした彼女の力でもある」
「煉獄?」
「そう! 僕の力の根源は多次元に隔離した魔物達の力を元に膨れ上がる。 それはもう永久的にね? けど…流石の僕の力でも彼を葬る事は出来ない。 だから~異なる次元へ閉じ込めたって訳! どう!? すごいでしょ!?」
「な、に…次元に閉じ込めた!? そ、そんな事が出来る訳―――」
アルメイアは声を荒げる。
いや、方法ならばある――
「空間魔法…」
「あ・た・り♪」
「「「「なに!? 空間魔法!?」」」」
唯一空間を操れる能力で、禁術とされた空間魔法を使えるなら別だ。
あいつを別次元へ閉じ込めた理由も説明がつく。
けれど―――
「そう」
思わず笑みが零れた。
「はぁ?」
「何がおかしい?」
ただその対象が私達であればの話しだ。
あいつは次元格納と呼ばれる変わった力を駆使している、つまり…これ位と言うのは失礼だけど。
これしきの空間魔法であいつの力をどうこう出来るわけがない。
きっとまだまだ力を隠し持っているんだろう。
だからこそ確信できる。 あいつは無事だと。
「いえいえ、ちょっとね?」
そうとなれば私の使命はひとつ。
全力で時間稼ぎをする!
「はぁ? どうしたの~頭がおかしくなった~?」
「負けを認めるのであれば、大人しく聖女を渡せ」
勝ち誇った表情の2人を見て、可笑しくなってきた。
「くくく…あははははは!! はぁ~楽しい。 成程ね…あいつが言ってたのはこれかぁ~」
「お、おい? アリス?」
「アリス…ちゃん?」
「気合を入れるわよ? 効いていないとしてもね? いくわよ!!」
思いっきり剣を振るう私は全力でリールイ目掛けて攻撃する。
そうだ。 今の私の目標は全力でこの男を抑える。
「ぐっ! なんだ急に…」
「なんでこんな状況でやる気に満ちあふれていがやるんだ? あぁん?」
勝算なんてない。
だけど、ハイリアを眼中に捉えないだけで不思議と身体の重荷が降りた気がする。
「ほら! ほらほらほら!!」
カンカンカンカン!!
「ぐっぅ!」
「おぉ~いいねぇ~ そういう事か…んじゃま。 さっさとリールイの馬鹿を仕留めるか…スキル。 俊足!!!」
体勢を低くしたライナが一直線にリールイ目掛けて飛び込んだ。
彼は防御に手いっぱいだ。 おまけに攻撃速度も遅い、仕掛けるなら一気に。
その方が彼には効果覿面だろう。
「おいおい、僕の事を忘れてるんじゃないだろうなぁ!?」
先程までであればこのタイミングで支援の攻撃魔法が飛んできていた。
けれど―――
「あぁ?」
背後のハイリアは魔法を発動しようとして少しふらついた
やっぱり―――
「ど、どういう事だ!?」
「わ、解らない…けど」
「つべこべ考えるな! リールイの奴に攻撃を集中だ!!」
「「あぁ(えぇ」」
間髪入れずに攻撃をリールイへ集中させる皆。
効き目は抜群だ。
ハイリア自身…自分が消耗している理由にも気付いていない様子。
無理も無い、彼女達の反応は間違っていないのだから。
なんせ――次元を突破できる奴がおかしいのよ。
集中する事数分――効果は表れ出した。
「くそ、くそくそくそくそ!! なんでだ!? なんで僕の魔法が使えない!」
「ぐっ…ハイリア様。 回復魔法を…」
「スキル! 秋雨!!」
無数の斬撃をリールイに向け放つ。
「おぉ~効いてる効いてる。 んじゃま、俺は聖女様の護衛と洒落込むか~。 ほい、アルメイア? 交代だ」
「あ、あぁ! 行くぞ! スキル!! 炎剣!!」
炎を纏ったアルメイアの剣は勢いよくリールイの盾を捉える。
ガン!!
「くぅ…」
「悪いねリールイ。 裏切り者に僕達は容赦しない主義なんだ。 スキル…雷神ソードクラッシュ!!」
「理由は後で聞いてあげるわ。 だから―――眠りなさい。 走れ稲妻! サンダーブラスター!!」
「ちぃ!」
「くそくそくそくそ! どうして、なんで…僕の力が! 無くなっていく…あれだけの力が無くなる!!」
たった数分でハイリアの魔力は赤子程の物になっていた。
恐らく原因は―――
次の瞬間である。
パリ―ン!!
何かが弾けた音と共に何処からともなく―――ー
【とう!!】
ガチャン!!
見間違いだろうか? ヒロイックな見た目で、腕に消防車と救急車、足にショベルカーとブルドーザーっぽい何かをくっ付けたロボットが空から降って来たのは。
思わず目を擦った私は何度もそれを確認する。
【しかし、どこのどいつだ。 俺を亜空間へ飛ばした野郎は…おっと違った。 誰だ! この私を意味の解らない場所へ閉じ込めたのは!! 鎮火する!!】
ウ~カンカンカンカン!!
肩のサイレンが鳴り響く。
【いや、ここでレスキューってのもおかしくない?】
ピーポー…ピーポー!!
もう片方のサイレンが鳴った。
【だぁぁ! いちいちうるせぇ! ワードに反応するんじゃねぇよ! え、何? 後ろ―――】
私と目が合ったそいつは一度天井を見上げた後。
【行くぞ! 悪の手先め! このブレイブエックスが相手になってやる! いくぞぉぉ!! ハイドロ、ショットォォォォ!!】
右腕を構えると梯子部分から水球の様な物を発射した。
が――狙いは外れ、入り口の方へと真っ直ぐ飛んで行く。
ズガン!!!
「「「「「え?」」」」」
凄まじい音と共に鉄の扉には巨大な大穴が空いた。
「ちょっとあんたぁぁぁ! 私達に当たったらどうするのよ!!」
【ふっ。 お嬢さん済まない。 あれは試し撃ちだ! ならばこっちで行くぞぉ! ストレッチャーシールド!!】
何やら長細い盾の様な物を取り出したそいつは敵2人に突っ込んで行った。
いや、それ盾じゃないの!?




