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29.必殺技

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よろしくお願いいたします!

ダンジョンに侵入してから直ぐの事である。


「で、あの! どうやって魔王を倒したんですか!?」


興味津々の様子でエリスはルシウスに尋ねた。


「あ、いや~特別何かをしたわけじゃないんだよね。 ふつうに倒せたっていうか?」

「そうね。 普通に戦って普通に勝った。 それだけよ」

「成程。 しかし魔王は強大な力を持っていると聞いたが、あれは―――」

「それは本当だ…だが、いまの王程の力ではなかった…」


さっきからこんな会話を交わしているが、俺は疑問で仕方ない。

さっきから魔王を倒したとか―――倒したとか、そんな話がずっと聞こえるのは気のせいだろうか?


『答えは――否。 発言は間違っていません』


でしょうねぇ。


「魔王を倒した?」

「そうよ。 魔王を倒せば、はれてSランク冒険者の仲間入りって訳。 けど―――倒しても倒しても湧いてくる。 それが魔王なのよ…」


湧いてくる? まるで魔物みたいな言い方をするな。


「実際問題。 魔族って連中の存在は認知されているが、実際に目にした連中の方が少ないと思うぜ? なんせ向こうは接触した連中を全部消すんだ。 まるで誰かに操られているみたいにな? おまけに、このダンジョンだってそうだぜ? 見ただろ? あの不自然に出来た”ワープホール”をよぉ」

「あぁ」


確かに、ワープホールと呼ばれるそれに触れた俺達は今、入り組んだ洞窟の様な場所へ転送された。

黒くて丸い球体。 あれにはブラックホールに似た何かを感じた。

しかし妙だ。


『座標は確かに地図通りの表記ですが、全く別の空間。 という認識でいいのでしょうか?』

「(それしかないだろうな。 座標の検知は出来ないんだろ?)」

『はい。 セットしたGPSが全く使い物になりません』

「(位置を突き止めるのは不可能か、この洞窟自体のスキャンは?)」

『それならば可能です。 加えて通信及びサポートデバイスの使用は制限されておりません』


という事は、俺の力自体に異変は無いという事か。

それにしても奇妙な空間だ。 幻想的な景色が広がっているせいか、まるで現実味がない。

洞窟内で青白く輝くキノコの様な物に、至る所から聞こえてくる獣の唸り声。


「話を続けるが、俺達もその辺の事はよくわかってねぇんだ。 ダンジョンが生まれる原因が解っても、対処の仕方と言えば此処を最下層まで攻略するだけだ。 魔族と魔王に関してもな? まるで神様が均衡を保つ為に―――わざとやってるみたいだろ?」


冗談のつもりでライナは発言したんだろうが、全員黙ってるぞ?

暫く洞窟内を進んでいると下の階層へ続く階段が現れた。


「なんだこれ…」

「びっくりでしょ? これがダンジョンよ。 まるで人が作ったみたい」


目の前にあるのは明らかに異彩を放っている立派な石の階段。

ありえない、この土壁の洞窟に石の階段は不釣り合いだ。

しかし、それだけではなかった。


下の階層へ降りると、いままでの景色は失せ…がらりと姿を変えた。


「石壁に石畳の―――神殿!?」


これには流石の俺も頭を抱えた。

そういう事か―――どうりでディスプレイ上に表示されたMAPがいびつな形をしている訳だ。


「まぁ、なんつーか。 ここは慣れだな?」

「ですね」

「こんなもんさ、ダンジョンってのは」

「あぁ」

「そうそう」

「そうよ」

「です!!」


いや、もう考えるのを諦めてるだろこいつら!

ツッコんでも仕方ない、さっさとダンジョンの攻略を済ませて帰ろう。


「さーて。 気合入れろよ? 地下2階層からが本番だ。 全部で10階層。 こっから辛いぜ?」


ライナの声を聞き、皆準備運動を始める。


『システム――戦闘モード起動』


小さく駆動音が鳴る。


「にしても、ファントム? お前そんなガントレットとグリーブだけで防御面は大丈夫なのか? 俺らは魔法が使えるからいいけどぉ? 流石に集団戦でそれは―――」


ライナの心配をよそに食い気味でアリスは


「大丈夫よ。 集団戦となれば、そいつはめっぽう強いから」

「まじで?」

「えぇ」

「「「…」」」


何故かジト目を向けた英雄様達。

え? 何か俺が悪い事でも?


今の俺の装備は部分換装と呼び、四肢にアーマーを纏った状態でいる。

後で誤魔化すのも面倒だしな、とりあえずは手足を保護する目的で装備している。


『さて、データ採集と勤しみましょうか?』


今日のアルジュナさんは人一倍やる気に満ち溢れていた。



暫く進むと―――



相手は見慣れたゴブリンの上位種。

と言っても、外見は緑色でゴブリンとなんの大差もない、あるとすれば―――


「なるほど。 知能がそれなりに高いのか」


ゴブリンを前に腕を組みながら俺はそう告げる。

奴も馬鹿じゃない、俺の出方に異変を感じて未だ観察を続けている。


「ギャギャ!!」


しかし、しびれを切らしたのか勢いよく棍棒を振り被ったゴブリン。

棍棒の先端から火球が俺目掛けて飛んできた。


「うぉ、そんな事も出来るのか?」

『バリアフィールドの展開は致しますか?』

「いや、普通に――」


カン!!

手で払いのけた。


『成程。 その手がありましたか』

「ってファントム! 遊んでる場合か!」

「そ、そうだよ! 流石に”あの数”はまずい!」

「えぇ、一度体制を!」


確かに、角笛の様な物を吹いているゴブリンさんが次々と仲間を呼び寄せた。


「あれも転移の魔法なのか?」


隣へ来た呆れ顔のアリスへ訪ねる。


「違うわよ。 あれは上位のゴブリンが呼び出せる使い魔。 自分よりも下位の存在のゴブリンをこうやって湧かせる事ができるのよ」

「へぇ~…」

「で? 向こうに40匹近くのゴブリンが迫ってるけど―――どうにかなる感じよね? そう堂々としてるって事は」

「まぁ――」


背中の大剣に手を伸ばした俺は、大剣を逆手に持った。


「危ないから離れてろよ? ビーム出力…解放」

『了解。 ビーム出力解放―――チャージ開始――――』

「あ、あはは…じゃあ…事情は後ろの連中に話しておくわね…」


ガチャン!

バスタードソードの刀身が左右に展開、その後剣が振動をはじめると刀身全体に熱を帯びた。

ようはそれっぽく使えばいいんだろ? 異世界っぽくな。


『ディスチャージ完了―――何時でもいけます。 折角ですから、技名と言っちゃいますか?』


え? なにそれ…技名とかいる感じ?

じゃあ、ビームスラッシュ!!


『却下です。 直接的表現すぎます』


え~っと。 

困った表情の俺を見兼ねてか、アリスが後ろから大声でこう告げた。


「あ、あれをやる気ね! 最高火力の”ソードラッシュ”を!」

「そ、ソードラッシュ!? あ、あれは中級の技だろ!? 最高火力ってどういう事だい?」


すかさずフォローと解析を入れるアルメイア。


「あ、あぁそうだ! 奴のソードラッシュは無数の斬撃を飛ばす事が出来るんだ!」

「馬鹿な…そんな話は…聞いたことがない」


ありがとう2人共。

今回ばかりは感謝しよう。


『決まりましたね。 時間がありません――では――』

「ソ、ソードラッシュ!!!」


恥ずかしさのあまり顔から火が噴きそうになったが、こいつの熱量のせい――という事にしておこう。

勢いよく何度もバスタードソードを左右に振れば、無数の赤い衝撃波がゴブリン達を襲う。


「ギャギャ?」


何をされたのか、理解していない様子のゴブリン達は首を傾げる。


「起動終了――」

『起動終了を確認、冷却システム作動――』


地面にバスタードソードを突き刺す。

展開したバスタードソードが剣の型に戻ると蒸気が刀身から漏れる――そして―――


バラバラバラ!!

「「「「!?!?」」」」


目の前のゴブリン共の身体はバラバラに切断された。

流石はアルジュナだ。 ビームの出力は完璧で壁に1つの傷跡も無い。


『いえいえ。 艦長の腕がいいからですよ』


また謙遜を。

何はともあれ、これでゴブリン共は排除出来たな。

ある意味緊張の一瞬だった俺は額の汗を拭い後ろを見た。


「あ、あ、あ…嘘でしょ?」

「い、一撃!?」

「ありえない…」

「幾ら斬撃を飛ばしたとはいえ…この精度。 普通じゃねぇ」


まぁビームの衝撃波なんですけどね?

なんてことは口が滑っても言えない。

さて…なんて言い訳をしようかな…




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