30.地下5階層
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どれ程の時間が経っただろうか。
流石に3日位は経ったと思う―――気がする。
地下5階層へ到達した俺達は魔物が少ないエリアで休息を取っていた。
テントを広げ他愛ない話を交わしながら―――
「だからって可笑しいだろ! なんで俺がお前らと一緒なんだよ! ライナ達は自分たちのテントがあって、なんで俺だけお前等に挟まれながら寝なきゃならんのだ!」
ここまで来て俺の鬱憤は溜まりに溜まっていた。
いや? 流石にそろそろ可笑しいな~と異変を感じていたが、やはりこれは異常だ。
「も~何が不満なのよ?」
「そうだぞ? ちょっと狭いだけじゃないか」
「そうですよ~♪ 狭いですけど、楽しいじゃないですか♪」
何を言ってるんだこいつら?と言わんばかりの白い目を向けても効果は感じられない。
「う、うらやましがったほうがいいか?」
挙句の果てにはライナに同情の目を向けられる始末。
信頼を置てくれているのはありがたい。 しかし、置き過ぎというか…仮にも異性だからそこは―――
「こいつらに何を言っても無駄か…」
彼女らの純粋無垢な表情を見て、俺は色々と諦めが付いた。
彼女らはきっと修学旅行気分で気持ちが昂っていて、冷静な判断が出来ていない状況なんだ。
そう思い込む他なかった。
「しかし、驚いたぜ。 ここまで来て全く健康な状態だとは…ダンジョンは本当に始めてか?」
俺の様子を見たライナはそう告げる。
確かに、歴戦の英雄様達にも少し疲労の兆しが見える。
「あぁ~こいつはなんていうか。 化け物だから大丈夫よ」
「そうだぞ! なんたってイカれているからな! あははは!」
「そ、そうですね! アッシュ君すらも遠く及ばない存在ですから!」
「だろうなぁ? これだけ格の違いを見せつけられちゃ、何も言えねぇわ」
4人の様子を見て、うんうんと頷く元英雄達。
『よっ、化け物』
誰が化け物だ。
とは言え確かに、これ位の事じゃ俺の身体も疲れる事はないだろう。
なんせ、過去を振り返れば酷い有様の景色ばかりだった気がする―――
『主に戦艦内が戦場ですけどね?』
「(だな…)」
輪を離れた俺は1人、ある事を調べる為に来た道を引き返していた。
道中目に映る全ての魔物を排除したおかげで、反応は嘘の様に消えている。
確か、このへんか―――
「これだな」
何かの破片を拾った俺はそれをジッと見つめる。
「(解りそうか?)」
『はい、これはやはり鎧の破片と思われます』
鎧の破片…話しによれば、ここへ侵入したのは俺達がはじめてな筈だ。
英雄パーティーも言っていた、調査依頼を受けたのは自分たちが初めてな筈だと。
どうも臭うな。
「やっぱり臭うな――」
背後から声が聞こえる。
「!?」
すかさず身構えた俺は後ろを振り返った。
「おっと! 俺だよ俺! やっぱりお前もそこに目を付けたかと思ってな?」
両手を上げニコッとそう告げたライナ。
「なんだ、ライナか…」
「へへっ! びっくりしたか!? これでも俺はシーフだぜ? 気配を消す位なら、お前に負けねぇぜ! それ以外全敗だけど…」
「勝手に落ち込むなよ。 で? ライナ? お前もこれを睨んでいたのか?」
「おっとそうだったな。 あぁ…どうも臭う。 モンスター共の挙動もそうだ。 まるで
俺らの侵入が解ってるみたいに統率がとれてやがる。 まぁ、唯一の例外はお前だけどな?」
「俺?」
不気味にな笑みを浮かべたライナは大きく頷く。
「そうそう! 何が目的か知らねぇが、お前の存在は向こうに取ってかなり痛手な筈だ。 なんせ3日で地下5階層だぜ? まぁ…ファントム。 お前が関わればもっと早くいけるんだろう?」
更に悪い笑みを浮かべたライナ。
こいつ、解って言ってやがるな。
「根拠は?」
「なんだろうな。 行き止まりにぶち当たっても”知ってた”って顔ををしてたからな?」
『おっと…鋭いですね?』
「はぁ~…出てた?」
「―――ちょっとだけ」
「気を付ける」
「あぁ、そうした方がいいぜ? 俺の仲間にバレると厄介だし。 まさかとは言わねぇが、10階層まで見えてたりしないよな?」
そのまさかだ。
実際の所見えている。
が、こいつに隠し事をしてもバレるだろうと踏んだ俺は正直に話した。
「いや、見えてる」
「まじで?」
「まじで」
「かぁ~!! やるなぁ!ファントム! そりゃあの姫様が放さない訳だぜ! いや~心強いな。 んで、話は元に戻るが”そっちの話”は俺ら2人の秘密って事で」
「秘密?」
「あぁ、あいつらに気付かれると色々後で面倒だろ? もしかしたらの可能性もある―――」
「嘘だろ?」
彼の表情を見て俺は察した。
もしかしたら―――考えたくはないが、可能性が無い訳じゃない。
「お前の所は安心だ。 ある意味解りやすい連中ばかりだからな? 注意しとけよ? 特に――――」
戻った俺は会話を交わす連中を尻目に地面へ寝転がった。
「あら? えらく長かったわね? 何かしてたの?」
「ノーコメントで」
「まぁ、余程我慢していたのだろう…それよりも! 話しの続きだ!」
ん?我慢?
何を?
気のせいか、アリスの顔が赤い気がする。
まて!? 何か色々と勘違いを―――
しかし俺は否定すらしなかった。
なんというか、面倒だ。
ダンジョンか…見てば見る程奇妙な景色だ。
魔物の配置――トラップの場所。
まるで誰かが意図的に設置した様にも思える。
まぁ、それはそれとして―――
ガン!!
俺達を挟む様に現れた無数の槍をバスタードソードでへし折る。
「ご、ごめんなさい! ま、またやっちゃいました…」
ある意味彼女の特出した才能と褒め称えるべきか、ここまでダンジョンの罠を全て発動させる”悪運”は流石としかいいようがない。
『合計50個。 階層毎に10個ですから、今の所全てを発動していますね。 流石です』
アルジュナも軽口を叩く位には呆れた様子。
「さ、流石は巻き込まれ体質のエリスね」
「あ、あははは…どんまい」
ほれみろ、うちの連中は疲れ切ったご様子だ。
「ある意味の才能だね…」
「そうね」
「あぁ」
「残り5階層、心配でしかたねぇんだが?」
確かに、そこは同意見だ。
難なく地下6階層へ進んだ俺達は攻略を進める。
心なしか魔物の数が増えて来がする――
「ギャギャ!?」
唯一の不満と言えば、代わり映えしない魔物の姿だろう。
いや、多少変わってるような気もするが、あれはゴブリンだ。
鎧を纏った。
「ゴブリンばっかりじゃねぇか。 しかもありゃ、また新種か? どうなってんだ…ったく」
『確かに、ライナの言う通り新種ではありますね。 個体は同じですが、先程までのゴブリンとは違い――連携が取れています』
陣形を組み目の前の通路を死守するゴブリン達、こちらの出方を伺ってるのか攻撃してくる気配はない。
「まるで人間みたいな動きをするのね? こいつら」
「陣形を組んでいるんだろうな?」
「攻撃は…してこないみたいですね」
「それもそうでしょ? 彼らの目線は1つに集中しているし」
「そうね」
「こいつらも気付いたんだろう…」
「そりゃ…大変だな?」
全員がこっちを見た。
ん? 俺?
『ですね。 現在――敵視を集めているのは紛れもなく艦長自身です』
そんな訳。
俺が背中のバスタードソードに手を伸ばそうとした時。
「ギィギィ…」
ガクガクとゴブリン達は震え始めた。
試しに前へ出るフリをした。
「「「ギャギャ!!!」」」
更に身構えた。
「ふっ」
「「「ギャギャ!!」」」
「ふっ」
「「「ギャギャ!!」」」
段々楽しくなって来た俺は冗談交じりにこう告げる。
「通してくれれば、無暗な殺生はしない。 どうだ?」
流石にゴブリンだ。
人間の言葉が解るなんて、そんな事は―――
「「「「え」」」」
「は?」
『通れる道を開けてくれましたね?』
ないないない! 相手はゴブリンだぞ?
俺達を騙そうとしているに違いない。 と心で思いながらもゴブリン達の開けた道に侵入する。
『怯えていますね』
「だな」
どうにも戦闘の意思は感じられない。
身震いするゴブリン達はどうぞどうぞと言わんばかりに、必死に行動で訴えかけて来た。
「あ~大丈夫みたいだ。 いくぞ~?」
「「「っておい!!」」」
こうして地下6階層は何事も無く突破することが出来た。
まさかとは思うが、このまま10階層まで行けるなんて事は無いよな?




