27.皆のお兄さん
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翌日の事である。
すっかりアリス、アルメイア、エリスの3人は顔を刺されなくなった。
というのも―――
「あ、お兄さ~~ん! 何時まで居られるんですか~!? この国に~!」
みすぼらしい恰好の少女が俺を見つけるや否や元気に手を振った。
「さぁ~…? うちの主様次第だな? 後、既に5本食した」
ドヤ顔で俺は少女に綺麗に削がれた木の枝を5本見せつける。
「1日で5本も!? ま、また作ります~!」
「あぁ居るうちにな?」
「はい!!」
暫く進むと。
「お~! 兄ちゃんじゃん!! 今日は4人で散歩か~このこの~」
満面の笑みで俺の腰に肘を当てて来た獣人の少年。
「お前なぁ? こっちはこの姫様の護衛だって言ったろ! さっさと仕事に戻れ」
「あ、そうだった! 兄ちゃん強いもんな~! へ~い!」
更に進むと。
「俺はファントム。 Aランク冒険者なんてめじゃねぇぜ! どぉぉりゃぁぁ!」
「ちょ!おま! 思いっきり木の枝使ってるじゃねぇか!」
とはしゃぐ2人の子供。
そして目的の場所へ到着した3人はジト目で俺を見た。
まるで何か言いたげな表情だ。
「な、なんだよ…」
「なんか言いたいんだけど、思いつき過ぎて言えないわ」
「同感だ。 ほら、行くぞ…子供達のヒーローに絡んでいたら、また私達が悪者だ」
「し、師匠と呼ばせて下さい!!」
ってな感じで3人は冒険者ギルドへ消えて行った。
『流石は艦長。 金で子供を買い、そこに何気ない日常会話を挟む事で打ち解けるとは―――まさに策士です』
いや、言葉を選べよアルジュナ?
言ってることは間違ちゃいないが、響が悪すぎる。
『子供達のネットワークは大人を遥かに凌駕しますからね。 たった数日で時の人ですよ。 しかし、かなり目立ちましたね…艦長』
流石のアーサーも驚きを隠せない様子だ。
こうなんというか、遠慮なしに目立ったせいであらぬ噂も立てられるようになった。
それは子供に優しいファントムだが、大人には人1倍厳しい…とか。
冒険者には特に厳しく、主であるアリス様に手を出そうとすれば一瞬で葬られるとか。
大人にとってはある意味恐怖の対象となった俺は、結界オーライな訳だけど――
「しかし、視線をやたらと感じる」
『『でしょうね』』
その分3人よりも注目を集める様になった。
数時間後。 話が纏まったのか、ぞろぞろとギルド中から様々な人物が出て来た。
どれもこれも亜人ばかりで人間が少ない気がする。
「で? 要約すると、どういう話だ?」
『アリスは異種間での協定を結びました。 ですが―――ご安心ください、その条件に艦長は含まれておりません。 もっとも、アリスは艦長の心を買う事が出来れば、協力してもらえるかもしれない…と挑発的な発言をしていましたが―――』
成程。 奴らも俺に協力して欲しいという事か…めんどくせぇ。
なんてことは言えないので、心の中にそっとしまっておこう。
『そして―――ここからが重要です。 国へ帰る際、アリスはある依頼を引き受けました』
なんだろう、凄くいやな予感がする。
『Sランク冒険者。 黄昏の英雄達との共同調査です』
「………」
――――――――――――
その日の夜の事だ。
ガタン!!
「すまない! 本当に済まない!! 私が付いていながら、アリスを止めることが出来なかった! ほ、本当に済まない!!」
宿の一室で俺に土下座するアルメイア。
「も、も、も、申し訳ありません!! ですから、ね!? その拳を降ろしていただけませんか!? もうアリスちゃんもこの様に反省しておりますし!!」
俺の腕にしがみ付いたエリスは必死に俺を止めにかかる。
そして―――
「あがっ…あがっ…き、効いたわ…」
思いっきりアリスを殴り飛ばした結果―――アリスは床に伸びた。
残念だったな? 俺は例え相手が女子供であれ、グーで本気のパンチが出来てしまう男だ。
これ位で済んだのを幸運だと思え?
無言で睨みを効かせる俺を見て必死に謝り続ける2人、仕方ない―――これ位で許してやろう。
「で? その超有名な冒険者パーティーと何をするって?」
「ダ、ダンジョンの攻略を――ですね?」
恐る恐る発言したアルメイアは青白い表情で再び土下座した。
「ダンジョン。 それは帰り道にあるって事で間違いないんだな? いいか? こっちは道中、正確にマッピングしてるんだ。 嘘を付けば―――」
「は、はいぃぃぃ!! 間違いないです! 今はこの場所で! 最終目的地はここ! そしてその中間に位置するこの場所にダンジョンがあります!!」
「成程」
地図を広げたエリスは嘘でないことを証明する為に解りやすく俺に説明をした。
確かに、それが本当であれば丁度中間の地点だ。
しかし―――
「で、最後に? 何故世界に10人と居ないSランク冒険者共と行動を共にする意味がある?」
「え、えっと~かなり凶暴な魔物様が居られる様で…そいつを討伐すればSランク冒険者の力も借りれる事になって…」
「俺が行く理由は?」
「わ、私が行くって言っちゃって…その~あんたの実力を示しておけば後々―――」
「行かないって言ったら?」
「泣きながらあんたを襲う」
「………」
今凄い事を言っている自覚は彼女にあるんだろうか?
何はともあれ――こいつ、本当にやりかねないから引き受けてやるか。
『あら、お優しいですね? 艦長』
『全くです』
「うるせぇ」
べそをかきそうなアリスを見た俺は以前の面影を微塵も感じない事で、ある意味苦手意識は薄れ――以前とは違う意味で苦手になったらしい。
なんたってあれだけ強がってたこいつが、普通に弱音を吐いたり…助けてくれと言ったり…調子が狂う事ばかりだ。
『ヒュヒュ~』
『よっ! 艦長!』
とまぁ、この様に茶化してくるのでガン無視を決めようと思う。




